思いつくままに書いています

間口は広くても、極めて浅い趣味の世界です。
御用とお急ぎでない方は、ごゆっくりどうぞ。

兵庫芸術文化センター・「完全姉妹」の不完全な感想

2013年05月26日 | 観劇メモ

宝塚は6月後半の「ロミジュリ」まで予定がなく、やや禁断症状を覚えてきている昨今ですが、25日に兵庫芸術文化センター・阪急中ホールで真野響子×眞野あずさの「完全姉妹」を観てきました。

ヨメさんは名の知れた姉妹の二人芝居ということと、なにより3,000円という破格の価格設定に目がくらんだ(笑)らしく、いつものように私の意向など無視して(諦)、チケット購入手続きを済ませていました。

といっても、私もなにしろ(往年の)美人姉妹の舞台ということで、観たいが半分でも値段が値段なので期待も半分といった感じで劇場に向かいました。(笑)

正午に劇場に到着、1時開演なのでそれまでに昼食をと、劇場内にあるカフェ(レストランへの通路にあります)でサンドイッチとアメリカンコーヒー(ヨメ)&カフェラッテ(私)を注文し、外のウッドデッキで食べました。
気温は高くなっていましたが、乾いた気持ちのいい風が眼下の欅の木立を吹き抜けてきて、快適でした。


でもこれで2,000円オーバー!の値段はいくらなんでも法外だと思いませんか?


内心ボラレ気分を感じながらも(笑)、腹ごしらえもできたので開場少し前に劇場の入り口に向かいました。
オープン時間まで小さい展示コーナーを観て過ごしました。


座席は阪急中ホールのO列とかなり後ろですが、全体にかなり傾斜がついているので見やすい席でした。ただし通路が変則的なステップ幅の階段なのでヨメさんは席にたどり着くまでに苦労していました。観客の年齢層は高めでした。

脚本は中津留章仁。
配役は、大橋樹(姉) 大橋雅(妹)

舞台上のセットは、主演2人が着替えている間に、3人の引っ越し作業員風の男がセットを片付けることで転換します。

大まかな話は以下の通り。(公演関係PDFから引用)

夫に先立たれた姉と、結婚出来ない妹。姉妹仲はすこぶる良い。
姉の夫は経営者だった。結婚したとき、夫はすでに具合が悪かった。
姉は夫の親族から、夫の財産目当ての結婚だと思われ、疎まれていた。
妹は結婚をしなかった。一生一人の男を愛するなんて出来ない。
それが彼女の結婚出来ない原因だ。妹は姉の夫と不倫していた。
姉のものがどうしても欲しくなる性分だ。
二人の姉妹は、同時に一人の男性を愛した……。
姉妹であり、恋敵であり、親友でもある二人は、その前に、
わたしではないひとりの“女”であることに、
そろそろ気づきはじめた……。


少し遅れて幕が上がると、舞台上には一組の長椅子とテーブル+別に2脚の椅子とテーブルが置かれ、部屋のブルーの壁には絵の入っていない額縁だけが飾られています。
話は、妹が掃除しているところに姉が帰宅、妹の買ってきたワインを二人で飲みながら語りだすところから始まりました。

始まってすぐ気付いたのは、姉の台詞は普通に聞き取れるが、妹のほうはほとんど聞き取れないということです。

この違いは、帰宅後この資料を読んでよくわかりました。
お姉さんは大学の演劇科を卒業後、劇団民藝に入団しているのですね。それで舞台演技の基礎ができているのだと思います。

でも、妹さんは大学在学中よりCMモデルを務め、卒業後TBSのドラマ「風の鳴る国境」で女優としてデビュー。舞台の本格的なトレーニングは受けていないようです。
その差は明白で、今回の舞台でもドラマの演技のように早口かつ抑揚の小さい台詞なのでかなり聞き辛かったです。だんだん調子が出てきたのか、後半はそれほどでもなかったのですが。
この辺りは新歌舞伎座で観た「しゃばけ」の一太郎役・沢村一樹と共通する感じです。

そしてなにより脚本が眠いです。これがすべて。

聞き取れない台詞をなんとか理解しようとしても、なにしろ山も谷もないに等しい話です。
その話を、台詞回しは違っても、声の質の似た二人が演じると、二人芝居というより1人の中年女のとりとめもない繰り言みたいに聞こえてきて(殴)、睡魔が鎌首をもたげ始めます。

でも途中から、その単調な日常会話が一転します。
携帯メールから、2人が同じ男を取り合っていることがわかって、いよいよこれから修羅場が始まって、夥しい罵詈雑言の応酬という展開になるのかと期待したのですが(笑)、これが大したことがなく不発に終わりました。

ダンベルが金だったり、料理本の間からお金が出てきたりしますが、コメディにしてはテンションの低い笑いの台詞なので、盛り上がりません。それでも結構笑っている人がいたのが不思議でしたね。まあ笑うしかないということでしょうか。

結局この芝居、ところどころに社会批判めいた台詞があるものの、最後まで主題はよくわからないままでした。
最後は老人ホーム風の場面になって、姉が車椅子に乗り、妹がそれを押しながら、人生を振り返る場面で終わっていましたが、脚本家がいいたかったことは最後まで見えてきませんでした。
この場面での二人、お姉さんのほうが顔もふっくらして若く見えるので、役は逆でもいいかもと思いました。

主演二人が棒なわけではなく、特にお姉さんは声もよく通り、表情もメリハリがあっていい感じでしたが、上演時間が短く(観劇割引後の駐車料金は450円でした!)、波乱万丈には程遠い単調な脚本なので、良くまあやっているなあと逆に同情したくなるほどでした。
というわけで、観劇を終えたあとの満足度(当社比)は近年に無く低くなりました。ただ、チケットの価格を考えたら相応のものだったかもしれません。

来月の星「ロミジュリ」や、7月の宙・全ツー「うたかた‥」の観劇がますます待ち遠しくなってきました。



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ネットブックの無線LANカードも交換しましたが‥

2013年05月22日 | パソコンあれこれ

少し前に、MS-1057の無線LANカードを交換して倍速以上になったのに気をよくして、食卓でネット検索に使っているAcerのアスパイア ワン(ネットブックです:以下アスワンと略)もスピードアップしたくなりました。ビョーキなのはわかっています。自覚症状ありです。(笑)

早速日本橋のココのホームページで調べたら、1種類だけ販売していました。インテルのCentrino Advanced-N 6235(以下6235です)というもの。無線LAN 300Mbps(IEEE802.11n)・54Mbps(IEEE802.11a)・54Mbps(IEEE802.11g)・11Mbps(IEEE802.11b)対応で、新製品とのことです。
ちょうど先週の土曜日に大阪市内に出かけた際ゲット。2,980円となかなか微妙な値段でした。
アスワンのOSはXpなので、インテルのホームページから6235用ドライバをダウンロードして、USBメモリなどにコピーしておきます。

そして、とある夜更けにアスワンを解体。
といっても、全部バラす必要はありません。
まずキーボードを撤去。


次にパソコン本体底のネジを外してから、キーボード下のカバーを固定しているネジを外したらパームレストとフレームが外れ、無線LANカードが見えます。これを固定しているのはネジ1本だけ。
アンテナコード2本を外してからそのネジを外し、斜めに持ち上げたらソケットから取り出せます。


新しい無線LANカードは前回同様ハーフサイズなので、これもジャンクパーツの中から適当な金属片を見つけ、切断して固定しました。あとはアンテナコードを接続してカバー類を元通りに装着して完了。15分程度の作業でした。


プチ期待しながら電源オン。

ところがここで問題発生
異常に起動が遅いのです。アスワンには余計なアプリケーションや常駐ソフトをインストールしていないのでいつも立ち上がりはかなり早いのですが、今回は劇遅。
フリーズしている?と思うほど遅いのです。立ち上がってしまえば一応動いていますが、アプリの動作も遅く使い物になりません。顔面蒼白(笑)で、また分解して元の無線LANカードを付けて立ち上げたら、サクサク作動。6235の詳細なスペックがわからないので原因は不明ですが、何らかの相性問題が発生しているのは明らか。使用を断念しました。

これが最初の意気消沈。

これで終わったらただのいつもの無駄遣い記録ですが(笑)、ファジー(死語です)な性格なので、このダメN6235無線LANカードをMS-1057に移植し、MS-1057につけている無線LANカード・インテル5300をアスワンにつけたら丸く収まるのではと思いついたのです。
ええ、何の根拠もなくただ思いついただけです。(笑) まあ5300のほうが古い製品なので合うかなといった感じです。

で、早速チャレンジ。MS-1057から5300を取り出して、代わりにアスワンで使えない6235を移植することにしました

この段階で以前の作業でアンテナ配線が間違っていたことを発見。
5300には3点のアンテナ接点があります。その真ん中のグレーの△表示にMS-1057のグレー線を接続していましたが、これは間違い!正しくは、グレー線(MAIN)をMAIN接点に接続し、真ん中は使用しません。黒はそのまま。

↓Intelの5300です


謹んでお詫びして訂正します。^_^;
間違っていたアンテナ線 でも感度は変わらず!


元に戻して電源オン!
MS-1057はいつものように起動しました。Windows7の起動は早くて気持ちいいですな。
ところが、デバイスを認識させるため、先の6235用ドライバーをインストール!という段階でまたまた問題発生!
なんとタッチパッドが反応しない!。付属した左右のボタンも無反応。さらにその下の各表示用LEDもすべて不点灯。
これまでいろいろ改造のたびに何度も分解してきたため、どうもパームレストとマザーボードをつなぐリボンケーブルが破損したようです。

一難去ってまた一難。トホホです。

とりあえず無線LANの可否を確かめようと、マウスとキーボードでネットワークのパスワードを入力したら、あっけなく繋がりました。無線LANカードはOKでした。
速度も130Mbpsとか表示されて交換前と変わりません。ただし電波の飛距離は伸びて、ルーターから一番離れている寝室でも感度表示は4本立っています。交換前は3本がせいぜいでした。

今度は、5300をアスワンに装着します。金属板でカードを固定して本体を元通りにして、こちらにも5300用ドライバーをインストール。起動は以前のように早いです。ネットワークキーを入れたらインターネットにもつながりました。速度も144Mbpsと倍以上の速さでサクサクです。

元は54Mbpsだったのが↓


こんな感じになっています↓


まあこれで無線LANカードは無事活用できることになりましたが、問題はMS-1057のタッチパッドの故障

もう一度分解してみました。
やはりリボンケーブルのマザーボードとの接続部が問題のようです。
リボンケーブルを触るとLEDが点滅します


でも何度も抜き差ししていたら、とうとう全く点灯しなくなりました。もちろんこの作業は電源オフで、充電状態で緑の充電表示のLEDが点灯するか確認していたのですが。

外したケーブルの先端部をよく見ると、何か所か金属箔がめくれていて、1カ所は完全に切れたところがあります。がっくりです。まあ、マウスで作業ができますが、ベッドとかマッサージ椅子に座ってのインターネットなどでは不便です。
昔職場で支給されたノートなどには、タッチパッドなどなくてマウス専用というのもありましたが、もともと無いならそれで済んでも、今まで使えていたものが使えなくなるのはつらいものです。
でも、MSIのホームページを見ても入手は無理。希少機種なのでジャンクも期待薄。

それで最後の手段として、リボンケーブルの先端を切り落として、被覆を取り去って接続することにしました。

↓切り落としたリボンケーブルの先端部 いじったのでボロボロになっています


しかしこの被覆が固いのです。まあ簡単にはがれるようではだめですが、それにしても固い。
なんとかカッターで削ろうとしましたが、焦ると金属箔まで切れてしまいます。誰か被覆の取り方などご存じないかと検索しても、一体成型しているので無理とかの非情な答えだけでした。
ただお一人、パソコンではなく電気製品ですが、頑張ってカッターで被覆を取り除いて接続に成功したとの報告が。

私もダメモトで再チャレンジすることにしました。この時点で何度も失敗してケーブルはかなり短くなってきていましたが(泣)、慎重にやれば出来る!と自分に言い聞かせて最後の挑戦。
本当に、これで失敗したら接続できないくらい短くなっていましたね。

焦らず無理せず作業を続けていたら、なんとか5㎜程度きれいに露出させることが出来ました。ヤレヤレです。

そのまま差し込もうとしましたが、元の接続部には、裏にブルーのフィルムが貼られていて、抜き差し時のつまみになっていました。マザーのコネクタの隙間はそれに合わせているので、リボンケーブルだけ差し込んでもロックできません。

それで、スペーサーというかシムというか、ケーブル先端部の裏にプラスチックテープを2枚貼って厚みを調整しました。
祈りながらコネクタにケーブルを差し込んでロックしました。
ケーブルはギリギリまで短くなっています。


もとはこのくらい長かったのです。


そして電源オン!

成功しました。タッチパッドも各LEDも復活しました。
ああ、やれやれでした。普段何気なく使ってきたタッチパッド。同じく点いて当然だったLED。
作動しなくなって、ダメかと一時はあきらめて、それでも苦労してまた復活した今は、無性にありがたい機能のようにみえてきますね。

まあ身から出た錆とはいえ、この2日間はヤキモキしました。これにこりて、無駄にパソコンの改造などしなくなる、ワケはありませんね。それがビョーキというものです。

でも、良い子は決してマネをしてはいけません。

それにしても、リボン(フレキシブル)ケーブルの接続にケーブル先端差し込み式のコネクタを使うのは感心しませんね

ちゃんとしたピン式のコネクタを使うべきです。

以前書いたDynabook SS1610のダーティビットの原因も、SSDの早すぎる劣化も、SS1600シリーズに使用されている差し込み式のハードディスク・ケーブルコネクタ(本当に華奢なケーブルです)の接触不良だと思っています。
ハードディスクのように、比較的電流が大きくてしかも常時アクセスを繰り返しているものに、差し込み式のコネクターなどを使用するのは間違いだと思います。
私はダーティビットの処理後、今回と同様ケーブル先端部にテープを貼って接触圧力を高くしたので、その後は全くトラブルフリーですが、そうでなければまた再発したと思います。

補足:無線LANカードのアンテナ接点には≪1 MAIN≫と≪2 AUX≫と表示されています。1には白またはグレー、2には黒のアンテナ線を接続します。ただ、私の場合は逆でもあまり違いがなかったのですが。(笑)

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特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」(大阪展)を観て

2013年05月21日 | 美術館を訪ねて

前夜の天気予報では雨とあって、今日(5月19日・日曜日)はどこにも出かけない予定でしたが、眼を覚ましたらけっこういい天気!
でもいくら今晴れていても、昼には雨が降りますとあくまで無情な天気予報ですが、とにかく出かけることにしました。

ヨメさんの「行きたいところリスト」には京都府立植物園も上がっていましたが、これは時間がかかるので今回はボツ。
とにかく近いのが一番と、会場の混雑が不安なものの、評判の高い大阪市立美術館での特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」に行くことに決定。
見どころは↓とのこと
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」のホームページから


9時前に家を出ました。
大堀から阪神高速松原線に入り、文の里出口で降りて、ナビの指示通り走ったらすんなりと天王寺公園地下駐車場入り口に到着。障害者スペースに停めて、すぐ近くのエレベーターで天王寺公園の入り口前に上がりました。

9時半の開園時間を少し過ぎただけでも、もう入り口は客の列が並んでいました。入り口からすぐ広場になっていて、バラの花がきれいでした。こんな色のバラ、初めて見ました。


美術館に行くまでの通路も緑が美しく、慶沢園などもあって、いい雰囲気です。公園だけでもまた来たいねなどといいながら美術館に向かいました。

正面玄関の階段が心配でしたが、ちゃんと左のほうにはスロープが付けられていました。


やはり館内はたくさんの人でした。でも館外に行列が出来るほどではありません。混雑とは言っても、先のエルグレコ展マウリッツハイス美術館展などと比べたらかわいいものです。記念撮影コーナーです。


入り口脇で1台500円の音声ガイドを借りて会場へ。スペシャルナビゲーターは中谷美紀とのことですが、なんとなく武田和歌子のほうがピタットかもと思ったり。(笑)

中はやはり人・人・人の波。
展示に見入っているみなさんにぶつからないよう車椅子を押すのはかなり気を使いました。
最初の仏教芸術を展示したコーナーでは、まず快慶の「弥勒菩薩立像」がよかったですね。リアルな表現の衣装や仏体に金箔がよく残っていて保存状態は極めて良好です。
この仏像は快慶の残存している最若年時の作品で、しかも東京展と大阪展だけの展示だそうです。見られて良かったです。
特別展会場で買い求めた絵葉書から


仏像とともに仏教絵画も数多く展示されていました。「法華堂根本曼荼羅図」など幻の国宝と言われたものも展示されていました。
しかし蒐集時にすでに褪色が激しかったのでしょうか、かなり絵柄が不鮮明になってしまっているものも多かったです。
これらの絵を観ていくうちに、観客の密度が次第に低くなってきて、かなり見やすくなってきました。
私たちと同年配かそれ以上の方も多く、そろそろ疲れが出てきたのでしょうね。(笑)

でも、次の、今回の展覧会の目玉の一つ、二大絵巻のコーナーで、また混雑が始まりました。「吉備大臣入唐絵巻」と「平治物語絵巻」です。
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」のホームページから



今回展示されているのは絵巻物の一部ですが、それでも展示のガラスケースは長く、観客がゆっくりでも流れているうちはいいのですが、そのうちの一人でも足を止めてしまうとたちまち混雑してしまいます。
でも混んでいたのはここまで。

後半の狩野派の絵や、等伯若冲狩野永納光琳蕭白の作品も素晴らしいものばかりですが、けっこう観やすくなって助かりました。展示品の配置に感謝です。

特別展会場で買い求めた絵葉書から 尾形光琳 ≪松島図屏風

呉服屋の生まれとあって、デザインセンスは大したものです。

特別展会場で買い求めた絵葉書から 曽我蕭白 ≪風仙図屏風

トルネードから猛烈な風が吹いて、右の弟子たちは転げまわっています。面白いです。

特別展会場で買い求めた絵葉書から 上が蕭白で下は等伯の龍です


本当に名品ぞろいですが、特に印象に残ったのは蕭白。大胆な筆さばきでグイグイ描く絵もあれば、精緻な鷹の絵があったりと、幅が広いです。

しかし、国内にあればすべて国宝か重文クラスの名品が並ぶ展覧会場を回りながら、それらが国内になく海を渡った事実を目の当たりにして、内心複雑でした。
まずは、なんで「こんなお宝が海外に‥」というくやしさ。でも考えてみれば、これらは武力で略奪されたのではなく、廃仏毀釈のもとで、フェノロサや岡倉天心の求めに応じて進んで金品と交換してしまった当時の風潮ゆえのこと、しかし、海外に流出したおかげでこんないい状態で残っているのではないかとか、いろいろ考えてしまいました。

ともあれ、今回の展覧会は質・量の双方で満足しました。

私たちは駐車場の関係で、開場時間に合わせて出かけましたが、電車で行くなら少しオープン開始時間からずらしたほうが混雑が緩和されて見やすいのではないかと思いました。
それと、どこの展覧会でもそうですが、今回も入り口付近は混み合っていましたが、めげずに観て回ったら後半の近世絵画のあたりはすいてきたので観やすかったです。

この大阪展が最終です。未見の方はぜひご覧になってください。日本美の再発見があると思います。

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万葉文化館 日本画展「万葉華模様」と併設展を観て

2013年05月15日 | 美術館を訪ねて

今年は天候不順でもう初夏というのに安定せず寒い日が続いていましたが、この日は初夏を思わせるさわやかな晴天。
気分よく出かけました。途中連休ゆえの混雑で渋滞が懸念されましたが、いつもと同じように1時間もかからず到着。駐車場の車も、幸か不幸かいつものように少な目でした。

今回の展示は館所蔵の日本画コレクションの中から、万葉歌に詠まれた花をテーマに選んだ「万葉華模様」と銘打っての絵画展と、写真家の荒木経惟操上和美の作品による併設展「うつせみの鏡 時空の舟 ―我・夢・影―」の二つの企画です。

期間は2013年4月3日(水)~6月9日(日)です。

でもこの絵画展、結論からいうと、館のコレクションの万葉日本画から25点の展示だけで、それに同じく館所蔵の大亦観風の『万葉集画撰』から小品が12点だけでいささかさびしいものがあります。
また、一口に万葉日本画のコレクションといっても玉石混交な感があり、加えて今回展示された大半の絵はこれまでも何度も見ているので新鮮味は感じられません。中には初めて目にしたものもありましたが、残念ながら余り感銘を受けなかったですね。

そんな中で、いいなと思ったのはこの作品↓でした。


絵は《春野》と題して、万葉集の巻頭歌で有名な雄略天皇の「こもよみこもち ふくしもよ」をテーマに描かれています。画家の名前は室井東志生です。上品で端正な絵で今回の展示では一番印象に残りました。
前にここで観たこの絵↓に一脈通じるものを感じます。


他の作品では、館のホームページで紹介されている↓の大野俊明の《清隅》とか


気品のある画風↓の箱崎睦昌の《藤波の花》が良かったです。


展示を見ていて気になったのは、額の横に掲示された花とか和歌の意味、作者の弁などを書いた解説の存在です。
うちのヨメさんもそうですが、かなりの人が、絵を観る前にその解説を読むのに時間を割いていて、肝心の絵のほうはチラ見程度で次の絵のほうに移動していました。他の絵画展でも同じような傾向が見られます。
絵というのはまず無心の状態で、絵に向かい合うことが大事だろうと思いますが、解説を読むほうに時間をかけるのでは本末転倒だと思いますね。絵の横の表示は、先入観なしに鑑賞するように、作品名と制作年程度で十分だと思います。

ところで、この記事を書くために少し調べていたらこんなサイトに行き当たりました。

運営されているのは明日香在住の方だそうですが、なんと万葉文化館創設時の奈良県知事!だそうです。
ホームページの下のほうの緊急報告・万葉文化館の改変問題というところを読んでいくと、これまで私が断片的に書いてきた万葉文化館を巡る出来事の背景にあるものが見えてきました。PDFファイルですが、中の青文字がリンクになっているのでページ間の移動ができて読みやすいです。

展覧会の開催回数削減だけのみならず、万葉文化館の施設自体の転用計画まで持ち上がっていたとはびっくりです。
施設転用計画は上記のホームページなど、関係者の努力で止めることができたそうですが、館に併設されていた万葉文化館研究所は廃止が決定。今は単なる係として事務職の係長と研究職員2名の体制になってしまったとのことです。

こういう話は今大阪をはじめ全国で起こっていますが、財政危機を理由に、真っ先に切り捨ての対象になるのが文化政策というのは本当に情けないですね。

さて展示の話に戻りますが、先に言った通り今回の展覧会はとにかく展示点数が少なすぎなのが残念でした。展示会場の終りのほうで大亦観風の『万葉集画撰』が展示されていますが、小品な上に書も画もあまりいいように見えず、いつも目にするたびに「これ、ヘタウマ?」などとヨメさんと罰当たりな感想を言い合っています。

続いて写真展ですが、観始めてすぐ、大阪国立国際美術館の近代美術の展示を連想してしまいました。


今となってはあざとい衒いだけが眼について、馴染めない作品ばかりで、テーマも繰り返しが多いです。
館のホームページにはインスタントフィルムの作品と書いていますが、これはポラロイドのことでしょうか?だとすれば発色やピントの甘さから納得ですが、その効果は余り感じ取れなかったですね。
とてもじゃないけど、テーマの「うつせみの鏡 時空の舟 ―我・夢・影―」の意味はくみ取れず、俗人な私たちを含め、居合わせた観客はみんな足早にこの写真コーナーを立ち去っていました。

で、観終わって、館内から周りの庭園を見ながら本館に戻ってカフェを覗いてみたら、なんとまた別の店に代わっていたのでびっくり。これで私たちが通うようになってから3度目ですね。

前は「ICHIE(イチエ)」という店でしたが、新しい店名は「SIZIN」(詩人?と読むのでしようか)といって「室生天然酵母パン」がウリのパン屋さんのようです。時間をかけて抽出する水だしコーヒーも目玉なようです。


メニューは、前の店にあった「ごはんメニュー」がなくなって、すべてパンのセットになっていました。ちょうど私たちが座っていた横のテーブルに来た老夫婦とその娘さんらしい三人連れは、いったん座ったものの、ごはんメニューがないと聞いてすぐ出ていきました。館の利用者の年齢層ではパンメニューだけでは苦しいでしょうね。

私たちは1,000円前後のこれ↓をオーダーしました。


サンドイッチの具は生ハムを使っていたりで良心的だったのですが、パンが分厚く生地もしっかり固め、しかも大きいので、両手でしっかり持って大口を開けてかぶりつかないとせっかくの具がはみ出てしまいます。なので、片手しか使えないヨメさんにはとうてい無理。皿に載せてパンをめくって食べようとしましたが、パンが大きく、それをちぎって食べようとしても、固めなのでヨメさんには出来ず、私がかわりに小さくちぎりました。

私だけでなく他のお客さんも、すぐ具がはみ出て落ちそうになるので食べにくそうな感じでした。
普通のサンドイッチのようにパンを一口サイズに切ってくれていたら良かったのですが。帰りの車の中でヨメさんは、「美術館では西宮の大谷記念美術館のカフェが一番!」といっていました。(笑)

食べ終わって、ミュージアムショップで絵葉書や本を買ってから、押し花の絵葉書と栞作りに挑戦しました。材料は付属の庭園の樹木の花々を使って館の職員さんが手作りしているとかで、発色が鮮やかでした。
私も作りました。↓絵葉書(センスなくて下手ですね)、と、


栞です。↓


終わってから、玄関前の庭園を散策しました。
この庭園での初夏の見ものは大きなヤマボウシですが、今年はまだつぼみのまま。↓


満開になれば見上げるような樹高で見事ですが、今年は遅れているようです。その代り、サトザクラがまだ咲いていました。
栞に使った花です。↓


今回は残念ながら絵画展としては物足りなかったですが、晩春・初夏の明日香の景色と、庭園の名残の桜、押し花工作が楽しめました。
帰宅して今年のスケジュールをチェックしたら、少なくなったとはいえ外部の画家の展覧会も開催予定になっているので安心しました。期待しましょう。

障害者でもゆったり楽しめる施設として、これからもささやかですが万葉文化館を応援していきたいと思います。みなさんも明日香に来られたら、ぜひ足をお運びください。展示棟の地下には工夫を凝らした展示もあり、万葉文化の世界が存分に堪能できると思います。

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アトリエ・ダンカン公演「しゃばけ」@新歌舞伎座を観て

2013年05月11日 | 観劇メモ

いつものとおりまずは道中記から。

朝、近くのクリニックでヨメさんの月一度の検診を終えてから、ナビの目的地を「上本町駐車場」にして出発。初めての新歌舞伎座でしたが、順調に到着。
事前に聞いていた通り2Fに駐車(新歌舞伎座への通路の関係です)して、車椅子を押して新歌舞伎座のある上本町YUFURAに行きました。
劇場に入る前に腹ごしらえと、5Fのうおまんで昼食。
私は鰻玉丼定食、


ヨメさんは鰆の西京焼定食。コーヒーもついていて満足でした。


食べ終わって6Fに上がり、劇場へ。13時開演でしたが、30分前には入場出来ました。
劇場は新しいだけに完璧にバリアフリーで場内の移動も容易、当然ですがトイレもきれいでした。チケットは二階席でしたが、事前に一階の車椅子スペースに振り替えてもらっていました。宝塚大劇場でいえば20列ぐらい?で舞台からやや遠いですが、オペラで充分楽しめる距離です。

この劇場、他の劇場と比べて客席の傾斜が緩く、舞台の高さも低いのでかなりフラットな印象ですね。
今回、客の入りは一階で見る限り、前半部はほぼ満席でしたが、15列あたりから後ろはけっこう空席があり、私たちの座った車椅子スペース直前の19列はごっそり空いていました。おかげですっきり視界が開けて観劇は快適でしたが、興業的には心配になりますね。それと見落としただけなのか、普通ロビーでよく見かけるファンの花などが無かったのも寂しい感じでした。

さて、本題ですが、いや、本当に面白かったですね。鄭義信演出作品は初めてでしたが、楽しい観劇となりました。
幕が上がって、出演者が次々に舞台上に登場して踊りだしただけで面白そうな予感がしてきました。今回は客席から登場する場面が多くてサービス満点でしたね。

原作は畠中恵の「しゃばけ」(娑婆っ気からだそうです)で、大人気時代小説とのことですが、今回観劇するまでは全く知りませんでした。かなり情報難民化していますね。(笑)

アトリエ・ダンカンのホームページから


主役はご存じ沢村一樹
彼の演じる「一太郎」は廻船問屋兼薬種問屋、長崎屋の一人息子です。心優しく聡明ですが、腺病質で常に病気がち。
このため今回出演に当たり、沢村一樹も減量して役になりきろうとしたそうです。が、どういうわけか台詞が不明瞭で、私たちの席では二人ともほとんど聞き取れないのが残念でしたね。他の役者は小声でも聞き取れたのに、彼の場合は台詞の輪郭が鮮明ではなく、特に早口になったらほとんど聞き取れませんでした。

この劇場はスピーカーの位置の関係なのか全般的に音量が小さく感じましたが、それでも例えば麻実れいなど、ほとんどつぶやくようなセリフでも聞き取れたので、沢村一樹との違いが際立ちました。

また表情もあまり豊かに見えず、喜怒哀楽の感情表現に乏しい感じがしました。今回の舞台は全員芸達者な役者さんばかりだったので特にそう感じました。今これを書いているとき、たまたまBS-TBSの「浅見光彦シリーズ」が放送中でしたが、ドラマではちゃんと演じていますから、舞台にはまた別の才能が必要ということですね。「お春」が、切々と自分を慕う心情を告白しているのに、何のリアクションも示さずただ聞いているだけというのも変な感じでした。

その「お春」を演じている臼田あさ美が準主役扱いになっています。彼女は今回が初舞台だそうですが、そうは見えず頑張っていました。よかったです。とても初舞台には見えなかったですね。
台詞もしっかりしていて、ひたむきに一太郎を思う一途な表情が印象的でした。でも、最後の婚礼の場面で一太郎と結ばれてめでたしめでたしとなるのかと期待していたらそうならなかったのでガッカリ。今回の脚本で一番の私的ガッカリポイントでした。

ちなみに二番目のガッカリポイントは、紹介記事などを見て、これはてっきり「ベッド・ディテクティヴ」ものの時代劇かと思ったらそうではなかったこと。
最初の殺人場面に遭遇したあと、仁吉たちから「下手人に顔を見られているから絶対家から出ないように」といわれ、ははぁ、これでベッド・ディテクティヴの始まりかと期待したのですが、そのあとも一太郎は注意を無視してウロウロ出歩くし、話の中ではほとんど推理を巡らす場面もないわでガッカリしました。羊頭狗肉です。

アトリエ・ダンカンのホームページから


さて、次は期待の麻実れい。(笑)
今回の芝居随一のおいしい役回りが「おたえ」です。彼女を前回観たのが例の「ボクの四谷怪談」ですが、今回の役どころはその延長線上にありますね。今回もコミカル路線です。
ただし、「ボクの四谷怪談」ではほとんど風船ガムを膨らませて舞台を行き来する程度(笑)だったのが、今回は魅力満開の「麻実れいオンステージ」になっていました。
ダンスもコミカルな振り付けで弾けまくり、歌も往年の宝塚の舞台を彷彿とさせる聞きごたえ・見ごたえのあるものでした。今回の舞台で一番楽しんでいたのは麻実れいでしょうね。
二役目で一太郎の祖母役になったときは、衣装の打掛をマントのように鮮やかに翻してスッポンで退場するなど、見せ場満載でした。

最近はさすがに麻実れいも主役があまり回ってこなくなっていたので、ヨメさんも私もあまり今回の芝居では出番の期待をしていませんでしたが、意外に豪華な場面の連続にびっくり。
特に第一幕2場で熱唱する「神様お願い」は必見です。
ヨメさんは観劇中よっぽど「ターコさんっ!!」と声を掛けようかと思ったとのこと。ホントにターコさんの面目躍如でした。まあ私たちにとってはこれが一番の収穫。彼女、ストレートプレイから今回のようなコメディエンヌまで、本当に芸の幅が広いです。

次に印象的だったのは山内圭哉マギーの「佐助と仁吉」コンビです。本当に吉本のトップ漫才コンビといっていいほどぴったり息の合った掛け合いが爆笑を誘っていました。ボケと突っ込みの見本といっていいほどうまかったですね。このまま漫才コンビで食っていけます。
とにかく今回の芝居のお笑い場面は、随所にヨシモト満載で、まんま吉本興業プロデュースといった感じで笑わせていました。

あとの役者さんもいずれ劣らぬ芸達者の面々でした。
一太郎の異母弟・「松之助」役の高橋光臣も、日陰の身ながら誠実に生きる好青年と、妖怪に憑りつかれて一太郎を襲う狂気の役を好演していました。セリフも聞きやすく「梅ちゃん先生」からさらに好感度アップです。
最後の場面で久保酎吉演じる父親・「藤兵衛」と和解する場面は思わずホロリとさせられました。最後を締めくくる味のあるいい演技でした。

一太郎と幼馴染の菓子職人・「栄吉」役の宇梶剛士もいい味のある役者ですね。三つ違いの妹、お春の臼田あさ美と、母親役の阿知波悟美の掛け合いもピッタリ息があっていて見ごたえがありました。知らない役者さんばかりでしたが、世間には私などが知らないだけで、まだまだいい役者さんが沢山いるものだと思いました。

後の妖(アヤカシ)たちの面々も「鈴彦姫」の星野園美を筆頭に、池田有希子西村直人金井良信孔大維水谷悟といずれ劣らぬ恐るべき怪演ぶりでインパクトがありました。劇中で驚異的なテクニックで三味線を演奏する杵屋七三も印象に残りました。超絶技巧です。もっと聞かせてほしかったですね。

芝居全体としてはコミカルな演出で楽しめましたが、脚本・演出の鄭義信、しつこい演出で有名だそうですが、本当に繰り返しが多いです。
パンフレットで高橋光臣が「(鄭義信は)他の演出家がこだわらない『くだらないギャグ』に対する演出は本当にしつこい。」と言っている通り、ギャグの演出はくどいくらいしつこく繰り返されます。その演出がただでさえかなりヨシモトが入っているのに、それをこれでもかこれでもかと何度も繰り返すので、関西人の私たちでもちょっと食傷気味になりますね。
見ていて、これが鄭義信テイストなのかと思いました。

同じコミカルな演出でも井上ひさしは関東風味であっさりしていますが、鄭義信はこってりとした関西風のお笑いの味付けですね。

ともあれ、今回の観劇は、劇場からして初めてで、役者も麻実れい以外はみんな初見で新鮮でした。そしてお目当ての麻実れいがまさかの活躍で望外の大収穫。(でも半額チケットでなかったら観ていないかも)
新歌舞伎座は、車椅子でも駐車場から劇場までの移動がスムースで、劇場内のバリアフリー度も高いので、今後もいい舞台があればぜひまた観たいところです。

これでまた行動範囲が広がったので、いい経験になりました。

そうそう、主人公の「一太郎」の名を聞くたびにジャストシステムを思い出していました。できればお春も「花子」にして欲しかったですね。(笑)

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許せない電気料金値上げ!「燃料費高騰」は放漫経営の結果

2013年05月08日 | 日記

4月1日から、関電管内では電気料金が約10%も値上げがされることになりました。
理由は「原発停止に伴う火力発電のための燃料費高騰」だそうです。

実際、マスコミ(原発やTPPの報道に限って言えばマスごみといった方がいいかも)も口をそろえて、関電や政府の値上げ理由の説明を何の検証もなしにそのままタレ流しています。
それを聞いて、「そうか、やはり原発を動かさないとだめかな。燃料費が高いから仕方がないのかな」と、不満に思いながらもあきらめている方もいられるかもしれません。

しかし、なんでそうなるのかと思いますね。

もともと、震災前から、韓国や台湾、米国と比べて2~3倍の高い電気料金の設定で暴利をむさぼっておきながら、なんで火力発電だと大赤字になるのか理解できないからです。
そのわけは、自社の発電設備で作った電気を関電に卸売りしている電気事業者の存在です。これらの電気はすべて火力発電で行っています。主な事業者としては電源開発神鋼・神戸発電所(総出力140万kW)、大阪ガスの泉北天然ガス発電所(110万9千kW)などがあります。

関電が火力発電のために大赤字になっていると騒ぐなら、これらの発電事業者も大赤字なのでしょうか。すべて火力発電で石炭やLNGを燃やしているのですから、これらの企業も、発電すればするほど赤字がかさんで経営危機になるはずですね。

でも事実は全く異なります。

例えば神戸製鋼所大阪ガスは火力発電を今後の成長分野と位置付けて、最新鋭の発電所を次々に建設しています。2009年から発電を開始した大阪ガスの泉北天然ガス発電所は最新鋭設備で大きな利益を上げています。大阪ガスグループではガス事業と並ぶ稼ぎ頭としてこの事業に力を入れています。
神鋼の神戸発電所も同様に利益を上げていて、今後の有力成長分野として発電事業についてはさらに設備増強する計画です。

要するに、日本のようなもともと電気料金の高いところでは、普通に発電したら必ずもうかる仕組みになっているのです。

石炭火力というと時代遅れの低効率で煤煙だらけというイメージですが、現在では高効率の超々臨界圧火力発電も実用化され、合わせて排煙の浄化技術も進んでいて環境負荷も小さいため都市部に続々と建設されています。
実は関電を除く電力会社も、近年の火力発電の効率向上を見て最新鋭の火力発電設備を増強していますね。

原発は燃料被覆管のジルコニウムがネックとなって熱効率はせいぜい30%程度できわめて非効率です。
しかし最新の火力発電では、LNGや石炭、重油などいずれの燃料でもコジェネも含めた総合熱効率では70%を超えています
それよりなにより、原発のように、40年稼働させたら、そのあと長期にわたって半減期数万年以上の猛毒のプルトニウムなど大量の放射性廃棄物(原子炉自体が超高レベル放射性廃棄物です)の処理と管理を必要とし、結局トータルに見たら発電した電力以上のエネルギーが必要となる無茶苦茶なシロモノではないのが自然エネルギーや火力発電の強みですね。

それではなぜ関電などが燃料代がかさんで大赤字だと騒いでいるのでしょうか。

私にはその理由がよくわかりません。

ひとつは、上記の独立系の発電事業者に比べて燃料調達努力をしてこなかったということもあるでしょうね。
よく言われる燃料価格が高い理由の説明としては、「電力は安定供給が原則なので、燃料調達契約も長期に安定的に供給される必要があるので割高になる」というものです。
でも、上記の大阪ガスや神戸製鋼所などの卸売電気事業者が大きな利益を上げているのは、不安定な短期契約を結んでいるからでしょうか。そもそも大阪ガスのようなガス供給事業者が、そんな不安定な契約をしているはずがありませんね。

関電管内ではガスと石炭ですが、重油での発電でも赤字ではありません。重油を燃料とした日立臨海発電所や日立造船茨城発電所などは東電に対して最大契約出力約40万kWを売電して利益を上げています。火力イコール赤字というのはどう考えても理解できませんね。

考えられるのは関電などの電気事業者は、原発のように税金も含めた巨額の資金と国策で手厚く庇護された商売に慣れてしまっていて、個々のコスト管理を細かく積み上げるという経営努力を怠ってきた「親方日の丸」体質がここにきて一挙に露呈したということでしょうか。
悪名高い「総括原価方式」で、少々原料費が高くなっても電気代に転嫁できるからということもあるでしょうが、「総括原価方式」が適用されているのはガス事業も同じです(ガスも国際比較したらきっと絶対に高いでしょうね)。

結局関電のいうように赤字の理由を燃料コストにするというのは、わざわざ最新鋭設備の火力発電所を建設しても大阪ガスや神鋼で大きな利益が出ているという事実を見れば説得力がありませんね。自分たちの経営能力のなさを暴露しているだけです。

しかし普通の企業では、製品の原材料が上がったからと言って、すぐ製品の販売価格には転嫁できません。シャープやパナソニック、ソニーの決算の赤字が大きな問題になっていますが、電気事業者の経営者はそれを見てほくそ笑んでいるのでしょうか。

安易な値上げを許している経産省も含めて、こんな電気料金体系について真剣に考えなければいけないと思います。電力事業者も個々の発電所ごとに、もっと詳細な発電コストのデータを国民に公表すべきですね。

原発事故の現状や、放射性廃棄物の最終処分、廃炉を含めた原発による電力料金などについて、まだまだ勉強しなければいけないことが多いです。


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