ボランタリー画廊   副題「げってん」・「ギャラリーNON] 

「げってん」はある画廊オーナとその画廊を往来した作家達のノンフィクション。「ギャラリーNON]は絵画を通して想いを発信。

げってん(その5)

2007年04月21日 | 随筆
 私は彼に「鐵男さん、あなたの周りはにどうして大勢の人が寄ってくるのですか」 と聞いてみた。不器用なそのままのしつもんであるが彼は答えてくれた。
「マージャンがきっかけになっていると思う」 という意外な返事だった。
 彼の兄が大学を卒業して郷里で教鞭をとりたいと帰って来た。そこで始まったのがマージャン。彼は雀荘へついて行き、兄貴の後ろでマージャンを覚えた。腕を上げ四人の中の一人となった。更に腕を上げ隣のテーブルからもお呼びが掛かるようになった。彼は牌をちょっと触っただけで牌の種類が分かるようになり、上家、下家、対面の顔色や仕草を見ながら勝負できるようになった。めったに負けなくなった。
 雀荘は教師、医者、市職員、行員、局員、社員いろんな人々が集まる場所。顔見知りとなり、彼にしばしば頼みごとや相談が持ち込まれるようになった。
 私は、このあたりにポイントがあると思う。
最初の一人の頼みごとを親身になって聞いてやり、よい結果をもたらしたのではないかと思う。
彼は「商売人としての立場と勘を働かせた」という。マージャンでの戦利と無償の世話との見事なバランスをとり、可愛がられながら、便利がられながら、人間関係の輪を波紋のように拡げていったのだと思う。
 一方で彼は「マージャンで飯が食えるのではないかと思ったことがる」と述懐している。
商売用の技術を身に付けるため上京した際、腕試しに雀荘に乗り込んだ。ある時、詰め込み(自分に有利な牌が来るように牌を積み上げること)をやってみたら、
 「お前さん、そりゃよくないよ」
と軽くあしらわれたのだ。上には上がいることが分かり、マージャンを生業とすることは断念したというエピソードがある。



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1 コメント

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Unknown (若松のヒロシ)
2007-04-26 00:54:31
メールの整理が送れて(毎日二百件も入るので)貴殿のメールを見落としていました。スマートなブログでさすがと思いました。今後も楽しみにしています。
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