初出社

無職期間終了、初出社である。
午前中は会議室で就業規則やら保険証配布やらの諸手続き。
中途の新入社員は６名もいた。
景気がいいようだ。

昼前に各部署の教育担当者がそれぞれの新入社員を迎えに来た。

他の新入社員を迎えに来たある教育担当者が僕をみつけ、
『あ！どうも！ご無沙汰しております！』と深々頭を下げた。

その男は『RIN』で知り合った元気のいいナイスガイだった。
人事部の人たちはキョトンとした。
僕は少しばかり場が悪くなってしまった。

僕は、自部署のあるフロアに案内された。
スンゲー人がいっぱいいる。
グルっと見渡した。女性の固まっているデスクがあった。
あの女性陣がきっと『クレームシスターズ』に違いない。
案の定、そこが僕の部署だった。
デスクもチェアもパソコンも新品のピカピカだ。

すぐ、そのフロアの各管理職に挨拶回りである。
別部署の一人の気さくな管理職に挨拶した。
『RINの○○子さんから話聞いてるよ。早いうち飲みに行きますか。』
『はい、よろしくお願いします。』

フロアは広く、５人くらいでウインドでフィギュア８できるくらいだ。
そんなこと思いながら窓の外を見ると、なんと海が見えるではないか。
これは嬉しいやら悲しいやら複雑な気持ちになった。
風が吹いた日にライブカメラがいらないのだ。
恐らく精神的に非常に悪い環境だ。
外の木が揺れるのではなく、白波バンバンの海が見えてしまうのだ。

午後は、ネットワーク管理の専門部署がありそこの教育担当者の指導で、
会社が使用するネットワークにユーザー登録したり、専用のメアドをもらったり、などなど。

それが終わったとき、また知り合いに出くわした。
その知り合いも飲み屋で知り合ったのだ。

『今日からですか！いやー、昨日サーフィンしたんですけどね、波なくて。
今度波乗り教えてくださいよ！』
（おいおい！声がでけーんだよ！）
大きい声で話すから、僕が波乗りすることがバレバレである。

ま、いっか。ここはサーフィシティー茅ヶ崎ダス。

明後日は、マネージメントレビューにいきなり出席である。
各部門長が社長に対し、経営状況や不適合などを報告し、
それに対し社長がレビューするという会議である。
居眠り厳禁である。

退職日記～おまけ～→Xデイ近し！

転職を決意するちょっと前から、自分の業務手順なるものを作成した。
業務のフロー図とそれにそって流れていく書類と作成者と承認者を明確にした。
大抵の人が仕事で苦労するのは、業務の流れが不透明なところだ。
これを僕は半ば強引に明確にし、それを会社が承認する仕組みに仕立てた。

これはどういうことかというと、担当者がいつ変わってもできるようにしたのだ。

だから退職を目の前にしてもその手順書と書式サンプルを提出し『この通りやれ』で済んだ。
できなければ、お前が悪い、に持っていった。
できなければお前らがやりやすいように改善しろ、と持っていった。

大体の仕事というものは、
交渉術や先手管理やリーダーシップなどの特殊能力を省けばほとんど同じものだ。
『誰でもできるようにする』というのが僕の信念だったので、そのようにやった。
もしできなければ、残された連中が悪いのだ。
そして、それができない会社なら、やはり退職正解に違いないのだ。

今日会社を後にするとき、１ミリの未練も感慨もなかったな。

何故なら次の会社でやるべきことがあるし、
何よりも徹底的に波乗りとウインドをしなくてはいけないのだ。

僕は自分がすべきことを見つけたし、それは崩れることもあるだろうけど、
やっと自分に適する仕事が見つかり、さらに人生のささやかな夢が明確になった。

ささやかな夢は他でもない。
波乗りして生涯を終えることだ。
僕的には結構大変なんだ。
海の街に住み続け、そのコンディションを余裕を持って当てるというのは、
結局のところ経済余裕なんだ。

生活のための仕事には疲れ果てた。
もっと余裕を持とう。
仕事が大変でも、それが生活のためと思うと辛くなる。
海に入るためだ。あとできれば女のためだ。
女を幸せにするために働くなんて最高ではないか。

『おかえり～』を聞くために働いて何が悪い。
僕はそういうくだらないステキな男になりたい。

夢は待っていては来ないものだ。
当たって砕けろだ。

彼女から曜日と時間を指定してきてくれた。
お酒はあまり飲めないらしい。
僕は知っている。
本当に飲めない女は、『少ししか飲めません』って言うんだ。
あまり飲めない、というのは、少しは飲めるということだ、な。

曜日を公開すると、わざわざ逗子から車で冷やかしに来る方がいるのでやめとく。
友達の奥様方も集団で冷やかしに来そうだ。

彼女は画像のようにハナタレウエーバーにはいささか不釣合いだ。
ハナタレウエーバーはヨン様になるしかない！

僕は酔うと、相手がチェ・ジウでも松嶋奈々子でもマドンナでも
シモネタで笑いを取ろうとする。
笑ってくれるためなら変な顔もしてしまう。

絶対ダメだ。今度限りはダメだ。
でも、笑いを取りたくなるんだよなぁ～。

ゲッティング男の退職日記４ 最終～It's Stll Rock'n'Roll To Me

本日、風なし波なし。

今日は典型的なサラリーマンの休日を送った。

朝、普通に起きて駅前へ買い物。
白いタートルネックのセーターと、ブルーグレーのラムウールのカーディガンと、
淡いパープルのマフラーを買う。
この俺がだ。
サーフブランドのトレーナーやヨレヨレの綿のシャツしか持ってない俺がだ。

たまには大人っぽい格好もしなくちゃな。

メガネも新調した。
最近流行の少し細めのクールなやつだ。
俺は目が悪くて、海ではコンタクトなんだけど、どうもドライアイで普段は辛い。
普段はメガネが多いけど、メガネにコンプレックスがある。
いまだにメガネ君と言われるときもある。それがイヤなんだ。
形も古かった。で、クールなやつにした。似合うかどうかはわからんけどな。

メガネと服のせいでヨン様みたいだ。
相手がユジンだから、俺はヨン様になるのだ。
今は冬だし、俺は冬ソナ野郎になるのだ。


その後、愛車の電気系統がクレーム対象だったので、ディーラーに無償修理へ向かう。
俺の車はまるでガキの車だ。
ルーフトランクにダブルキャリア。
サーフブランドのステッカーに、極めつけは裸同然のフラガールのステッカーが貼ってある。
茅ヶ崎では全く違和感無いけど、おそらく都内に行ったら浮くだろう。
もしかしたらFine大好きな女子高生や、草好き丘サーファー女が集まってくるかもしれない。

その車を徹底的に洗車した。
俺は洗車がこの世で３番目くらいに嫌いなのだ。
洗車ほど無駄な時間の費やし方は無い。
車内を掃除機までかけた。最後に車内でココナッツお香をたいた。
なんだ、結局サーファー車じゃん！

マークXやレジェンドに乗りたいんだが、何故かいつも遊び系車になってしまうんだなあ。

最後に１００円ショップでファブリーズみたいな消臭スプレーを買う。
先日の忘年会が鉄板焼きだったため、いまだに衣類が臭いのだ。

家に帰り、請求書やダイレクトメールを整理して捨てて、
それから歯医者の予約を取った。
俺は上の歯並びはいいんだけど、下がよくない。
歯磨きがうまくできないので、歯垢を取ってもらうのだ。

それからロングボードのワックスを丁寧にはがし、リムーバーでキレイに磨き上げた。
ピカピカのサーフボードに戻った。

早めに風呂に入り、無精ヒゲを剃り、眉毛を手入れした。
毛抜きで端の毛を抜き、コームで整えながら専用はさみでカットするのだ。
これが難しい。細めにしたらいいんだろうけど、どこまで抜いていいのかわからない。
麻呂になったら直せないし！
抜いてくれる彼女がいればなあとイライラしながら手入れした。

今の時間のんびりしてるので、PCにためた音楽を聴いてる。
ビリージョエルが連発してかかっている。
It's still rock'n'roll to me! 『ロックンロールが最高さ』っていう邦題だ。
ナイスな邦題だ。そのままだ。
You May Be Right　もいいね。ガラスのニューヨクなんてふざけた邦題だけどね。
シンディーローパーのハイスクールはダンステリアみたい。（本人は邦題に激怒したらしい）
俺はこういうストレートなロックンロールがホントに大好きだ。
俺がやがて腹痛ハゲ部長とか言われても、きっとこういうロケンロール聞いてるな。


今週月火と休み、明日出社を最後にする。
書類を整理して、PCのデータをバックアップして、個人メールを全て消去する。
これをのんびり行い、最後は各部署に挨拶に行ってお終いだ。

タヌキ総務部長・ヅラ部長・死んだ魚目選任部長・ゴマスリ課長など、
会社の癌といわれる奴らの顔を二度と見なくて済む。
この世に法律が無ければ、一人ずつぶっ飛ばしてやりたいんだけどな。

さあ、明日終われば、次にはあれが控えている。
ずっと待っていたあれだ。久々に心た・か・ま・る。

それは、、、
ドクターコトーの最終回だ！

ゲッティング男の退職日記３

○○課　○○aio殿

今回の件　重要品質問題に登録されました。
各種　会議体での報告が必要になります。
予想される近々の日は　12/19日午後より　TMFP会議です。
添付する管理票に原因、対策を記入準備をしていてください。
正式に決まりましたら、連絡します。

重要品質問題登録票 作成日：2006/11/23 11:12:57
　　　　（兼進捗管理表）

作成者：○○工場品質保証部品質保証課

●連絡先
（正）ＧＭ・部長 ○○工場購買部　○○ ○○
（正）チーム長・課長 ○○工場購買部コンポーネント課 ○○○○

下記について、品質問題（ユーザークレーム）が発生していますので、
［ 重要品質問題 ： 特A ］ に登録します。
原因調査、対策及び、再発防止をお願いします。

●会議状況 ：品質会議 品情検討会 製品会議
●処置内容 ：<設計変更> <サービスニュース>
●解除状況 ： 品保課長承認完了 品保部長承認完了（管理票発行）
ＧＭ・部長承認完了（対策部門確認） 方針決定完了 チーム長・課長承認完了
ＧＭ・部長承認完了 １次解除 サービスニュース 　 サービスニュース原稿完了
設計変更（生産車織込み） 　 設計変更出図完了 実施時期指示完了
●重品管理表
●設変実施依頼書

こんな感じで市場に流出した重大クレームの対策会議の連絡が客先からあった。
オイラはこんな感じで、会社のケツ拭きをしてるわけである。
クレームの原因のほとんどは会社の管理体制や教育に起因する。
つまりベースがしっかりしていない会社は過ちを繰り返すわけだ。

まあ、そんなことに嫌気がさしたのは言うまでも無い。
経営者がアホだと、こんなこと年中やってるのだ。
対策するオイラはたまったものではない。

で、この会社を吹き飛ばすかもしれない重大クレームの会議は１２月１９日だ。
で、オイラは１２月１８日を最後に有給休暇消化に入る。
１２月１９日は御前崎か近所の海でウインドサーフィンをしている。
人呼んで、世界一無責任なウエーバーである。

ぶわーっはっは！
で、今日退職願は受理されたのである。

ここで一つ問題が発覚した。
退職金は、退職日にオイラ自身が中小企業退職金共済だかなんだかに申請するんだと。
申請して金が振り込まれるまで２ヶ月近くかかるらしい。。。

南の島はどこへやら。
御前崎の民宿にロングステイすらできないかもしれない。
ニューセイルの計画はどこへ行った！！
ひょっとして１ヶ月間パチンコでもしてるのか？？？
あちゃちゃー！ただの暇人になってしまうな～。

ゲッティング男の退職日記２

今日は辞意を部長に伝えなければならなかった。

昼休みに入る３０分前に意を決し、部長のところへ行った。

『部長、少しよろしいですか？』
『ああ』

近くの椅子を部長のデスクまで引っぱっていき、オレは座った。
座って、深呼吸をしてからゆっくり言葉を発した。

『私は、、会社を、辞めます。』

子音と母音と句読点までがわかるように、ゆっくり言葉を発した。

部長はＰＣを操作していたが、キーボードを打つ手を休め、目を閉じた。
１０秒か、２０秒の沈黙があった。

部長は口をゆっくり開けた。

『男が決めたことだから、俺が止めるべきことではないな。
お前がハッピーになれる選択なら、それでいいんじゃないかな。』

肝心な会話はそれだけで終わった。

その後、少し会話をしたが、
部長はオレに二つの話をしてれた。

一つめ
魚はきれいな水を好みそうだが、きれいな水では全部死ぬ。
少し濁りのある水のほうが魚たちはバランスよく生存するものだ。

二つめ
仮にお前が船の船頭だとしよう。
舵を少しだけ切った状態で、客には真っ直ぐ進んでると錯覚させろ。
実際はお前の行きたいほうへ船は進んでいるのだ。
モーターボートに客を乗せていきなり舵を取ってしまうとボートは速いスピードで目的地へ向かうが、
客はお前の操縦に不安を隠せない。

オレの心にずっしり響いた。
まだまだ理想を求めるオレに対し、次の会社でがんばるための贈る言葉だ。


オレは昼食後、デスクへ戻った。
灯りを消し、暗く静かな事務所で部長が椅子に座り空を眺め煙草の煙を燻らせていた。

人生は重い。

生きなくてはいけない。
答えを出さなくてはいけない。
笑わなくてはいけない。
泣かなくてはいけない。
怒らなくてはいけない。
波に乗らなくてはいけない。
無にならなくてはいけない。
考えなくてはいけない。
風に乗らなくてはいけない。
愛さなくてはいけない。

人生はなかなか忙しくてしんどい。
重くてときどき倒れそうになる。

そういうときは頭の中で、夏の眩しい海でのプレーニングを思い出してみる。
それとシャワーの後のうまいビールだ。
あの言葉とね！