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未来を開く「島国根性」(前編)

2023年03月07日 | 日本
日本人の島国根性が、世界一豊かで平和な社会を築き上げた。

(「島国根性」と「大陸的」)
「島国根性」というと何となく良くない語感がある。広辞苑では「他国との交渉が少ないため視野がせまく、閉鎖的でこせこせした性質」とある。

一方、「大陸的」というと反対に「小事にこだわらず、度量・気迫の雄大なさま。また、感情・感覚などの、のんびりしているさま」となる。

こういう語感から、「島国根性」の日本人は、「大陸的」な中国人に対して、なんとなく劣等感を持ってしまう。しかし、事実を見てみよう。世界には48の島国があるが、その中には近隣の大陸国に対して、はるかに安定した高度な生活水準を実現している例が少なくない。

(健闘する島国国家)
たとえばスリランカとインド。一人あたり国民所得(2001年)を比べると、インドの460ドルに対してスリランカは880ドルと2倍近い。識字率(2000年)はインドの57.2%に対して、スリランカは91.6%。平均寿命はインドの61~62歳に対して、スリランカの男性70歳、女性76歳。インドには核兵器もあれば、世界を席巻するソフト産業もあるが、スリランカの豊かさ、教育水準、長寿にははるかに及ばない。

キプロスとトルコ。キプロスは300年以上もオスマン・トルコの支配下にあり、その後、イギリスの植民地を経て、ようやく1960年に独立を果たした。一人あたりの国民所得(2001年)は12,320ドルと先進国並みだが、対岸のトルコは2,540ドルと5分の1程度。識字率、平均寿命、自動車や電話の普及率と、どれをとってもキプロスの方が高い。

もう一つ、極端な例として、キューバとアメリカを比べてみよう。カストロ政権の共産主義でボロボロになったキューバが、世界一の超大国アメリカに敵うはずもないのだが、実は意外に健闘している。平均寿命は、男性でアメリカ73.9歳に対してキューバ72.9歳、女性はアメリカの79.5歳、キューバ76.9歳と良い勝負だ。

識字率はキューバ96.7%で、アメリカの方は公式統計はないが80%程度という説がある。一人あたり国民所得はキューバの1,478ドルに対して、アメリカは約23倍の34,280ドル (2000年)だが、ハリケーンに襲われたニュー・オリンズの貧困者層を見れば、下流階級だけの比較ではそれほどの違いがあるとは思えない。

いずれにしろ、世界の島国は対岸の大陸国と比べて、豊かな安定した社会を築いているケースが少なくないのである。その極端な例が日本・台湾と中国の対比であろう。

(島国根性の協調性)
多くの島国が結構、頑張っている理由は何なのだろう。島国が、それこそ島国根性まるだしで、「他国との交渉が少ないため視野がせまく、閉鎖的でこせこせした性質」を発揮しており、大陸国が「小事にこだわらず、度量・気迫の雄大なさま」を備えているという見方だけでは、多くの島国の健闘ぶりは説明できない。

総合商社に28年勤務し、そのうちの約15年をアフリカ、ヨーロッパ、アメリカ、アジア各地で過ごしてきた経験を持つノンフィクション作家の布施克彦氏は、その著書『島国根性を捨ててはいけない』で、自身の豊富な体験から、その理由の一つを、島国の持つ協調精神にあると指摘する。

海に囲まれた限定空間の住人たちは、そこに住むしかないという思いが強い。そこでうまくやらなくてはいけない。そこで失敗したらオシマイという緊張感や切実感がある。・・・

限定空間社会の中でうまくやる。うまくやらねば村八分。逃げようと思っても逃げられない。なにしろ周囲は海に囲まれている。島国根性の根底の部分に、こういった追いつめられた緊張感がある。それがよきにつけ悪しきにつけ、農耕的島国根性に繋がっている。限定空間社会でうまくやるには、個人より組織の理屈を優先させる。協調性を重んじる。他人への気配りを大切にする。どれもが日本人のことを指しているような言葉だ。農耕的島国根性を、限定空間に住む世界の島国民族が共有していると思う。

スリランカの例でも、この国の人々の特徴は、スマイルの国、神経細やか、感じやすい、穏やかさ、率直さと形容される。さらに「スリランカの女性は一般に奥ゆかしい。恥ずかしがり、男性は声を掛けると逃げる」と『スリランカ紀行』(中島秀憲)は書いている。インドではどこでも、呼びもしないのに男たちがゾロゾロ寄ってくるのとは大違いである。

スリランカ内には民族対立がある。人口の74%を占める仏教徒シンハラ族と、18%のヒンドゥー教徒タミル族が20年間も内戦を続け、6万人もの犠牲者が出た。2002年に無期限停戦合意が成立したが、抗争はいまだに燻(くすぶ)っている。

抗争が長期化したのは、タミル族が狭い海峡を隔てた南インドに住む6千万人とも言われるタミル人の本家の後ろ盾を得ているからである。外部からの干渉が無くなれば、また昔のように両民族が、仲良く平和に共存できる時代に戻るだろう。

(島国根性の勤勉さ、誠実さ)
限定空間社会では、こうした協調精神とともに、勤勉さ、誠実さが尊ばれる。見知らぬ土地へ行って一山当てよう、とか、人を騙して一攫千金の儲けをあげて、他国に高飛びしよう、などということはできない。

狭い島の中で肩寄せ合って暮らしていくためには、自分の仕事に精を出して頑張っていくしかない。商売をするにも、一度でも人を騙したら、すぐに悪い噂が島中に流れて、商売はあがったりになってしまう。勤勉さ、誠実さが、限定空間社会で成功する要因なのである。

こうして、島国では協調精神、勤勉さ、誠実さを基調とする社会が成立しやすい。大陸国のように、お互いに騙しあったり、争ったりする事が少ないので、自ずから豊かな、平和な社会となりやすい。

世界で島国が健闘しているのも、こうした島国根性がよく発揮されているからだろう。

---owari---
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