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アトリエ・ダンカン公演「しゃばけ」@新歌舞伎座を観て

2013年05月11日 | 観劇メモ

いつものとおりまずは道中記から。

朝、近くのクリニックでヨメさんの月一度の検診を終えてから、ナビの目的地を「上本町駐車場」にして出発。初めての新歌舞伎座でしたが、順調に到着。
事前に聞いていた通り2Fに駐車(新歌舞伎座への通路の関係です)して、車椅子を押して新歌舞伎座のある上本町YUFURAに行きました。
劇場に入る前に腹ごしらえと、5Fのうおまんで昼食。
私は鰻玉丼定食、


ヨメさんは鰆の西京焼定食。コーヒーもついていて満足でした。


食べ終わって6Fに上がり、劇場へ。13時開演でしたが、30分前には入場出来ました。
劇場は新しいだけに完璧にバリアフリーで場内の移動も容易、当然ですがトイレもきれいでした。チケットは二階席でしたが、事前に一階の車椅子スペースに振り替えてもらっていました。宝塚大劇場でいえば20列ぐらい?で舞台からやや遠いですが、オペラで充分楽しめる距離です。

この劇場、他の劇場と比べて客席の傾斜が緩く、舞台の高さも低いのでかなりフラットな印象ですね。
今回、客の入りは一階で見る限り、前半部はほぼ満席でしたが、15列あたりから後ろはけっこう空席があり、私たちの座った車椅子スペース直前の19列はごっそり空いていました。おかげですっきり視界が開けて観劇は快適でしたが、興業的には心配になりますね。それと見落としただけなのか、普通ロビーでよく見かけるファンの花などが無かったのも寂しい感じでした。

さて、本題ですが、いや、本当に面白かったですね。鄭義信演出作品は初めてでしたが、楽しい観劇となりました。
幕が上がって、出演者が次々に舞台上に登場して踊りだしただけで面白そうな予感がしてきました。今回は客席から登場する場面が多くてサービス満点でしたね。

原作は畠中恵の「しゃばけ」(娑婆っ気からだそうです)で、大人気時代小説とのことですが、今回観劇するまでは全く知りませんでした。かなり情報難民化していますね。(笑)

アトリエ・ダンカンのホームページから


主役はご存じ沢村一樹
彼の演じる「一太郎」は廻船問屋兼薬種問屋、長崎屋の一人息子です。心優しく聡明ですが、腺病質で常に病気がち。
このため今回出演に当たり、沢村一樹も減量して役になりきろうとしたそうです。が、どういうわけか台詞が不明瞭で、私たちの席では二人ともほとんど聞き取れないのが残念でしたね。他の役者は小声でも聞き取れたのに、彼の場合は台詞の輪郭が鮮明ではなく、特に早口になったらほとんど聞き取れませんでした。

この劇場はスピーカーの位置の関係なのか全般的に音量が小さく感じましたが、それでも例えば麻実れいなど、ほとんどつぶやくようなセリフでも聞き取れたので、沢村一樹との違いが際立ちました。

また表情もあまり豊かに見えず、喜怒哀楽の感情表現に乏しい感じがしました。今回の舞台は全員芸達者な役者さんばかりだったので特にそう感じました。今これを書いているとき、たまたまBS-TBSの「浅見光彦シリーズ」が放送中でしたが、ドラマではちゃんと演じていますから、舞台にはまた別の才能が必要ということですね。「お春」が、切々と自分を慕う心情を告白しているのに、何のリアクションも示さずただ聞いているだけというのも変な感じでした。

その「お春」を演じている臼田あさ美が準主役扱いになっています。彼女は今回が初舞台だそうですが、そうは見えず頑張っていました。よかったです。とても初舞台には見えなかったですね。
台詞もしっかりしていて、ひたむきに一太郎を思う一途な表情が印象的でした。でも、最後の婚礼の場面で一太郎と結ばれてめでたしめでたしとなるのかと期待していたらそうならなかったのでガッカリ。今回の脚本で一番の私的ガッカリポイントでした。

ちなみに二番目のガッカリポイントは、紹介記事などを見て、これはてっきり「ベッド・ディテクティヴ」ものの時代劇かと思ったらそうではなかったこと。
最初の殺人場面に遭遇したあと、仁吉たちから「下手人に顔を見られているから絶対家から出ないように」といわれ、ははぁ、これでベッド・ディテクティヴの始まりかと期待したのですが、そのあとも一太郎は注意を無視してウロウロ出歩くし、話の中ではほとんど推理を巡らす場面もないわでガッカリしました。羊頭狗肉です。

アトリエ・ダンカンのホームページから


さて、次は期待の麻実れい。(笑)
今回の芝居随一のおいしい役回りが「おたえ」です。彼女を前回観たのが例の「ボクの四谷怪談」ですが、今回の役どころはその延長線上にありますね。今回もコミカル路線です。
ただし、「ボクの四谷怪談」ではほとんど風船ガムを膨らませて舞台を行き来する程度(笑)だったのが、今回は魅力満開の「麻実れいオンステージ」になっていました。
ダンスもコミカルな振り付けで弾けまくり、歌も往年の宝塚の舞台を彷彿とさせる聞きごたえ・見ごたえのあるものでした。今回の舞台で一番楽しんでいたのは麻実れいでしょうね。
二役目で一太郎の祖母役になったときは、衣装の打掛をマントのように鮮やかに翻してスッポンで退場するなど、見せ場満載でした。

最近はさすがに麻実れいも主役があまり回ってこなくなっていたので、ヨメさんも私もあまり今回の芝居では出番の期待をしていませんでしたが、意外に豪華な場面の連続にびっくり。
特に第一幕2場で熱唱する「神様お願い」は必見です。
ヨメさんは観劇中よっぽど「ターコさんっ!!」と声を掛けようかと思ったとのこと。ホントにターコさんの面目躍如でした。まあ私たちにとってはこれが一番の収穫。彼女、ストレートプレイから今回のようなコメディエンヌまで、本当に芸の幅が広いです。

次に印象的だったのは山内圭哉マギーの「佐助と仁吉」コンビです。本当に吉本のトップ漫才コンビといっていいほどぴったり息の合った掛け合いが爆笑を誘っていました。ボケと突っ込みの見本といっていいほどうまかったですね。このまま漫才コンビで食っていけます。
とにかく今回の芝居のお笑い場面は、随所にヨシモト満載で、まんま吉本興業プロデュースといった感じで笑わせていました。

あとの役者さんもいずれ劣らぬ芸達者の面々でした。
一太郎の異母弟・「松之助」役の高橋光臣も、日陰の身ながら誠実に生きる好青年と、妖怪に憑りつかれて一太郎を襲う狂気の役を好演していました。セリフも聞きやすく「梅ちゃん先生」からさらに好感度アップです。
最後の場面で久保酎吉演じる父親・「藤兵衛」と和解する場面は思わずホロリとさせられました。最後を締めくくる味のあるいい演技でした。

一太郎と幼馴染の菓子職人・「栄吉」役の宇梶剛士もいい味のある役者ですね。三つ違いの妹、お春の臼田あさ美と、母親役の阿知波悟美の掛け合いもピッタリ息があっていて見ごたえがありました。知らない役者さんばかりでしたが、世間には私などが知らないだけで、まだまだいい役者さんが沢山いるものだと思いました。

後の妖(アヤカシ)たちの面々も「鈴彦姫」の星野園美を筆頭に、池田有希子西村直人金井良信孔大維水谷悟といずれ劣らぬ恐るべき怪演ぶりでインパクトがありました。劇中で驚異的なテクニックで三味線を演奏する杵屋七三も印象に残りました。超絶技巧です。もっと聞かせてほしかったですね。

芝居全体としてはコミカルな演出で楽しめましたが、脚本・演出の鄭義信、しつこい演出で有名だそうですが、本当に繰り返しが多いです。
パンフレットで高橋光臣が「(鄭義信は)他の演出家がこだわらない『くだらないギャグ』に対する演出は本当にしつこい。」と言っている通り、ギャグの演出はくどいくらいしつこく繰り返されます。その演出がただでさえかなりヨシモトが入っているのに、それをこれでもかこれでもかと何度も繰り返すので、関西人の私たちでもちょっと食傷気味になりますね。
見ていて、これが鄭義信テイストなのかと思いました。

同じコミカルな演出でも井上ひさしは関東風味であっさりしていますが、鄭義信はこってりとした関西風のお笑いの味付けですね。

ともあれ、今回の観劇は、劇場からして初めてで、役者も麻実れい以外はみんな初見で新鮮でした。そしてお目当ての麻実れいがまさかの活躍で望外の大収穫。(でも半額チケットでなかったら観ていないかも)
新歌舞伎座は、車椅子でも駐車場から劇場までの移動がスムースで、劇場内のバリアフリー度も高いので、今後もいい舞台があればぜひまた観たいところです。

これでまた行動範囲が広がったので、いい経験になりました。

そうそう、主人公の「一太郎」の名を聞くたびにジャストシステムを思い出していました。できればお春も「花子」にして欲しかったですね。(笑)

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