(細田守監督のエピソードに見る、芸術家肌の人が「組織に入る」難しさ)
一般的には、高卒や短大卒、大卒等で就職するわけですが、組織のなかに残れない人は数多くいます。そして、辞(や)めていく人の三分の二、すなわち、たいていの場合は、「人間関係がうまくいっていない」らしいのです。
ただし、能力的に高い人のなかには、自己実現欲が強くて、「自分が思ったとおりにやりたい」というようなところもあるため、このあたりは少し拮抗(きっこう)し合う難しいところではあります。やはり、どうしてもうまくいかない場合もあるのでしょう。
例えば、「バケモノの子」(2015年公開/東宝)などのアニメ映画をつくった細田守(ほそだまもる)監督は、大学卒業時に、宮崎駿(みやざきはやお)さんがやっていたスタジオジブリの採用試験を受験したそうですが、そのときの一次審査(しんさ)でのことです。
もちろん、ジブリはアニメの制作会社なので、応募者(おうぼしゃ)に絵を2枚以上描(か)かせて提出させ、だいたい、どのような絵が描けるかを見る試験があったのですが、「細田氏は、150枚以上も描いて送ってきた」というのです。
それで、宮崎さんは二次試験の後(のち)、当時の細田氏に対して、「君が熱心なのはよく分かるのだけれども、残念ながら、君のようなタイプの人は、むしろ、私のところに来て下積みの助手をやったりしないほうがいいのではないかと思う。そういうことをすると、君の能力を潰(つぶ)してしまう恐(おそ)れがあるから、君は君の道を探したほうがいいのではないだろうか」というような趣旨(しゅし)の手紙を書いたそうです。
だいたい、「絵を2枚以上描け」というのに対して、150枚以上も送ってくるような人というのは、“はみ出している”人なので、「自分でやったほうがいいのではないですか」ということでしょう。そもそも、そういう人は、自分のやり方でアニメを描きたくなるでしょうし、ジブリのなかに入っても、やはり、自分のやり方を強く主張して、なかなか譲(ゆず)らなくなるのは見えています。そのため、「君は、自分でやったほうがいいのではないか」ということで、落とされたようです。
ちなみに、その後、細田守監督がプロになって、自分でやれるようになってからも、ジブリとジョイント(共同)で一緒(いっしょ)に仕事をする機会はあったのですが、そのときも、途中から「一緒にはできない」ということで別れているのです。このあたりを見ても、やはり、「仕事のやり方や好みに違(ちが)いがあるのだな」ということは分かります。
こうした芸術家肌(はだ)の仕事というのは、なかなか難しいところがあるのかもしれません。
---owari---
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