(ついに米国が中国の覇権潰しに舵を切った)
「終身主席」を可能にした習氏の野望に、トランプ大統領が立ちはだかりました。ニクソン政権以降の「関与政策」を大転換し、中国の覇権主義を封じ込めるため、次々と手を打ち始めたのです。
2017年12月、トランプ政権はまず「国家安全保障戦略」を発表しました。これは政権が代わるごとに議会に提出される重要な方針ですが、就任1年目に早々と発表されるのは今回が初めてです。
選挙中から訴えてきた「力による平和」の基本方針を確認し、「中国は米国に挑戦する『修正主義勢力』であり、インド太平洋地域で米国に取って代わり、国家主導の経済モデルの範囲を拡大し、地域の秩序を好きなように再編成しようとしている」と厳しく非難しました。
また、「強い経済が米国の力を増す」との考えに基づき、米国の経済的繁栄を実現するために貿易不均衡の是正に取り組むことを明記しました。トランプ大統領は同戦略に関する演説の中で「米国を再び強大にする」と述べ、「我々は新たな競争の時代に入っている。このゲームで米国は勝利する」と力強く語りました。
2018年1月には「国家防衛戦略」が発表され、「中国は将来的には地球規模で優位を確立し、米国に取って代ろうとしている」と警戒。「軍事力だけではなく、情報活動や経済支援や投資の名のもとに世界各地で、他国を食い物にするような経済活動を行っている」と、中国の「一帯一路」構想を暗に非難。
また、日本を含むインド太平洋地域が、戦略上、中東より上位に位置づけられるとともに、陸海空、宇宙、サイバースペースという軍事分野における競争力が劣化していることから、国防予算増による米軍再編を進めるべきだと強調しました。
2018年2月には「核態勢の見直し」が発表され、米軍が核軍縮を進める一方で、中国とロシアが核兵器の近代化や拡大を進め、北朝鮮の核開発が脅威になっていると指摘。「核なき世界」を掲げて核の役割縮小を目指してきたオバマ前政権の方針を転換しました。
トランプ大統領はこれら三文書で、米国の「安全保障戦略」を確立しました。中国をWTOなどの国際機関に迎い入れ、ルールに基づく欧米式の秩序に巻き込むという希望に見切りをつけ、大国間競争の枠組みの中で「力による平和」を実現していく戦略を示したのです。
2018年には、これらの国家戦略に基づく重要法案が相次いで成立しました。例えば、同年8月に「2019年国防権限法」が成立、国防予算は過去9年間で最大規模に引き上げられ、トランプ大統領が掲げる軍事力強化を裏づけました。
また、ファーウェイやZTEなど中国5社から政府機関が製品を調達することを2019年8月から禁じ、2020年8月からは5社の製品を使う企業との取引も打ち切ることにしました。さらに、環太平洋合同演習(リムパック)から中国を排除し、台湾への武器供与も進めます。
2018年10月4日、保守系シンクタンクのハドソン研究所で、米国のペンス副大統領が中国政策に関する演説を行いました。経済問題に限らず、政治、軍事、人権問題まで多岐におよび、トランプ政権の対中政策を体系立てて示す内容でした。
ペンス副大統領は演説の中で、次のように指摘しました(抜粋・和訳)。
経済的に豊かになれば国民は政治的な自由を求め、やがて中国にも民主主義が広がる――米国の歴代政権はこうした立場から「関与政策(エンゲージメント)」を推進し、2001年にはWTO加盟も容認した。
だが、世界第2位となった後も、中国で政治的自由化が進む気配はない。むしろ習近平指導部のもとで統制は強まり、民主化の火は消えかけている。台湾の外交的孤立を図るなど、自らの戦略的利益を追求する姿勢も強まる一方だ。
米国が中国に手を差し伸べてきた日々は「もう終わった」と断じ、集眉の課題であった人権問題にも言及しました。ペンス副大統領は敬虔なキリスト教福音派の信者です。「信教の自由は私個人にとっても、トランプ大統領にとっても非常に重要だ」と、人権問題を米政権の最優先課題とする態度を鮮明にし、新疆ウイグル自治区での人権弾圧も牽制し始めました。
「ペンス演説」は、中国の脅威に対して国を挙げて立ち向かう米国の不退転の決意を表明したものです。チャーチル英元首相がソ連を批判した「鉄のカーテン」の演説に匹敵する。「米中新冷戦」の始まりを告げるものでした。
---owari---
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