思いつくままに書いています

間口は広くても、極めて浅い趣味の世界です。
御用とお急ぎでない方は、ごゆっくりどうぞ。

兵庫芸文センターで 『書く女』を観て -黒木華、大した役者さんでした

2016年02月17日 | 観劇メモ
13日に兵庫芸文センターで二兎社公演『書く女』を観てきました。

作・演出は永井愛、主演は黒木華(くろき はると読みます)で、2006年に寺島しのぶ主演で上演された作品の再演です。

話は井上ひさしの『頭痛肩こり樋口一葉』と同じく、一葉の短い生涯がテーマですが、描き方は全く対照的です。

井上ひさしの脚本ではかなり自由奔放に(若村麻由美の幽霊とか(笑))樋口一葉を描いているのに対して、永井愛は一葉の実生活を忠実になぞり、彼女の文学が生まれる過程や彼女に関係する人々を描くとともに、文学作品の内容にも踏み込んだ脚本になっています。

でも恥ずかしながら、私は一葉の作品は全く読んでいない(殴)ので、そのあたりの話がよくわからずもったいなかったです。読んでおられる方はさらに面白かったでしょうね。

一方で二兎社とこまつ座に共通するのは、現代の偏狭なナショナリズムが幅を利かす社会風潮に対する強い危惧ですね。

前回観た「鴎外の怪談」でもそれがよく表れていましたが、今回も、日清・日露戦争に向かう当時の政治の流れを、現在の日本に蔓延している排外主義的な社会意識と重ねて、警鐘を鳴らしています。

ただし、現代の政治状況への危機意識はこの二人だけではなく、最近観た多くの舞台でも共通して感じ取れます。このあたりに現代の舞台人の良心が感じられて心強いかぎりです。

前置きはこのくらいにして感想になりますが、本当にいい舞台でした。
(写真は当日購入したプログラムから)

先に書いたように、永井愛の一葉とその作品に対する深い理解と共感が、脚本にも色濃く投影して話に厚みを加えています。

でも今回の私たちの収穫は何といっても黒木華


もう私などの予想を覆す完成度の高い役者さんで、感心しました。観るまでは、どうせ最近売りだし中の女優なので、その人気にあやかって登用したのだろうみたいな浅はかな先入観を持っていましたが、そんな邪推は完全に吹き飛ばされました。(笑)

幕が上がって、材木を階段状に敷き詰めたような舞台を、和傘を斜めに差した人物が交錯する演出がまず目を引きました。そのあと主演の黒木華が登場。すぐに、彼女の台詞にビックリ&感心しました。
結構細身なのに、よく通る声が舞台に響きます。演技も自然で、いいたたずまいです。
これがかなり衝撃だったので(殴)、幕間に公演リーフレットを読んだら、若いのに大変な経歴の持ち主で愕然としました。何に愕然としたかというと、私の無知さ加減。(笑)

そして、テレビで見るよりはるかに美人!(殴)なのにもビックリ。表情豊かで情感を込めた一葉で、いろんな所作も完ぺき、終始見惚れていました。NHKの連続テレビ小説にも出演していて脇役ながら存在感は大きくて印象に残っていましたが、ここまでとは思ってもいませんでした。大竹しのぶの再来みたいな感じです。

しかし、樋口一葉は本当に短命でしたね。
わずか24歳と6か月!でこの世を去っています。でもその作家生活は壮絶&濃密で、20歳未満で処女作「闇桜」を発表してから肺結核で亡くなるまでの間に22もの作品を書いています。
特に1894年12月の「大つごもり」発表から「裏紫」にかけての期間は「奇跡の14ヶ月」と言われていますが、まさに「生き急ぐ」という言葉がぴったりですね。それと、黒木華の若々しい容姿が一葉にぴったりでした。

一葉の母・樋口たきは木野 花。この人の舞台はこまつ座の「イーハトーボの劇列車」以来ですが、今回はこまつ座の『頭痛肩こり樋口一葉』の三田和代と似た役作りで、いい味を出していました。


もともとしがない百姓身分なのに、夫とともに故郷を出奔後、俄か士族の端くれに列して下級官吏の身分を手に入れてから、なにかというと「ウチは士族なのに」と虚勢を張るたき。そんな母親をよく演じていました。

そういえば『頭痛肩こり‥』でも感じたのですが、今回の『書く女』でも女優陣の頑張りが目立っていましたね。

平岳大の半井桃水も、いかにも桃水はこんな人物だっただろうと思わせる説得力のあるいい演技でしたが、女性陣の迫力には負けている感じでした。でももう親の七光りなど完全に脱して、実力のあるいい役者さんになっていました。


半井桃水については、私の生半可な知識で、若い一葉を誑かした嫌なヤツだぐらいに思っていましたが(笑)、彼が朝日新聞の特派員第一号として釜山にわたり、その経験を活かして朝鮮半島を舞台とした小説を書いていたとか、朝鮮半島の人々に同情を寄せていたとか、その体験から朝鮮半島の併合にも反対していたなど、私の知らない一面が紹介されていたのが新鮮でした。勉強になります。

桃水の妹・幸子役の早瀬英里奈はとにかく絵に描いたようなかわいらしさで目立っていました。彼女が出てくると舞台がパッと明るくなる得な存在でした。美人は得です。(殴)


一葉の妹・くに役は朝倉あき

この妹も『頭痛肩こり‥』の邦子同様、しっかりものです。苦しい生活の下でも姉の小説家としての力量を信じていて、そのために自分を犠牲にしても家のために尽くすという健気な女性です。朝倉あきは、深谷美歩の邦子同様、一家の雑事を一手に引き受けて健気に働く妹をうまく演じていて、光っていました。

伊藤夏子役の清水葉月は一葉の終生の友として、折に触れて一葉を支える優しい女性です。初めて見る女優さんですがこの人も、一葉を陰に陽に見守り続ける姿が印象的でした。


一葉のライバル・田辺龍子役の長尾純子も初めてお目にかかる俳優さんでしたが、最初は一葉のライバルとして張り合っていたものの、次第に力量の違いを見せつけられ、それでもメゲずにたくましくしたたかに生きる女性をユーモラスに演じていました。意地悪な役かと思っていましたが、そうではなくよかったです。敵役になったら面倒そうな人物でしたから。(笑)


こうした女性陣の活躍ぶりに比べると、脚本上仕方がないですが、男優陣は少々影が薄かった。でも、出番は少ないものの(本当に終わりごろになって出てきます(笑))、古河耕史演じる斉藤緑雨はインパクトがありました。一葉と反目しあいながらも、互いに共通するものを嗅ぎ取っていたような二人の関係が面白かったです。男優陣では一番魅力的な人物でした。


その他の男優では、平田禿木役の橋本淳も以前観た『海の夫人』ですでにおなじみだったので、勝手に親近感をもって観ていました。(笑)
不純な動機で一葉に近づいてきた悪いやつかと思っていたら、そうではなかったので好印象。(殴)

兼崎健太郎の川上眉山もよかったです。でもやはりこの芝居、男子の影が薄いなあ。(笑)

最後になりましたが、音楽は作曲と生演奏担当が林正樹。
曲も演奏も素晴らしく、舞台を劇的に盛り上げていました。


そして、結末となりましたが、もう大感激でした。不覚にもついホロッとな。

よくできた脚本と、それにこたえる芸達者のいい役者ぞろいで、それを最前列センターで観られて、本当に至福のひとときでした。

拍手しながら、ヘタレな私は立つタイミングを見計らっていましたが(殴)、そうしているうちにカーテンコールが二回で終わってしまってガックリ。ヨメさんも同様だったとみえて、「もうこんどは一人でも立つ!」と後悔しきりでした。

もし再演される機会があったら、今度はもう少し一葉の作品の知識も持って、ぜひ観たいと思いました。おすすめです。


そういえば当日のロビーではこまつ座の「頭痛肩こり‥」の再演がアピールされていました。今回は永作博美が一葉とのことですが、あとは前回と同じメンバーなのでまた観てみようかとヨメさんと話していました。唯一前回は小泉今日子が残念だったのですが、今回はどうでしょうか。




コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

電動アシスト車椅子、老老介護の切り札です!

2016年02月08日 | 日記
思いがけず半身マヒとなったヨメさんの車椅子を押す生活になってもう12年。
今や車椅子は、公園散歩や観劇、買い物に手放せない移動手段です。
でも、私も歳には勝てず(笑)、坂道の多い公園などへの外出は、だんだん負担になってきました。

四季折々によく出かける万博公園や馬見丘陵公園は、広くてよく手入れがなされていて、花も多彩で気持ちのいいところですが、園内はけっこう長い坂道があって、押すのが大変です。距離は短いものの、花の文化園でも目玉のバラ園の途中に急な坂があるので、最近は行くのが少々気重に。

4年前の万博公園のコスモスの丘です↓

でも、そんなヘタレな私に、悩み解消のヒントが。

それは以前アップした、神戸の布引ハーブ園での経験です。

行かれた方はご存知のとおり、そこは六甲山系の山の急斜面にレイアウトされたハーブ園で、頂上までロープウェイに行き、そこからハーブを鑑賞しつつ急な坂道を下りて、ロープウェイの中間駅まで行くコースになっています。

かなりの急傾斜なので、普通の車椅子ではブレーキ操作が大変です。油断すると一気に走り出すので危険です。
 
それで、車椅子利用者のために、頂上の案内所に無料貸し出しの電動アシスト車椅子が用意されています。自分の車椅子は係員預かってくれて、先にロープウェイの中間駅まで降ろして保管してくれます。
よく考えられたシステムです。

当時利用した電動アシスト車椅子はナブテスコの製品で(というかほかに類似品はありません)、もう感動ものの便利さでした。
押す力をアシストするだけでなく、制動力もアシストしてくれるので、何も考えずにハーブを鑑賞しながら坂を下れました。もちろん登りも軽々で、押す力をほとんど必要とせず楽でした。

これは便利だと購入を考えましたが、値段は高く、重量も普通の自走式の電動車椅子よりは軽いもののちょっと重め。なので魅力的でしたが、利用はあきらめていました。

ところが去年、たまたまナブテスコのホームページを見ていたら、大幅に価格ダウンして重量も25%軽量化した新製品を発見。
これなら使えるとのでは♪と、資料を調べ、ヨメさんに車椅子を替えようと言いましたが、担当のケアマネさんは普通の電動車椅子の知識しかなく「お勧めできません」との返事。

でも、いつも利用している介護用品のレンタル会社のスタッフがこの製品をよく知っていて、ケアマネさんに資料を見せたり、実地にケアマネさんが試す機会を設けたりしてくれて、ようやくレンタルできることになりました。
ちなみにこのレンタル会社(パナソニック系列)のスタッフは、前職の介護関連企業で当該ナブテスコの製品開発に協力した経験があり、製品が改善されていった経過も話してくれました。

そして某日、電動アシスト車椅子が我が家に到着。

ハーブ園で使った製品と基本的に使い勝手は同じなのですぐ慣れました。試しにヨメさんを乗せて、家の周辺の坂道を押してみましたが、やはり感動ものの軽さ。押すと同時にアシストが効いて、平坦路では非常に弱いアシストが、坂道になるとスムーズにアシストされてほぼ押す力ゼロ!!
そして下りは、モーターの抵抗でブレーキが自動的にかかってゆっくり下っていきます。大したものです。


本当に押している感じは全くなくて、私一人で歩いている感じです。とくに秀逸なのがグリップ部の勾配センサー。よくできています。わすが数ミリ程度のストロークなのに滑らかにアシスト力が制御される技術が素晴らしい!


その後、大和民俗公園と馬見丘陵公園、万博公園に出かけてその威力を実感しています。
プリウスへの積載も、昔の鉄製車椅子程度の重量(バッテリーレスで16kg)なので問題なし。サイズも普通の車椅子と同じなのでプリウスの荷室にスッポリ入ります。




ただバッテリーがニッケル水素で、軽量大出力のリチウムイオンでないのが残念ですが、価格面でこれは無理なのでしょうね。


で、バッテリーですが、実際に使ってみたら、広い馬見丘陵公園を端から端まで回って、バッテリー残量を示すLEDの4段階の1つが消えたぐらいでよく持ちます。
↓馬見丘陵公園で早咲きの梅を見てきました




これなら最近負担になってきた、万博公園の日本庭園を見てから花の丘まで行き、そこからアジサイ園に回って、最後にまた日本庭園の駐車場に戻る恐怖の(殴)長距離コースも余裕で行けそうです。
バッテリーは、帰宅後すぐ充電し、その後充電器から外して保存。出かける当日に補充電するというパターンです。

この電動アシスト車椅子、購入すれば18万円程度ですが、バッテリーのメンテなどを考えて介護保険でのレンタルにしました。月1,500円程度で利用できるので納得です。

これから老老介護がさらに増えてくると思いますが、電動アシスト車椅子はその負担軽減に大きく貢献してくれます。おすすめです。
できればカーボンフレームとリチウムイオンバッテリーの採用でさらに軽量化してくれたらいうことなしです。ただし値段は出来るだけ抑えてほしいですが。

ところで、普段の買い物ではやはり普通の車椅子で十分なので、それまでレンタルで使ってきたアルミ製の車椅子を買い取ろうとケアマネさんを通じて試算してもらったら、6万円との返事。ありえないです。ということでネットで検索。
デザインがよくて、ブレーキもドラム式で、足のステップが跳ね上げ式でコンパクトに収納できる優れものが2万円以下で買えることを発見。
商品名は「自走用車椅子 Beans(ビーンズ)」です。





早速注文しました。2日後に配達されましたが、アルミパイプがポリッシュ仕上げでクッションもおしゃれ。ただ、駐車ブレーキのレバーの位置が介助者には遠すぎて不便なのが唯一の難点です。

ということで、車椅子は行く先に応じて使い分けています。どちらもおすすめです。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする