「ヒャーーー」長男のお嫁さんの声である(実際に聞いたわけではないので創作)。
家にあったオルゴールを見たときの状況である。
お祝いでいただいて、このところ見なかったオルゴールが、三男の部屋を掃除していたとき発見された。彼はちょくちょく聴いていたと証言していたが、ゴミの中に眠っていたに違いない。
実はこのオルゴールは長男が生まれたときに、妻が勤めていた学校の同僚からお祝いとしていただいたものである。今から30年前のことだ。そのときは「いい音色だなあ」「高そうだなあ」ぐらいにしか思わず、しばらくは五月人形の横にあったのだが、行方不明になっていた代物である。
それが見つかって久しぶりに聴いていたところにお嫁さんが登場して驚いたのだ。
彼女はオルゴールに詳しく、「72弁のスイスのリュージュ社製」とすぐにわかったとのこと。「弁とは、なんのこっちゃ?」
これは大変貴重なビンテージものらしく、当時でも15はしたはずで、今では20以上だということ。
「ヒェーーーー」我が家の庶民の悲鳴である(これは実況です)。
そんな高価なものが、あのゴミ部屋に保管されていたとは・・・、しかもゴミに守られていたために保存状態もすこぶる良好である。
早速、インターネットで今の価値(ゲスの勘繰りである・情けない)を目を輝かせて調べまくった。すごい値がついていたものがあったが、うちのオルゴールと同じものはなかった。ただ、72弁はかなりすごいということがわかった。オルゴールの箱の下に「○○くんの誕生を記念して1981年7月18日」というプレートが貼り付けてあり、「これがあると価値が下がるなあ・・・」などと悪魔のささやきも聞こえたりしていた・・・
72弁とはオルゴールの鍵盤の数でピアノでいうなら6オクターブ分の音階があるということらしい。144弁ともなると150ぐらいのものもある高価なものだ。しかも3部合唱のように幾重にも重なった音で、「カノン」なんかが聴けるのである(リュージュ社のホームページで視聴できる)。
1年間でつくる数が少ないために、年数を重ねるとマニアの間では価値が上がるものだそうだ。
床においたオルゴールを、床に耳をつけて聴くのが一番いいとお嫁さんが教えてくれた。
知らなかった世界がまだまだ多いなあと感じた。
そのオルゴールが神棚に祭られたのは、言うまでもないことである。