(新海誠監督のエピソードに見る、芸術家系の人が「人を使う」難しさ)
アニメ映画「君の名は。」(2016年公開/東宝)で有名になった新海誠(しんかいまこと)監督は、普段は、一人で三年もかけて絵を描いて、ほとんど自分でやるような人なのですが、「君の名は。」は、ほかの人もアシストで入って制作しています。
そのときに、新海監督は、絵を見ていて気に入らないと、自分で直接、直していたそうです。ところが、現場には、作画監督など、いろいろな監督が下にきちんといるのです。そのため、彼らから「直すのなら、私を通して『直せ』と言ってくれればきちんと直すのに、どうしてそうしないのですか」と、やはり突(つ)き上げられるわけです。
要するに、そういった下の人たちというのは、もっと大きな仕事に携(たずさ)わってきた人たちであり、チームを組んで、製作費の高い映画をつくっていた人たちなのです。
一方、新海監督は、一人で描いていた人なので、“助っ人(すけっと)”が来ても使えないのでしょう。その“助っ人”を通じて、さらに下の立場で絵を描いている人に「直してくれ」というのは面倒(めんどう)くさいし、自分が人を使ったことがないので、そうしたことは言いにくいわけです。そのため、監督が自分で絵を直してしまうことになるのでしょう。
もちろん、そのほうが早いし、人を通すことで、軋轢(あつれき)が生じたり嫌(いや)がられたりするのも嫌なので、「自分でやってしまいたい」という気持ちになるのでしょう。
しかし、もっと大きな仕事をやってきた人からは、「チームを組んで仕事をしている以上、そういうことをされると困ります」と指摘(してき)されるわけです。ここは難しいところです。おそらく、これは、新海監督にとっては、これからの課題になるところでしょう。
そのように、芸術家系の仕事の場合、人との相性(あいしょう)や組み合わせなどもそれほど簡単ではないし、自分自身で強い使命感が固まっている場合、やはり、最後は自分でやらざるをえないときもあるだろうと思います。
---owari---
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