(人間関係の問題は「ものの見方の違い」から始まる)
読者のみなさんのなかには、人間関係で悩(なや)んでいる人も多いでしょうし、自分の問題について、個別に答えが聞きたいところでしょう。しかし、一人ひとりのニーズは違うため、個別にお答えできないので、一人でも多くの人の参考になるように、一般論を中心にお伝えしたいと思います。
人間関係で悩んでいる人たちに、最初に言っておかなければならないことは「ものの見方」についてです。すなわち、「物事を見るときの見方や感じ方は、本当に人それぞれであり、誰もが全く同じではない」ということです。そして、ここから人間関係の問題のすべてが始まっているのです。
これについて、たとえ話を紹介しましょう。
アメリカで、アルコール中毒の患者(かんじゃ)たちを更生(こうせい)させる仕事をしている人が、セミナーで次のような実験を行ったそうです。
その講師は、まず、コップを二つ用意し、片方には真水を入れ、もう片方には、濃度の高いアルコールを入れました。そして、水の入ったコップに、ミミズを一匹入れたところ、ミミズは元気に外へ這(は)い出してきました。そのミミズを捕(つか)まえて、今度は、アルコールの入ったコップに放り込んだところ、ミミズは、しばらくすると死んでしまったのです。
そこで、セミナーの講師は、アルコール中毒患者に、「みなさん、どうですか。この実験から何か学ぶことはありますか」と訊(き)きました。
もちろん、その講師は、立場上、「アルコールは、生き物がたちまち死んでしまうほど有害であり、怖(こわ)い毒物でもあるのだ」ということを印象付ける目的で質問したわけです。
ところが、患者の一人から、「アルコールを飲めば、お腹のなかの虫を殺せることが分かりました」という返事が返ってきたのだそうです。
確かに、そういう考え方もあるでしょう。「ミミズが死ぬぐらいだから、アルコールを飲んでいれば、お腹のなかの虫も死ぬだろう。常にお腹の消毒ができてよい」という考え方もあるわけですね。
その実験をした講師は、おそらく、その答えを聞いて“ずっこけた”と思いますが、こういうところから人間関係のすれ違いは起きてくるのです。
(「いろいろな見方がある」と知り、寛容さや包容力を持つ)
人は同じ事実を見ても、それぞれ、違った解釈(かいしゃく)をします。常に、手の焼ける人は、エゴイスティックというか、自己中心的に物事を考えるようなタイプです。こういう人との人間関係の調整は困難を極(きわ)めます。
アルコール中毒患者の話を笑い話として紹介しましたが、そういう「同じ事実に対して、まったく違う解釈をする人」は現実にいます。したがって、「好意をもって相手に接したとしても、相手がそう受け取らない場合もある」ということを知らなければなりません。
「ものの見方の違いによって、人間関係が、いろいろと変化してくる」ということが現実にはあるのです。それを、まず知っていただきたいと思います。
ただ、「いろいろな見方がある」ということ自体は許容(きょよう)しなければいけません。「他の人の見方や感じ方は自分と同じではない。同じ事実に対しても、いろいろな見方がありうるのだ」ということを知らなければいけませんし、それを知ることが、その人自身の認識力(にんしきりょく)の大きさ、あるいは、他人に対する寛容(かんよう)さや包容力につながっていくのです。
ところが、「自分の見方がすべてであり、それ以外の見方はないのだ」と思いすぎると、人間関係を向上させていくのは極めて難しいと思います。
---owari---
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