アメリカは世界一の鉄道王国として君臨した時代があった。
世界で初めて蒸気機関車による鉄道がイギリスに生まれてから5年後には鉄道路線を開業させ、以後80数年の間に起業した数々の民間鉄道会社が、総延長41万キロという気が遠くなる程の鉄道網を整備した。それは1916年(大正5年)前後のことである。
そのころを頂点に、アメリカの鉄道は近年になって衰退の一途をたどっている。栄華を極めた鉄道会社は解体や再編を繰り返し、旅客列車の廃止が相次いだ。
都市間旅客輸送シェアの推移を見てみると、鉄道は12.9%(1930年)あったものが、1960年では3.0%まで落ち込んでいるのです。逆に、自家用車の輸送は86.3%が90.1%と増えているのです。
都市間貨物輸送シェアの推移も、鉄道は74.3%(1930年)あったものが、1960年では45.0%まで落ち込んでいます。トラック輸送は3.9%から22.3%へ上昇し、アメリカは鉄道輸送から道路輸送へ変化していました。
それではなぜ、アメリカの鉄道は衰退したのでしょうか。
アメリカは国土が広いから鉄道が発達しないという意見もあるが、ヨーロッパ各国は鉄道網でつながっているし、シベリア鉄道はかなりの長距離であるが衰退しているということはない。
アメリカの鉄道網は1900年の初頭、毛細血管のように全国に張り巡らされていたのです。
だから、繁栄を維持できなかったということなのです。
それではなぜ、維持できなかったのでしょうか?
実例をあげます。
GM(自動車会社)には、ライバルである鉄道会社をつぶそうとして、子会社を通じて鉄道会社を買収し、買収後はそれを一気に廃業させた過去があるのです(当然、独占禁止法違反です)。
また、車メーカーが政治家のロビイストに、「車社会の到来をうけ、国家が税金から支出して、アスファルト道路を作るのは当たり前だ」というキャンペーンを張ったのです。
また、カリフォルニア州ではかつて、鉄道整備にかけるお金を道路整備にかけるという法案が可決されました。もとよりアメリカは自動車の国ですから、鉄道よりもハイウェイを整備してほしいというのが住民の選択でした。
アメリカでは飛行機は特別な乗り物ではなく、長距離移動の際には第一の選択肢です。誰でも気軽に飛行機に乗りますし、格安エアラインも人気です。ですから、巨額の投資で鉄道を建設する必然性が少ないということもあるようです。実際、シカゴやロサンゼルスなどの巨大空港では、ここは全国各地へ特急列車が発車する駅のようなものなのだと実感できるそうです。
このため、鉄道にそもそも人気がなく、自動車と飛行機の移動が中心です。高速鉄道はごく一部しか発達していないのです。アメリカの鉄道システムは、どの国と比べても時代遅れと言えるのです。
日本の新幹線の高速鉄道ネットワークは、51年もの歴史において死亡事故や脱線事故を起こしたことがありません。高速鉄道TGVを30年にわたって運行しているフランスも同様です。
1971年(昭和41年)には政府が救済に乗り出す形でアムトラック(アメリカ旅客鉄道輸送会社)が設立されたものの、常に赤字を抱えた状態で、今も年々列車や駅が減らされていく状況にあります。
昨年発生したアムトラックのおそろしい脱線事故では、8名の方が亡くなられたが、世界がもっとも衝撃を受けたのは、列車が時速100マイル(時速160km)を超える速度で走っていたことではなく、それくらいの速度で走っても大丈夫なように列車が設計されていなかったことでした。
この事故では、議会が十分な予算を整備に割り当てていなかったこともあいまって、アメリカがほったらかしている鉄道インフラについての不安を表面化させました。事故の翌日、議会はアムトラックの予算をさらに削減しようと、投票を行ったのでした。
もし、もっと多くのアメリカ人が鉄道のある未来を受け入れるのなら、鉄道はもっとも安全な国内旅行の手段になれるのだが残念である。
もし、国民がより安全に旅行できることが目標であるなら、アメリカは優先順位を変える必要があります。昨年、鉄道事故で230人が亡くなっているところを、何としてもゼロにしなければいけません。安全のために鉄道を改良することが必要なのはもちろんですが、車と比べると電車は統計上ずっと安全なものなんです。GMは公的資金を注入されているのに、アムトラックは予算を削られています。
しっかり投資すれば、もっとも安全な旅行手段になるはずの鉄道技術。それなのにアメリカは半世紀もの間、数十億ドルを州間高速道路へ注ぎこんでしまいました。そんな道路では毎年3万2000人が命を落としているというのに。
この原因は、アメリカ国民の選択なのか、そのように選択させた政治活動の行き過ぎかは分かりませんが、アメリカは輸送手段に車社会と航空機を優先させたということが、繁栄した鉄道を衰退させた原因だと思います。
オバマ政権は80億ドルにおよぶ高速鉄道計画を提案。その多くが白紙状態となっています。
高速鉄道計画について、ウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事は連邦政府の予算がすでに割り当てられているにも関わらず、高速鉄道計画を「殺す」ことを高らかに宣言しました。
オハイオやフロリダでも同じようなことが起きています。悪いのは有権者なのか、目先のことしか考えない政治家なのか、いずれにしても、アメリカ国民は高速鉄道の未来を心に描くことができない状態なのです。
しかしながら、現在、サンフランシスコ~ロサンゼルスは新幹線建設に十分な需要があります。カリフォルニアの高速鉄道計画はどのように進んでいるのでしょうか。
この計画に99億5000万ドルを投じることを認める提案が2008年11月にカリフォルニア州の州民投票で通過したことにより承認されました。建設されると、最高220 マイル毎時(350 km/h)の高速列車がサンフランシスコとロサンゼルスを2時間半で結ぶと予想されている。路線長は700 マイル以上(1,100 キロメートル以上)と提案されており、年間利用者は9100万人から9500万人と推定されている。
すでに建設が開始され、一部の駅はすでに街のランドマークとなっています。しかし、電車自体がスポットに当たる主役にはなっていません。本当は電車こそが中心になるべきなのに、実際のところ後づけのようなものになっています。
また、車両の購入先や運行システムの導入先は、まだ決まっておらず、日本と中国が競合すると見られている。
日本は新幹線技術や航空技術などを積極的に世界に輸出して、世界の輸送システムの安全や輸送技術の向上に貢献して、もう一段の経済発展を遂げる余地があるのです。
---owari---
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます