TANEの独り言

日々の生活の中でのつぶやきだから聞き流してネ

懐かしの根子岳 … <part⑧>

2022-01-16 10:30:00 | 山岳会
谷が二俣に分かれる辺りから積雪が見られるようになり、私たちは左側の谷の方へ進んで行きました。


傾斜はキツくなりましたが、まだロープを出す程ではありません。

スマホにダウンロードしたルートと、紙の地形図を見比べながら、目の前に広がっている谷や尾根、崖が地形図上のどこにあたるのかを地図記号や等高線の密度等を見ながら判断します。

次第に傾斜がキツくなり、積雪が氷のように固くなってきました。

いつしか私は会長の指示の元、腰のカラビナにロープを繋ぎ先頭を進んでいました。

凍った斜面に登山靴のつま先を蹴り込みながら、一歩一歩高度を上げていきます。

急傾斜の谷を、滑って足を踏み外さないようにしながら登っている途中で振り返ると、朝方は雪雲に隠れていた天狗峰が青空をバックに聳り立っている姿が目に入ってきます。


谷を駆け上がるように氷のように冷たい風が吹きつけてきますが、特訓を受けていた成果があったのか、私の中に不安は全くありませんでした。



ロープを使いながら岩と砂の谷を上り詰め、灌木の茂る尾根道に出た私たち5人は、やっとのことで根子岳南峰に辿り着きました。


登りはじめて5時間後のことでした。

南峰の頂上にたどり着いた私たち5人は、これまでの緊張から解き放され、歓喜の声をあげながら互いにハイタッチしました。




会長を含め今回のメンバー5人は、根子岳南峰山頂で記念写真を撮り、随分遅めの昼食をチャチャっと食べて下山したのでした。

















懐かしの根子岳へ …<part⑦>

2022-01-15 11:40:00 | 山岳会
地獄谷には8つの砂防堤があります。

最初の2つは、コンクリート道から見下ろしながらやり過ごします。

3つ目の砂防堤からは左右どちらからか越えていかなければならないのです。


簡単に越えて行ける砂防堤もあれば、先に越えたメンバーが差し出すスリングにつかまり越えて行くこともありました。

8つ目の砂防堤を越えたところで本格的な登攀がはじまります。全ての登攀具を身に付け、5人全員一段と気合が入ります。


岩壁が左右から迫り谷が狭くなりました。



私がビルの高さ程もある岩壁のすぐ近くをメンバーの一人と会話しながら歩いている時の事です。

後ろを歩いていた会長さんが私たちに向けて厳しい口調で声を懸けられたのです。

「あんまい壁に近づくぎんいかんバイ!」
「いつ上から岩の落ちてくっかわからんやろが!」

いつも冗談ばかり言う会長さんですが、山に入ると周囲の細かなところまで注意を払い、メンバーの一挙手一投足に目を向けられていたのでした。

私は会長さんに喝を入れられた思いがしました。


谷が二俣に分かれる辺りから積雪が見られるようになり、左側の谷の方へ進んで行きました。











懐かしの根子岳へ …<part⑥>

2022-01-14 09:24:00 | 山岳会
途中、高速道路を使いました。

スリップしないよう用心して運転しますが、冬用タイヤに交換しているので安心感があります。

次第に空が明るくなり、阿蘇の外輪山の内側(カルデラ内)に入る頃は雪がチラチラと舞いはじめました。

根子岳の登山口に到着し頂上を見上げても、稜線のギザギザは雪雲に隠れて見えません。

今回は根子岳南麓の上色見から地獄谷を詰めて南峰をめざします。


40年ほど前に根子岳に登った時は、夕方頃に南阿蘇辺りから荷物を担いで歩き(夜間ロード)、真っ暗闇の中で牧場にテントを張りました。

翌朝、テントから顔を出すと、真正面に朝日を浴びた根子岳が凄い迫力で私たちを睨みつけていました。



そして根子岳のギザギザした稜線が、

『さあ、来るなら来い!』

とでも言っているように感じました。

私たちは歩いて根子岳の北側に回り込み、崩壊した岩と砂に足を取られながら谷を登り詰めギザギザの稜線に出たのですが、天狗峰の下まで進んだ時、その垂直にそそり立つ岩壁に恐れをなして引き返したのでした。


今回はギザギザの稜線を歩くわけではなく、ましてやあの時断念した天狗峰に登るわけではありません。

しかし、40年経った今でも、根子岳は私にとって懐かしの山であり、ほろ苦い青春の想い出の山なのです。


登る準備を整えた今回の5人のメンバーは、地獄谷へと続くコンクリート道を歩きはじめました。

しばらく歩くと、それまで雪雲に隠れて見えなかった天狗峰が正面に姿を現したのです。











懐かしの根子岳へ …<part⑤>

2022-01-13 07:21:00 | 山岳会
会長さんとの2人だけの秘密の特訓も行いました。

必要な装備もほぼ揃いました。

<上段>ヘルメット
<中段>6本爪のアイゼン、ハーネス
<下段>スリング3、エイト環1、カラビナ3


そんな時、山岳会の会員さんで沢登りでご一緒させてもらったベテラン男性から、冬用タイヤを譲っていただけるという話が入ってきました。

その方は最近、車を乗り換えられていて、以前乗っていた車種が私のと同じなので、適合すればホイールごとあげるとのこと。

冬用タイヤがあれば安心して出かけらるます。こんな有り難い話はありません。

親切にもその方はタイヤに詳しい知人に調べてもらったり、タイヤの交換まで手伝ってくれたりしてくれたのでした。


あとは、当日の天気だけです。

根子岳の計画が出された時点から、“当日の天気が雨であれば中止” とされていました。

12月後半とは言え、暖かい九州では雨もあり得ます。

前日の天気予報は “微妙”な感じでした。

当日はO市役所に6時半集合、私は5時に起き大きめのおにぎりを1つ握り、沸かし立てのお湯をテルモスの水筒に注ぎます。

カップ麺はカップが潰れないように大きめのペットボトルを加工したケースに入れて持って行きます。

外に出ると、雨は降ってはいなかったので一安心しました。

私の住む町では間もなく雨が降る予報ですが、根子岳方面は雪予報となっており持って来いの天気です。

メンバー5人は、冬用タイヤを履いた私の車に乗り込みO市役所を出発しました。

もちろん、全員ちゃんとマスク着用してますから!












懐かしの根子岳へ …<part④>

2022-01-12 09:10:00 | 山岳会
母の百箇日の法要を終えた頃に会長さんから連絡が入りました。

「今日、△△山でロープワークの練習ばしゅうで思とっばってん、あんたはどがんね?」
*日本語訳:今日は△△山でロープワークの練習をしようと思っているのですが、あなたはどうですか?

会長さんからのお誘いはいつも唐突です。

しかし、これも私の事を心配しての訓練へのお誘いです。

私は少し考えましたが、3ヵ月も活動から離れていたことで不安もありましたので、有り難く会長さんのお誘いを受け行くことにしたのでした。

急いで準備をし、会長さん宅を廻り、車で30分程のところにある△△山の登山口に到着しました。

登山口から少し歩き、手頃な斜面を見つけてロープワークの練習が始まりました。

始めて使う登攀具もありましたが、それらの登攀具の使い方や注意点を会長さんは丁寧に教えてくれました。

ロープワークの練習が思いのほか早く終ったので、山頂近くの稜線にある磨崖仏を見に行くことにしました。

急斜面を30〜40分登り、尾根まで出た辺りの杉木立の向こうに平らな岩の壁が見えてきました。



よく見ると、その岩の壁には観音様の姿が彫られています。

今まで、山で石仏を見かけてもそれほど興味は湧かなかった私ですが、ブログ仲間のtenzanbokkaさんの影響でしょうか、観音様の優しいお顔をしばらく見上げていたのでした。

そして自然と掌を合わせていました。

登山道を下りながら、久しぶりに心地よい疲労感を感じるとともに、優しい気持ちになっている自分を感じていました。