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じじい日記

日々の雑感と戯言を綴っております

多吾作 物語り

2015-03-07 08:15:58 | 盗作童話
昔々、遠くの山の麓に多吾作という者おったげな。
多吾作はとても働き者で、毎日山や田んぼの仕事に精を出していたったと。

そして多吾作は信心深い人でもあって、暇を見つけてはお地蔵様の周りの草取りをしたり、祭りの頃には、貧しい暮らしの中から餅などお供えしていたんだと。

多吾作は遊ぶ事は何もしないで、村の衆に誘われても酒も飲まなければ博打もしなかったと。
そんでまた、多吾作の家は山の麓の一軒家だもんで隣近所も無く、んだから、知り合う娘っ子も無く、独り身だったと。

んだぁ~・・・可哀想っちゃ、そう言う身の上でなぁ・・・。
多吾作のお父もお母も前の飢饉の時に無理したのが祟って、早くに仏様になっちまってるもんで家には一人なんだなぁ。
お父の残した猫の額程の田畑を少しずつ広げたり、家とは呼べねぇあばら屋を切ったり貼ったりしてなんとか格好つけていたったんだと。

そんなもんで多吾作は夜明けとともに起きては、日暮れ間近まで働いて、粗末なおまんま食ったらせんべい布団に包まって寝るだけの毎日だったと。

そんな話し相手も居ない多吾作だども、朝夕の野良仕事の行き帰りには、お地蔵さんに、お早うでござりす、と言って手を合わせ、帰りしなには、只今でござりす、と手を合わせていたと。

その内、陽気の良い日には少し腰を下ろして一服つけるようになって、序でに独り言など語るようになったんだと。

ああ、んだんだ、何の楽しみも無い多吾作と言ったけれども、煙草だけは嗜んだんだねぇ。
ほれ、自分家の畑で葉煙草育てていたもんで、それば嗜んでいたんだね。

その内、多吾作は朝な夕なの行き帰り、お地蔵さんさ野良での出来事や畑の出来具合など語っては「お地蔵さん、今年の秋の田んぼの塩梅はなんとしたもんでがすかぁ~」などと問いかけるようになったんだと。

あれだすな・・・多吾作の独り語りが日課になって結構な月日が経った頃には村の人たちもそれを知る事となって、いつの間にかお地蔵さんのことを多吾作地蔵と呼ぶようになったんだと。

ある日の事だった、と。
多吾作は「お地蔵さん、山の木ば切ったげ、材木出たもんで小屋掛けてけるっす」と言って小さな祠ば拵えたと。

小屋が出来上がって一服つけてたら、眠ったように半眼だったはずのお地蔵さんが目ば開けて「多吾作どんやぁ、オラ道ばたの地蔵だで、そげにしてもらっても何もしてやらんねぞ」と語ったんだと。
するとドデンして腰抜かした多吾作では有ったけれども気を取り直して「いやいや地蔵さん、オラ話し相手もいねし、他に愉しみ無いもんではぁ、自分我のためにしてるのっす・・・気に留めねでくらい」と語った、と。

それからだったと、多吾作が祠に立ち寄っては地蔵さんとナンデカンデ話ばするようになったのは。
地蔵さんとソンナコンナば話してると、時たま、「多吾作、あと半月もすっと霜が降りっからよ、とか、今年の夏は日照りになっから溜め池掘ったら良かんべ」などと言う話をもらって手を打つもんだから多吾作の田畑はどんな年でも豊作で、村の衆は魂消たと。

豊作続きの多吾作はずんずんと豊かになって、小金も持つようになったんだと。
んだからって、多吾作の暮らし向きには何も変わった事は無く、日々地蔵さんに参っては山仕事や野良仕事に精を出していたんだと。

あれは、ほれ、里山にも桜の花が見られるようになった頃だったべか。
多吾作が野良仕事終えて家さ帰ったれば、若い娘が上がり框に座っていて「多吾作どん、お帰りなせぇまし」と三つ指着いた、と。

いや、ドデンしたのは多吾作で「あいやぁ~、あんたは神社の祢宜様の娘さんでないかぃ・・・なんとしてこげなあばら屋に、しかも三つ指なんぞ着かれてはぁ~」と、語ったと。

「あいや、ホントは父ちゃんが来なくちゃなんねぇ話なんだども、父ちゃんはアレでも神主だもんでお地蔵さんのお告げば教えてくれろとは言えねぇんでがす。んだもんで私が代わりに来たのっす」と、娘は語ったと。

「いや、話はそればかりではねぇのっす。父ちゃんからは多吾作どんの家さおいて貰えって・・・んだから、嫁に貰ってくらいん、と言うことでがんす」と、語ったと。

多吾作は何がなんだか飲み込めずに「まんず、話は落ち着いて聞くども、白湯ば一杯くんねぇべか? んだんだ、オラ、水ば汲んで来るっす」と言って水桶担いで駆けて行った、と。

水桶の天秤棒担いだまま多吾作はお地蔵さんの祠に来て「地蔵様ぁ、こげな話になってんだげっとオラなじょしたら良かんべ?」と問うた、と。

したけど、お地蔵様はなぁ~んにも答えねぇで、普段の石の地蔵様のままだったと。
多吾作は泣きべそかいて「あいやぁ~地蔵様・・・なんして黙っちまったんだべ。良い知恵授けてくれねぇべか?」と語った、と。

「多吾作・・・嫁さん貰うんだから、もう石の地蔵と話しをしなくても良いでしょう。私は天の国に帰ります」とおなごの声が聞こえたと思ったら、石の地蔵様が薄衣纏った天女の姿になって空に昇って行ったんだと。

そんでも、石の地蔵さんは祠の中に居たんでがすと。

そんで、多吾作の言う事にゃ、お地蔵様は弁天様の仮の姿であったが、祢宜様の娘が嫁にって事になったもんで焼きもち焼いて出て行っちまったんだ、と。

しかし、多吾作は地蔵さんからのご託宣を聞く事ができねぇもんで以前のように豊作は出来なくなってしまったと。

いや、話はここまでなんだなぁ~。
また元の貧乏暮らしに戻っちまった多吾作の家に祢宜様の娘が居着いたかドーかは、誰も語らねぇのっす。

昔し語りっつうのはそう言うもんでがすとぉ~。



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暇の塊・・・

2014-07-28 14:38:00 | 盗作童話
持て余した時間が塊になって転がっている。
足の踏み場も無い程に部屋を埋め尽くしているそれは、私の吐息が散らばったものだ。

始めは単なる溜息だったのだが、いつしかそれは形を持ち、そして、ぶつぶつと鳴き声のようなものを発するようにさえなった。
小さな声を聞いてみると「暇だ」「暇・暇」「あぁ暇だ」と言う自分の声だった。

口を開く度に一つ二つと漏れる「暇の塊」に敵意や憎悪を感じていた。

仕舞いには、欠伸をしただけなのにそれまでもが「暇の塊」として口から飛び出し床に転がった。

欠伸から育った大き目の「暇の塊」も、やはり同じように「あぁ暇だ」「暇だなぁ」と呟くように鳴いた。

低く唸る扇風機の風に翻弄されるように転がる「暇の塊」に、私は殺意を覚え、足下でぶつぶつと呟く欠伸の「暇の塊」を力一杯踏みつけた。

「暇の塊」は僅かな弾力を感じさせたものの呆気なく踏みつぶされ、弾けて消えた。
その刹那、ぐぇっ、と小さく唸ったような音が聴こえた気もしたが、私は足裏の意外な感触が小気味良くて、次々と「暇の塊」を踏みつぶした。

午後三時前の一番暑い時に、私は汗だくで「暇の塊」を踏み潰した。

これは面白い。
とても良い暇つぶしになったと、嬉々として脚を踏み降ろし続け、やが「暇の塊」は無くなった。

私はまた暇な時間を元余すようになり、口から「暇の塊」の元になる吐息を吐いていた。




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閑古鳥 後編

2013-08-17 14:00:01 | 盗作童話

雌ギツネが それではおんちゃん 写真が仕上がった頃にまた伺いますんで と 言って 日傘なんぞをさして しゃなりしゃなりと尻など振って出て行った と

それを見送っていたおんちゃんは ああ そにしても腹が減った 目の前が暗くなる サントワマミィ~ と 言って倒れ込んだ と

そん時 ドタっと言う音を聞いた雌ギツネが 何事だべぇ と 心配して戻って来て おんちゃんを抱き起こした と

あれまぁ おんちゃん 具合悪いのけぇ? なんだか ずいぶんと冷たいみたいだし と 言って 雌ギツネは 家の中さ上がって 急いで布団ば敷いた と

おんちゃん 写真屋のおんちゃん ここさ寝てくれろ 今 気付の薬りば採って来っかんね 辛抱してまっていてくれろ と 言って雌ギツネは立ち上がった と

布団に寝せらって なんぼか気持ちの戻ったおんちゃんは 雌ギツネに言った と

いやいや病ではねぇのっす 夕べもまんま食わねで 今朝もまんま食わねで そんでもって暑いもんだで霍乱したのっす まんま喰えば治るんすが 食うまんまが無ぇのでがす と 

おれまぁ~ 米も豆も無いんでがすかぁ~? それなら私が米を持って来ましょう 暫くの辛抱でやんすよ おんちゃん と 言って 雌ギツネは駆け出したと

それから半時ばかりして雌ギツネは おっきな袋に米だの魚だのば入れて戻って来た と

おんちゃん おんちゃん 今直ぐにまんま炊くし 魚焼くからね しっかりしててけさいんよ と 言って 雌ギツネは豆々しく炊事した と

おんちゃんは まめに働く 心優しい雌ギツネに なんだか 今までに思ったことの無い なんだか ぽわぁ~んとした気持ちになったんだ と

ほどなくして雌ギツネが おんちゃん 支度できたんだども 起きて喰われるすか? そっちゃ持って行くすか? と 聞いた と

なんとまぁ 雌ギツネのくせに 細やかな心だことなやぁ~ おら 人間の女子(おなご)でこげに良く出来た娘は見たことも無ぇ なんとしたもんだが 畜生とはこげに優しいものなんだべか? と 感心していた と

ほれほれ おんちゃん 起きられんなら こっちゃ来てまんま食わいん さぁ さぁ と 促された と

おんちゃん まんま喰いながら涙が流れて止まんなくて 鼻水垂らしながら ずるずるって まんま喰った と

うんまいなぁ~ こんな美味いまんま喰ったのは ずーっと昔に母ちゃんがこしゃえたまんま喰った時以来だぁ~ と 言って 泣き泣き喰った と

まんず良かったない おんちゃんが元気になってもらわねぇと 私のお見合い写真が出来なくなってしまうから~と言って 雌ギツネは笑った と

おんちゃんは 雌ギツネの話しば聞いて なんともおかしな事を言うもんだな 狐に見合いも有んめぃ と 思ったんだが そーかぁ んでは特別めんこく仕上げっからね と 言った と

雌ギツネは 土瓶から熱い湯を汲んで急須に入れながら おんちゃんはこげな山の中でなして写真屋ばやっているのっす? ここだらお客さんも無かんべ と 思うんだども と 言った と

ああ おんちゃんは人間があんまし好きで無くて 人間とは相性が良く無ぇで 上手く付き合って行けねぇんもんで 気が付いたらこげな山の中で写真屋をやっていたんだね と 雌ギツネに語った と

したらば雌ギツネは おんちゃんは嫁はいないのがす? 未だ一人身なのすか? と 尋ねた と

なんとやぁ~ 人間の女子など話しもした事が無ぇし それよりも何よりも こげな甲斐性の無ぇ家さ誰が嫁になど来っかよぉ~ と 頓狂な声で言った と

んだのすかぁ~ おんちゃん独り身なのすかぁ~・・・したらば あの あのよぉ~ おらとこ嫁にしてくんねぇべか?

おら おんちゃんと同じく山奥で暮らしているもんだで あんまし賑やかしい男衆はダメなんでござりす おんちゃんみたいに物静かな男衆が何処かに居ねぇべかなぁ~ と 探しておったのす どーでやんすか? と 手に持った湯飲み茶碗ば見つめながら もじもじと 語った と

あいや そげな事ば急に言われても と 口ごもりながら言いつつ 頭の隅では これは雌ギツネだもんな おらとこ騙してなにするつもりだべ? とって喰うんなら こげな美味いまんま喰わせなくても良かんべに・・・ははぁ~ん 太らせてから喰うのだかぁ? と アレコレ考えた と

そんな事を察したのか おんちゃんの気持ちの中は雌ギツネには見えていたんだか こう言った と

おんちゃん おんちゃんは 不思議な写真機で覗いて おらが雌ギツネだとは知っていたんでござりすぺ? んだすぺ? 

おらは おんちゃんがおらどこ雌ギツネだと知っても知らん顔して写真に撮ってくれたのが嬉しかったのす 

んで おらが支度したまんまば美味そうに喰ってくれたのも嬉しかったのす 

おら 飯ば喰ってるおんちゃんの穏やかな気持ちが好きになってしまったのす どーか おらとこ おんちゃんの嫁にしてくれろ と 吸い込まれそうな真っ黒い瞳でしっかとおんちゃんば見て きっとして言った と

おんちゃんは思った と

んだなぁ 人間よりもまめな雌ギツネと所帯持つのも悪くねぇかもなぁ~ どっち道 おら 人間が好かねぇのだから 雌ギツネの女房がお似合いかもしんねぇなぁ~ と 思った と

うん うん 分かった おめの言う事は十分承知した だども 一つだけ おらにも頼みが有る これさけ聞いてくれれば おら おめと夫婦になるのに異存は無ぇ 

あのな おらと一緒の時には絶対に尻尾を見せねぇでもらいてぇんだ ずーっと人間の姿で居て欲しいんだども それは 守れっかい? と 尋ねた と

すると雌ギツネは 分かりした おら おんちゃんの前では絶対に尻尾ば出さねぇと約束するす きっと人間の娘のままで居ると約束するす と 言って 雌ギツネはおんちゃんの手をぎゅっと握った と

おんちゃん おんちゃん おら雌ギツネだで 村の衆ば呼ばって祝言と言うわけにはいかねぇんで 今夜 おんちゃんと二人でそげな事の真似事ばしてぇと思うだけんども どーだべか? と 雌ギツネは聞いた と

んで おんちゃんは その前に おめばなんと呼ばれば良ぃっけな? もしも名前が無ぇんだらば おコン つうのはどーだんべ? と 言った と

すると雌ギツネは おコンで良がす おコンは良い名前でやんす 嬉しいでやんす と 言って おっさんの首っ玉に縋り付いた と

あ これ おめ まだ祝言も挙げてねぇんだから そったにくっついたりしてはアレだべ と 言いながらも おんちゃんは 雌ギツネの胸元から立ち上がるほのかに甘い香りに鼻の穴くすぐられて まんざらでもなかった と

したらばおんちゃん 今夜は二人切りだども ささやかな祝言を挙げるっつう事で おら 支度すっからね おんちゃんは ゆっくり休んでいてけさいん と 言って おコンはまた豆々しく動き出した と

その夜はおコンの手料理が並べられ そして お酒も用意されて おコンと おんちゃんは ささやかだけんども 楽しく過ごした と

おんちゃん おんちゃん と おコンが小さな声で呼びかけて・・・これから床に入るんだども おら 未だおぼこでやんす なにとぞ宜しくお願いします と 言った と

あいやぁ~ そげな事ば言われても おらもその道は まだナニだもんで まず こちらこそ よろしくお願いするもんだす と 言った と

おんちゃんの煎餅布団はいつの間にか緞子の布団になって 行灯の火を落とし 二人して床に入った と


翌朝 麓の村で騒ぎになっていた と

なんだか 山の写真屋さんの方で やたらと大声で鳴く鳥が居る と

写真屋の屋根に留って カンコ カンコ カンコ と 麓の村でも煩く聞こえる程の大声で鳴く鳥がいたと 騒ぎになった と

んで 村の駐在が 写真屋さんはなじょしたべ 様子見てみなくちゃなんねぇな と てくてくと山道ば登って行った と

写真屋さんの戸口に立つと駐在さんは あれ? カンコ カンコ と鳴いていた鳥が静かになった なじょしたもんだ? と 思ったけれども 写真屋さぁ~ん 駐在だげっとも なんともしてねぇすかぁ~? 居たったのすかぁ~ と 呼びかけた 

しかし なぁ~んにも返事も無ぇで そん時 また あの鳥が カンコ カンコ と鳴きながら現れて 屋根の煙窓から家の中に入って行って 一段と大声で カンコ カンコ と鳴いて騒いだ と

駐在さんも なんだか様子が尋常ではないと思い 閉まっていた戸をこじ開けて中に入った と

したらば 写真屋のおんちゃんが 二つ並べられた椅子に座って にっこり笑ってこと切れていたんだ と

なんして一人で椅子に座って こんだに にっこり笑ってるって 何か良い夢でも見たまま逝ったんだがなぁ~ 冷たいがら 暫く立っているもんだな と 駐在さんは思った と

暫くして 街から色んな役人がやって来て アレコレ調べたっけ おんちゃんが亡くなった原因は 中毒であった と

医者様の言う事にゃ おんちゃんはあんまし腹がへって道端のぺんぺん草など喰ったんだが そん時に 毒キノコだの なんだりかんだり 皆食っちまったんだ と

で おんちゃんの写真機には乾板が残っていたんで街の写真屋さんがそれを現像したんだ と

したらば 乾板には 花嫁衣装を着ためんこい娘と おんちゃんが映っていたんだ と さ



ふぅ~ 落とし所は 夏の世のミステリー風にしたかったわけですが 未熟ですなぁ!!!











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閑古鳥

2013-08-16 09:04:42 | 盗作童話
昔し あったどな

山ん中に ちっちゃこい写真屋さん あったどな

写真屋のおんちゃんは(おんちゃん=おじさん)たいそうな働き者ではあったども なんとしても写真屋の場所が悪かったんだな

山道の 狸や狐はよく通るけども 人は中々通らねぇ 淋しい場所だったもんな

写真屋のおんちゃんは 腕は良かったんだけれども 困った事に 人が嫌いだった

人が嫌いだもんで 山の中に写真屋さんを開いたんだね

たまぁ~に 麓の村から人が来て おんちゃんに写真の仕事を頼むくらいで 客はなかったんだね

あるとき おんちゃんは食う物が無くて 店の前の道端に生えていた ぺんぺん草を喰ったんだね

ぺんぺん草は煮ても茹でてても美味いもんではなかったけれども 腹ぁ減ってたもんで 喰ったんだね

おんちゃん また腹減ったんだけれども もうぺんぺん草も無くなっちまって 食う物が無かったんだと

そん時 裏山で鳥が鳴いていたんだと カンコ カンコって鳴くのは 閑古鳥だなや

それにしても今日は喧しいな 鳴き声もいつもより貧乏臭いし どれ 閑古鳥がナニしたもんだか と 裏山に見に行ったと

そしたら 誰が仕掛けたもんだか トリモチに絡んで暴れている閑古鳥を見つけたと

ありゃぁ おめ トリモチに掛かっちまって嘆いていたったのか? そーかぁ そりゃぁ丁度良かった おら腹減ってるで おめこと喰ってみんべぇ と、閑古鳥を持って帰ったと

どれ 閑古鳥には可哀想だけれども おんちゃんもおめとこ食わねぇと死んじまうで 喰わせてくれろ と、竃に火をくべた と

どれ と言って煮立った湯に閑古鳥こと突っ込むべと思って握ったら 痩せてるんだねぇ

おめ こんなにガサばかりで 中身が無ぇで 喰うとこ無かんべよぉ と、閑古鳥に言うと

おんちゃん オラは閑古鳥でやんす 閑古鳥は貧乏神の御先棒担ぎでやんす 貧乏神の小間使いが肥えて美味いわけがあんめ・・・わかるかなぁ? わかってくれろ と、言ったと

なるほどなぁ~ おめの羽根ば毟ったら骨しか無さそうだな ンでも 他に喰う物は無ぇから やっぱし鍋にブチ込んで煮て喰う と言ったと

そしたら閑古鳥が おんちゃん そんな惨い事しねぇで オラとこ逃がして見てくれろ きっと良い事があるから~ と、言ったと

いや 鶴の恩返しのようなのは要らねど おら人が嫌いで女子(おなご)も嫌いだから と、言うと 閑古鳥が いや おんちゃん 写真屋が流行って お客が店に列成して困る程繁盛させっから・・・なっ、と、言ったと

ンだがぁ? おめとこ喰っちまうよりも後でもっと鱈腹食わせてもらえるってか?

よし それならお前を逃がしてやるべ と 閑古鳥を逃がしてやったと

その夜はとうとう何も食う物が無く 鍋に沸かした白湯を飲んで おんちゃんは寝たんだと

そして 翌朝 未だ朝靄も晴れて無い時間だと言うのに表で戸を叩く音がしたんだと

なんだべやぁ~ と 表に出てみると まるで昔の校長先生のような髭の紳士が燕尾服を着て立っていたと

そして 写真を撮ってくれぃ と 店に入って来たと

へいへい 写真でやんすね 撮りましょう 撮りましょう と 電気をつけて準備して

そんでは そこの椅子に腰掛けて下さい 特別良く撮りますからね はい 大きく息を吸ってぇ 止めてぇ~ パチっ と

そのとき ファインダーを覗いていたおんちゃんは 椅子に座っている紳士の本当の姿が見えちまった と

ありゃぁ~ これは、裏山のもっと奥の山に住む古狸じゃないか さては 閑古鳥に頼まれて化けてやって来たんだな と

校長先生のような紳士は ああ ナンボだね? と 料金を尋ねた と

へい 100万円でやんす 特別良く撮りましたから 少し高くなってます と おんちゃんは言った と

ナントまず 100万円とは安いもんだ 前金で置いて行くから受け取れ と 札束を出したと

へぇ~ 現金でやすんかぁ~ コリャァ魂消た と おんちゃんが言うと 古狸は 後で私の娘も写真を撮りに来るから と もう一束懷から取り出して置いて行ったと

こんな物貰ってもなぁ~ どうせクヌギの葉っぱなんだから と 思っていると ゴメンください と 若い娘が入って来た と

ありやぁ~ 狸の娘だな しかし よく化けたもんだ メンコイしな と 思いながらも 気付かぬ振りして はいはい 写真ですね お父様から承っておりますよ と 狸の娘を招き入れて写真を撮った と

写真機を構えて 暗幕を被って ファインダーを覗くと そこに居たのは狸の娘ではなくて 川向こうに住む若い雌ギツネであった と

なんとまぁ~ 閑古鳥のやろうは顔が広いもんだ 古狸の後は雌ギツネか・・・

古狸と雌ギツネでは 貰えるお金は 木の葉のお金 暇つぶしにしか成ら無いんだがなぁ と 少し面白いけれども 腹は減ったままだし と 呟いたと




やべっ・・・写真の修整の仕事が入った 続きは後で


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古谷のもり 異聞

2013-07-31 12:10:38 | 盗作童話
昔ぁ~し、あったどな。

爺様と婆様と、山の古い家に二人で住んでいたったと。
山の家の事だもんで、屋敷内に馬だの猫だの犬だの、そんなのも一緒に寝てるんだっけ。

ある日の事、雨が降り続く晩げの事であったど。

爺様や、漏りが酷くて困ったもんですなぁ~ これは怖くて怖くて、狼なんかより余程怖いもんでやすなぁ~、と、言ったっけ。

ンだな、漏りが酷くなってぼたぼたと来たらば囲炉裏の火でさえ消えてしまうもんだでなぁ~そりゃぁ怖いもんだ、と、爺様は答えた、と。

そん時、納屋の中には狼が隠れていだったんだね・・・爺様と婆様を喰おうと思って忍び込んだんだね。

そんでも、狼は聞き慣れない名前を耳にして、もりってなんだべや?
狼よりもおっかねぇって、そんなものはここの山では出合った事も無いもんだが・・・もりが居るんだが、ここに? と、今まさに爺様か婆様かどっちか喰おうとしていたのに、躊躇っちまったんだと。

あぁ~婆様、あそこ、梁のところ、漏りが酷いんで、雨がやんだら一仕事してやっつけておくかね? と、天上を眺めて爺様が語ったと。

なぁ~にぃ~爺様は狼よりもおっかねぇもりをやっつけるってか?
いやぁ~、これは、迂闊に爺様に飛びかかったら危なかったな。
んじゃぁ婆様こと喰ってやんべかなぁ、と、思ったんだげっとも、もりが気になるなぁ~もりは天上にいるんだかや? と、狼はまた躊躇したと。

そん時、納屋の天井には馬泥棒が隠れていたったんだね。
爺様んちの馬は評判の馬だで、盗んで売り飛ばしてくれようって、潜んでいたんだね。

昔の家の事だし、古屋なもんで明かりもろくに無くて囲炉裏端はなんぼか明るいんだが、辺りは殆ど真っ暗さ。

泥棒はさっさと馬の見当をつけて飛び乗って逃げるべとしていた時に、下の方でごそごそと動くものがあったんだね。

それは狼だったんだげっとも、泥棒は暗くて見えないもんで、馬の背だと思って飛び乗ったんだと。

びっくりしたのは狼だね・・・うわぁ~もりが天上から落ちて来たぁ~と、驚いて納屋から飛び出したと。

狼は背中に取り付いたもりを振り払わなくちゃと焦って、ざんざんと暴れて山中を走り回ったんだげんとも、泥棒も落ちたら狼に喰われちまうと思って、こっちも必死でしがみついて放さねぇし。

狼は狂ったように走り回利、泥棒も振り払われてはならじと必死で、どうにもなんなかったと。

そん時、狼がでかい穴を見つけてどーんと飛んだと。

それは大きな落とし穴で、さすがの泥棒も力尽きて深い落とし穴に落ち込んだと。


狼は山に戻ると狸だの狐だの猿だの兎だの集めて、古屋のもりがどんだけ恐ろしいものか、とくとくと話したと。

すると、山の皆は、いっぺん古屋のもりと言うものば見て見たいもんだ、皆して行けば怖くもねぇべ、と言い出して、狼の案内で見に行く事になった。

落とし穴はとても深くて誰が覗いても何も見えねぇで、もりはよぉ~おっ死んじまったんじゃねぇかぁ? と、言い合ったと。

そん時、お調子ものの狸が、俺の金玉袋は伸び縮みすっから下さ垂らしてみっぺぇ~よ。
そんでもりがしがみついたら引っ張り上げちまうべぇよ、と言って金弾袋を垂らしたと。

泥棒は真っ暗な穴ん中でどーしたら出られっかなぁ、と、思案していた所になんかが降りて来たもんで、これ幸いと掴んで引っ張ったと。

すると、狸ぴっくりして、もりが食いついたぁ~皆して引っ張ってくれろぉ~と叫んだもんで、皆して引っ張ってみたと。

すると、狸の金弾袋はびろーんと伸びて引っ張られちまってずんずん伸びたと。

そん時、狸と仲良しだった猿が、狸どん、今助けてやっからな、と、穴の中に長い尻尾ば垂らしたと。

そん時、泥棒は掴みどころの無い狸の金弾に往生していたもんで縄のような猿の尻尾を見て飛びついたと。

狸は突然金弾袋を放されてどでんしてひっくり返り、猿は尻尾を引っ掴まれて大慌てで、皆して引っ張ってくれろぉ~と、叫んだと。

すると、泥棒がびょ~んと飛び出したと思ったら、猿の尻尾はぶっつりと千切れたんだと。

そして、息んだ猿の顔は真っ赤になっちまって、長くて自慢の尻尾は千切れて短くなっちまったと。

そんで、猿は自慢の尻尾が無くなっておしょすくて、ケツば赤くしてしまったんだと。

ああ、お調子者の狸は、あれ以来、金玉袋が百畳敷きに伸びっちまって難儀してるんだとさ。

とんぴんからりん ど~んとはぁ~れ。


いや、落ちがおもしろく無い・・・異聞になってないなぁ。

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