SETの本公演ミュージカル・アクション・コメディー「太秦ラプソディ~看板女優と七人の名無し」を穂の国とよはし芸術劇場で観てきました。
東京・愛知公演の最終日ということで、少し内容を振り返ってみたいと思います。
まずは、物語の大筋にあるのは「蒲田行進曲」のパロディ活劇…。
売れない大部屋役者と看板女優が所属する「太秦撮影所」が海外の大手ネット事業者に買収されてしまうという設定から始まります。
「蒲田行進曲」は、行け行けドンドンの映画産業時代のお話ですが、こちらは斜陽産業になって久しい映画業界、特に予算も膨大に必要で制作が困難になっている時代劇制作現場でのお話です。
「行進曲」=「マーチ」は、楽しく快活な雰囲気がある楽曲ですが、「ラプソディー」=「狂詩曲」には、自由奔放で民族的・抒情的なもの…。
また、異なる曲調をメドレーのように繋いだり、既成のメロディを引用するような楽曲のことです。
まさに、SETの持ち味を発揮するようなタイトルになっています。
海外のネット事業者に買収された太秦撮影所では、看板女優と大部屋役者がうち揃って自主映画を製作しようとクラウドファンディング等を使って資金を集めますが、あえなく中止に追い込まれてネットで世界中に配信される日米共同制作の映画が「太秦」で撮影されることになり、大部屋俳優の一人だった伊勢本福三(福本清三のパロ)が準主役となって、その後海外で大活躍し日本に戻ってきます。
日米合作映画の製作する際に突然引退してしまった看板女優と一緒に買収で中止に追い込まれた映画を製作したいと彼女の元に話し合いに行きますが、実は彼女は当時若年性アルツハイマーを発症して結婚を期に引退する決意をしたのです。
そんな彼女をなんとか撮影所に引っ張り出して、廃業した当時の役者たちを揃えて撮影が始まります。
「沖田総司」役の看板女優は台詞やタテを全く覚えていませんが、「よーい、スタート」とカチンコの音、役者たちが演じる迫力ある斬り合いに刺激され、当時のことを思い出して、いよいよ「階段落ち」のシーンに…。
「蒲田行進曲」でも主役に斬られた斬られ役の銀ちゃんが「階段落ち」するという場面がクライマックスになっています。
この舞台の設定では「沖田が斬られ、斬った役者が階段落ちする」というおかしなパロディになっています。
そして、大団円を迎えます。
まあ、こんな「あらすじ」ですが、SETらしい様々なパロディが全編満載で、50代以上のSETの長~いファン歴を持つ人にはタマらん舞台だったでしょうね。
じいちゃんも、約2時間半笑いっぱなしでしたが…。
舞台の中盤では、三宅さんと小倉さんの奇妙なやり取りで会場を笑いの渦に巻き込み、台詞の端々に古さと新しさを混ぜ込んだパロディによる皮肉が込められているのはいつも通りです。
ちょっと古いお色気言葉にayameちゃんが意味が分からず「ねえ、○○ってどういうこと?」とtakapapaに訪ねてパパは困り果てる始末…。
劇団員の年齢も高くなり、ミュージカル要素は少なくなったものの、コメディー部分は相変わらずスゴかった。
若い劇団員も増えてきて、これから彼らの活躍を期待しています。
劇団で「制作」部門を担当する三男坊のryo~は、次世代のSETの姿を実現するため若い役者さんたちと新しい舞台づくりに取り組んでいます。
これからも頑張って、唯一無二のミュージカル・アクション・コメディーの世界を創り上げて欲しいと思います。