思いつくままに書いています

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御用とお急ぎでない方は、ごゆっくりどうぞ。

タカラヅカスカイステージ/ 「The Back Stage #6 ~衣装~」 の華麗なる意匠

2014年05月16日 | スカイステージ感想
前回の「舞台進行・公演大道具」の紹介からずいぶん時間が経ちました。
相変わらずのスロー更新で申し訳ありません。
順番からいえば今回は「電飾・照明」となりますが、「ベルばら」公演中でもあるし、前回の月組ベルばらの「衣装」について、その制作過程や苦心談、また宝塚の見せ場の一つ「早替わり」についても裏方の話が紹介されているので、今回は「衣装」についてご紹介します。

番組はまず衣装の製作風景から。

2012年 12月6日、宝塚大劇場にある衣装作業場では、月組公演ベルばらオスカルとアンドレ編の衣装が作られています。


衣装制作は、男物・女物・帽子担当の3部門に分かれているそうです。
しかし作業場というより本格的な衣料工場みたいです。こんな広いスペースが大劇場内にあるというのは驚きです。
前々回の大道具の作業場もかなり広かったし、大劇場の建物の空間構成は本当に不思議ですね。

多くのスタッフが黙々と衣装を作っています。












手作業で飾りなどを付けていきます。


宝塚の衣装は、衣裳デザイナーの描いたデザイン画を基に作られます。
そのデザイン画をもとに、布地やボタンなどが選ばれて縫製作業に入ります。
その衣装のデザインはどのようにイメージされて作られるのか、担当者に聞いています。

衣裳デザイン担当の任田幾英さん

デザインそのものは頭の中から生まれてくるものではなくて、台本とか台本に載っている人物とか、観に来られるお客様の目線とか、そういうものを意識して生み出していきます。
衣装の色とか形とかは登場人物の内面が合って出てくるものだから、人物の内面と外面を結び付けるのが我々の仕事だと思うのですよ。

今回の公演の衣装について
今回の軍服は宝塚オリジナルなものであって、本当に史実に沿って考証したものではありません。
もちろん本物の軍服は知っているのだけれど、それを再現したのでは単なる博物館の展示場になってしまうので、まして宝塚の場合女性のプレーヤーが着用し、観客もほとんどが女性のお客様ということもあって、そういうお客様の目に優しいというか、また原作の池田先生の世界と融和させたような舞台を展開させる必要があると思うのですね。
ですから実際より華美になっているし、シルエットとかもスマートになっています。実際の上級の士官の軍服というのはもっとがっしりとした、針金を中に組み込んだようなものが原型にあるのですけれど、うちの場合はそんな細工はしておりません。
実際に女性が着用することを意識して作り上げた衣装だとご理解していただければと思います。それが正解だと思います。







次は靴を担当する作業場です。

(箙かおるさんのナレーション)
ここではサイズの調整や色塗りなどのメンテナンスが行われています。激しいダンスなどを行うので靴は大変重要なのですよ。




色塗りをしています↓


再び衣装制作場です。

箙かおるさんのナレーション
衣装を担当するスタッフはどのような点にポイントを置いて衣装を制作しているのでしょうか?

劇場部衣装課副主任(男物チーフ)荒井弘美さん

最近の一般の流行も取り入れて、肩幅など細身のデザインにするように心がけています。そういう最近の流行を取り入れることも考えています。
昔はちょっと大きめの、私たちが入った20~25年前だと肩パットも分厚いのを入れて、肩幅を落として、肩幅は45~50センチぐらいあったんですけど、今は43~45センチぐらいで大分コンパクトなシルエットになってきています。

一般のズボンでしたら靴がペッタンコですよね。ですので裾がまっすぐのラインになっていると思うんです。直角のラインになっていると思うんです。皆さん一般に履かれているズボンは。でも劇団の靴は7センチヒールといって、結構高さがある舞台に立ってスッと見えるような靴を履いているのですけれど、それに合わせてヒールが見えないようにする工夫もしております、はい。

あとは、昔からのベルばらの伝統を崩さずに、そして近頃の流行も取り入れて細身のシルエットを意識して、(着る)本人の好みも取り入れて作っております。








劇場部衣装課副主任(女物チーフ)田中由紀さん

ファッションショーとかも参考に、デザイナーの先生の描かれたデザインにそれらを取り入れていかなければと考えて作っています。

身長とか体格が昔と違って近年だんだん大きい人が増えてきていますから、女役の人でも大きい人とか小さい人とか差があるので、そういうのも考えて、ドレスの丈とかどうしょうかとか手探りしています。

相手になる男役さんのことを考えて身長とかのバランスも考えて、女役さんはヒールの高さを変えたりとかしますので、そういうのも考えて仕上げたりします。デザイン画を見て作るのは難しいですけれど、その中に自分の考えとか、今まで経験してきた作り方だとかを取り入れて立体に仕上げていってますけど、かなり労力は使いますね。気も使いますし。あと先生と相談したりして作り上げていますね。





 
箙かおるさんのナレーション
2012年12月15日、星組公演が終わり、舞台そでにある衣装室から星組の衣装が運び出されていきます。運び出された衣装は東京公演に向けて別の部屋に集められて、点検やクリーニングが行われます。







そして27日、月組公演の舞台稽古前日、今度は月組の衣装が衣装室に運び込まれます。通常は前の公演の千秋楽に運び出しと運び入れが同時に行われるのですが、今回は年明けの公演ということで休演期間が長いため、運び入れ作業が期間をあけて行われました。









箙かおるさんのナレーション
舞台のそでにはもう一つ大切な部屋があります。それが早変わり室です。スピーディな転換がウリの宝塚、私たちにとってある意味ここは戦場です。





劇場部衣装課「ベルサイユのばら -オスカルとアンドレ編-」公演担当チーフ 松本紀子

早替えは時間との勝負になるので、舞台はノンストップで動いていくので、限られた時間に決められた手順を守って着替えさせないとダメなので、間に合わないと思った場合はシカケというふうに衣装をくっつけたりだとか、一度に着れるようにするだとか、短い時間で着れるようにはしますね。

あと、そうですね、脱がすことも時間がかかるので、脱がすこともいろいろ皆さん工夫はされていますよ。
たとえば男役さんだったらえーっと、靴を履いたままズボンを脱ぐということはできないので、まず靴を脱がして、それからズボンを脱がす。でもそれをすると2回足を上げることになるので、それを時間短縮のために一度にズボンと靴を脱がすとかで時間短縮をしたりだとかする人もいます。

まえもってお稽古段階で早変わりということが分かっていれば、衣装合わせをした段階で『早変わり仕様』にちょっと工夫をしたりだとかは出来ますけど、それをしないで舞台稽古に突入して、いざ音に合わせてノンストップでやってみると、間に合わないということが多々あります。
そのときに、その時々でみんなで方々から知恵を持ち寄って、どうしようと、ここはこうした方がいいんじゃないのって、こうやってここをくっつけた方が早いんじゃないのっていう風にみんながこう知恵を持ち寄って、シカケをしていったりとかはします。
舞台稽古があった後に、通し稽古がノンストップで本番と同じようにやりますけど、その時やっぱり早変りが間に合わないとかがいっぱいあります。それをお客さんの前で見せることは出来ないので、いかに間に合わすかということをみんな必死でやりますので、生徒同様にみんな緊張しています、初日は。


箙かおるさんのナレーション
こちらは舞台そでにある床山さん。鬘や髭の製作やメンテナンスが主な仕事。こちらも稽古に向け作業が続けられます。











番組は最後に、スタッフのみなさんにそれぞれの仕事の魅力を聞いています。

劇場部衣装課副主任(男物チーフ)荒井弘美さん
そうですね、私は客席から見て私の手掛けた衣装がライトを浴びている時だとか、あと歌劇関連の雑誌に写真が載った時はうれしいなと思いますね。
一人の役者さんを一つの衣装でいろんな年齢や性別や職業や、たまには人間だけでなくて動物になったりすることもあるので、いろんなものを衣装で演じることができるというのもタカラヅカの魅力だと思います。


劇場部衣装課副主任(女物チーフ)田中由紀さん
お客さんに見てもらって、スポットライトが当たったら感動しますね。自分で作ったものなので。演じている役者さんたちだけでなく、観ているお客さんとか、裏方の私たちスタッフでもお姫様とか王子様とかになれるというところが魅力ですかね。

「ベルサイユのばら -オスカルとアンドレ編-」公演担当チーフ 松本紀子
自分が手に携わった衣装がお直しとかお飾り一つにしたっても自分の手掛けた衣装というものが板の上に乗るっていうものを見たときに、やはり自分が作ったという楽しさ・嬉しさを感じられるというのが魅力ですかね。

衣裳デザイン担当の任田幾英さん
タカラヅカを観に来たお客様が少しでもほっとされるというか、明るい気持ちになっていただけるというか、そういう作業がこの仕事の魅力だと思うんです。そういう仕事に就いている自分たちもこれが幸せなんだなと思えます。それがあるので、他の仕事に就かなくてよかったなと思います。

そして公演初日の様子です。










宝塚の魅力の一つは衣裳の豪華さにあると思いますが、今回の番組でその一端が分かったような気がします。
多くの同様の歌劇団がいつのまにか消えて行った中で、宝塚歌劇団が常に手を抜かず真摯に舞台を提供し続けてきたことが、今年100周年を迎えられた要因だったのではないでしょうか。

さて次は#3「電飾・照明」ですが、何分更新が遅いので、期待せずにお待ちください。(笑)

今回もご覧いただきありがとうございました。

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タカラヅカスカイステージ/ 「The Back Stage #2 ~舞台進行・公演大道具~」 究極のキュー!

2013年11月07日 | スカイステージ感想

前回は宝塚の大道具製作についての放送をご紹介しましたが、今回の番組テーマは「舞台進行・公演大道具」というものです。

舞台進行公演大道具という2つのタイトルになっていますが、実際は舞台進行が中心となっています。前回は大道具でも製作の裏話で、今回は出来上がったその大道具をどう使うかも含めた、舞台進行のカギとなる「きっかけ」、つまりキューの作成にまつわるお話です。

いつも観劇していて思っていたのですが、宝塚の舞台は、舞台上の大勢の出演者の演技と、それと一体となった生演奏、そして多彩な照明、スピーディーな場面転換のための大がかりな舞台機構が魅力ですが、それらを誰が、どうやって同期させているのだろうかというのが知りたいところでした。一応その答えとなっているのが今回の番組です。

以下、番組の内容を放映順にキャプチャ画像とあわせて書いていきます。

7月23日、稽古場では花組の「サンテクジュペリ」と「コンガ」の通し稽古が行われています。


稽古の様子を見守るたくさんのスタッフ。数人の黒シャツ軍団にご注意。


彼らの台本には場面ごとの絵コンテ?のようなものが描かれています。この段階ではおおよその流れをチェックしているようです。


こちらは舞台進行担当さん。台本と見比べながら稽古を見守ります。


彼の職名は正式には「劇場部宝塚公園課進行・楽屋担当


自分の担当する舞台進行とはどういうものかを語っています。

舞台進行とは?と聞かれた阪田さんは、
「進行担当の一番大きな仕事は『きっかけを出す』ということ。
稽古場の時点から演出家と話をさせていただいて、どこでこの道具を動かすのか、どこで吊りものを飛ばしていくのか、しかもそれが安全に、しっかりと舞台を運営できるようにということを考えながら、すべての『きっかけ』を作っていくということが進行の大きな仕事になりますね。」と語っています。

7月25日「サンテクジュペリ」の舞台稽古。演出助手の大野拓史さんと阪田さんがプロローグのけいこを観ながら相談しているところ。


再び阪田さん:
「プロローグの場面ですと、セリをこういう順番で使いたいと、この歌の何小節目でセリを動かしたいとかの話を受けまして、そのほかドライアイスを使いたいとか、煙を出したいとかのお話を事前に演出部の大野さんからいただきまして、それを進行担当としては舞台装置を使うので大道具さんにも話をしに行ったりしまして、で、舞台機構的に床機構などちゃんと動かせるのかということをすべて調整をして、実際の舞台稽古に臨んでいくということをしています。」

宝塚歌劇の魅力のひとつでもある大規模な舞台機構。でもそれを動かしたり止めたりするスタッフに「きっかけ」を出す仕事は大変です。話の中ではコンピュータでタイミング管理をしているとかの話も。

ナレーター
「今回の作品で苦労した点はどこなのでしょうか?」
阪田さん:
「今回の公演では、プロローグが一番きっかけが多いところですが、(演出部から)当初いただいた計画では舞台機構が動かせないということがわかって、どうしたらコンピュータで枠を作って動かせるのかというところで、舞台稽古の段階で大道具さんとか演出部と話をして、それぞれ動かすタイミングを決めていったところが一番苦労したところですね。」
長年やってきているはずなのに、舞台機構が動かせないようなプランが演出部から出たりするというところが面白いです。

さて映像は変わってプロローグでの舞台下の奈落の場面。そこでは複数のスタッフが出番でセリに乗った蘭トムの状態を確認して、口々に「OKです~」「はい、上がりまーす」とか声をかけています。ただ画像は真っ暗でよく見えず(笑)。


丸い台座の中にはセリが仕込まれています


そしてセリが上がってきて蘭トムが登場。


阪田さん:
「次に苦労したのは、飛行機をセリを使って高いところから下げてくるところ。しかも飛行機を盆を使って2回転させて、さらにそこにはドライアイスを使いたいとか、盆が止まったら吊ものを下したいとか、ま、実際には椰子が降りてくるのですけれど、それらが本当に動くかどうか検証していくところが大変だったところですね」

実際の舞台上ではこんな場面になっていますが、


舞台裏ではすでに飛行機を大道具のスタッフが押していってスタンバイ。まだ翼は畳まれています。


やがて翼も伸ばされて


登場です。盆が回りドライアイスも出ています。


操作しているのはこちら。



まるでSF映画の宇宙船か潜水艦のオペレーションルームです。シーンごとにパソコンのプログラムによって順番に各パートのボタンが光り、それを実際の進行を確認しながらスタッフが押すことで各部署が動いているみたいですが、詳細は不明です。

公演大道具さんの感想
「宝塚は舞台のスケールの大きさがウリの一つでセットが大仕掛けなので一人ではできませんね。なので、みんなで息を合わせて一斉に動かすというのが必要で、でも自分たちがそれを客席から見る機会は基本的にまずありませんから、きれいに息が合っていると見栄えがするやろうなとイメージしながら動かしています」


進行の阪田さんは
「進行係は舞台稽古から初日、千秋楽まで演出部と一番長く話をしていく部署になると思うのですが、初日の幕が上がり、舞台が終わって最後に緞帳が降りたあとのお客さんの拍手や歓声を聞いた瞬間というのが、一番達成感があるといいますか、肩の荷が降りたといいますか、ホッとする瞬間ではありますね」


ショー「コンガ」の方は舞台進行は別の担当になっています。なぜか東京公演課の舞台進行13年のベテラン宮脇さん。


てきぱきと指示を出していますが、演出サイドからの要求通りに進行できない場合もあるようです。

「演出的にはここで動かしたくても、いろいろ安全面での条件とか、そのほか視覚的な条件とか整わない場合はやはりキューは出せなかったり、また無理な条件としては人員的なもの、具体的には大道具は上下(かみしも)7人・7人と、あと舞台機構を動かすオペレータが3人、小道具が大劇場でしたら上手4人・下手3人の7人、あと進行の係が上下に2人ずついますので合計28人。この28人でやっていくしかないので、それで手が回らないときには転換を2段階に分けてもらうとか、そういうやり取りをしながら決めていくことが多いですね。」


↓蘭の花を出すところです




舞台上では


<ナレーション>
舞台転換の速さでは世界一といわれる宝塚歌劇。進行係さんはどう思っているのでしょうか

宮脇さんは語ります
「ぼくは宝塚に入る前も比較的キューを出す仕事が多かったのですが、歌劇の仕事をやらせていただいたときに、はじめは面食らいましたね。こんなにもキューがあるのかと。
入った当時は1000days劇場からのスタートだったので、床機構が全くない状態で、吊もののきっかけを出すのが中心だったのですが、それでもこの仕事をするにあたって、宝塚のテンポ感の速さとかに体が慣れるまでものすごい時間がかかったことを今でも憶えています。
その後も外の現場とかの仕事をやってまた宝塚に戻ったりすると、かなりリハビリをする時間がかかりました。
意識とかをタカラヅカモードに変えていかないととてもやっていけないですし、ここまで忙しく転換をやっているカンパニーは他にはないのではないでしょうか。
まあ今回のコンガは比較的少ない方で、まあキューも数えたら50くらいでしょうが、多いものでは一幕もので120とか150とかのキューになることもありますので、そういう意味では宝塚の舞台進行、要するにキューを出していく仕事というのは気が抜けないですね。」


最後に各担当さんの感想が紹介されていました。

まず大道具の福岡さん:
「速さを求められるという点では新入社員のころから急げ急げというのがあるんですけど、私たちは自分の身も守らないといけないし、出演者を守らなくてはいけないのはもちろんですから、とにかく安全第一を心掛けて、その中で速くということを追求していくことで、ご覧いただいた皆さんに『どうやっているんだろう?』と思っていただければ僕らの仕事としては成功やと思っています。」

進行担当の阪田さん:
「裏方としてはこの転換の速さですとか、それはまあ大道具さんがしっかりとした技術を持ってやってくれているから出来ることなんですが、宝塚の一番の魅力と言いますとやはり華麗な衣装ですとか、裏方としては素早い転換というのが見せ場と言いますか、そういうところも見ていただけれるうれしいですね」

進行担当の宮脇さん:
「ぼく個人としてはまだまだ日々学ぶことが多くて、13年ぐらいですかこの宝塚の仕事を始めて。でもまだまだスキル的に上げていかなくてはいけないなと、自分の中で能力の足りていないなというところを毎回感じることが多いので、ま、それを一つ一つなくしていき、それでお客様が舞台を喜んでいただければいいかなと思っています」

最後に舞台裏もわかる貴重な画像が映されて終わっています。

セットするのに見えているだけでも8人のスタッフが動員されています↓


この吊ものは↓


なんと手動で上下しています↓


フィナーレですが↓


このシーンの後方にご注意


楽しく踊っていますが↓


大道具さんが頑張っています


今回も面白い放送でした。

多くの持ち場の協働で成り立っている舞台の場面転換が、芝居の流れにぴったりシンクロするためには「キュー出し・きっかけ出し」がキーポイントですね。話の中で紹介されていた150ものキューとなるとそのタイミング調整だけでも大変です。
たまに座った席によってはセットの裏に大道具さんが見えたりすることもありますが、この放送を見た後は、その苦労が偲ばれて仕事とはいえ本当によくやっているなあと感心するばかりです。
こういう話、もっと深めてまた放送してほしいですね。

ご覧いただきましてありがとうございました。m(__)m

次回はシリーズ #3 「電飾・照明」です。
できるだけ早くアップするよう心がけますので、ご覧いただければ幸いです。



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タカラヅカスカイステージ/ 「The Back Stage #1 ~大道具~」の華麗なる裏側

2013年06月14日 | スカイステージ感想

バックステージは全部で11のテーマで番組が作られました。そのどれもが日頃ほとんど見聞きすることのない珍しく興味深い話ばかり。
その第1話は「大道具」。宝塚は舞台芸術としての完成度の高さは誰もが認めるところですが、その中でも一際豪華なのが舞台装置、大道具ですね。
今回の放送で紹介されている大道具は、2012年7月27日に宝塚大劇場で開演された花組の「サン=テグジュペリ-「星の王子さま」になった操縦士-」と「CONGA(コンガ)!!」の製作風景を中心に紹介されています。
(しかしもう1年近く前になるとは。早いものです。)

最初は打ち合わせの場面から始まります。場所は、木工工場といってもおかしくないほど広くて天井の高い「大道具製作場」です。


こんな大きな空間が舞台裏にあるとは全く知りませんでした。行き馴れた大劇場ですが、建物の空間構成がちょっと想像つきませんね。もっとも、生徒でも殆ど訪れることのない場所だそうです。

打ち合わせが行われたのはわずか開演1か月前の6月25日だそうです。まさに突貫工事です。
大道具は装置デザイナーのデザイン画と設計図をもとに作られますが、打ち合わせではまずどんなものを作るか、そして使用する材料などの説明が行われます。




大道具の担当部署は製作課と実際に舞台で出し入れしたりする公演課にわかれ、製作課でも実際に作る製作担当とできたものに色を付け塗っていく背景担当に分かれているそうです。

その製作過程ですが、大道具のデザインを決めるのは専門の装置デザイナーです。
今回の公演は新宮有紀さんという方が担当でした。

で、まず芝居のほうのデザインです。
その芝居の世界観や「かお」を思い浮かべて、全体のデザインイメージを決め、それに沿って個々の場面を作っていくとのこと。
公演を観られた方はお分かりですが、芝居は主人公の実生活と「星の王子さま」の場面が交互に展開されたり、それがオーバーラップするところもあったりするので、けっこう難しかったとのことです。
ショーのほうは、基本的にラテンものだが、ストレートなラテンものではないということで、情熱とリズムという2つのテーマで個々の場面と全体のイメージとを調和させながら作り上げたとのことでした。

で、このデザインに脚本家の意見や意向がどこで反映されるのかという点が知りたいところですが、それは今回の番組では説明はありませんでした。なのでこれは私の推測ですが、この開演1か月前というのはもう実務的な製作段階ですから、装置デザイナーが脚本家などの意見を聞くのはもっと前の、台本が固まった段階になりますね。
その段階で脚本家と打ち合わせをして最終的にデザインコンセプトを固め、実際のデザイン画と設計図を描くということになります。ということで、もし脚本家のセンセイが遅筆だったりすると、スケジュールは厳しいですね。
大道具(小道具とか照明も同じですが)の製作開始時期は決まっているので、台本の仕上がりが遅れたりすると現場との板挟みになってデザイナーは苦労しそうです。

今回の目玉はなんといっても飛行機(ちょっと飛行機に詳しい方はご存知だと思いますが、フランスの名機コードロン・シムーンですね)とあの大きな花びら。
その飛行機は、なんと作業開始2週間余りでもうほぼ出来上がっています。大したものです。プロです。

そしてまもなく完成。


この飛行機、私がこれまで観劇した宝塚の大道具として出色の出来です。もちろん他の演劇では望むべくもありません。
以前「黎明の風」でマッカーサーが降り立った場面の飛行機のセットなどは、泣きたくなるほど奇々怪々な飛行機でした。
そのとき、所詮宝塚の大道具はこの程度かと思ったものですが、それは間違いでしたね。

というのは、今回のコードロン・シムーン、デザイナーの描いた四面図の出来の良さを知ったからです。子供のころからの飛行機ファンで、このシムーンの写真や資料も以前から良く知っていて、機体の外形の特徴にもなじみのある私でも、今回の図面はよくできていると感心しました。




見落とされがちな胴体下の小さなベンチュリー管まで描かれています。(笑)


ということは、大道具の出来はデザイナーのデザイン画と設計図で決まるということですね。だから、「黎明の風」の不細工なセットも、スタッフがデザイナーの指示通り作った結果だということですね。認識を改めます。m(__)m

さて、この飛行機のセット、プロペラももちろん回ります。


がそれだけでなく、その他にも点検扉を開けるとエンジンの一部が見えるようになっていたりでよく作り込まれています。担当者は「演出や装置からの指示はなかったが、不時着したときにエンジンを点検する場面があると知って作った」といっています。まさに阿吽の呼吸ですね。






また、これは実機にはないのですが、セットの移動や運搬時に便利なように艦載機のような主翼の折り畳み機構も備えていて、凝っています。さすがにセット、サイズは実物大とはいかなくて、2分の1スケールにしたようです。


折り畳み時のロック機構も付いています。


もう一つの目玉がこの花びらのセット。
これがデザイン画と設計図です。





けっこう大きなもので、担当者はキラキラ輝いているように仕上げるのに苦心したとのことです。


このセットに上がる階段、結構大きな段差がありますね。よくコケないものです。(笑)


背景はデザイン画で40枚以上になるとのことで、まずそのデザイン画をもとに形をベニヤ板に落としていきます。アタリというそうです。




そしてそれをスタッフの大工さんが木枠を付けて組み立てていき、それにキャンバスを貼って色付けや絵柄を描いていく手順です。また電飾等も多用するのでそれもスタッフがつけていくとのこと。


階段が作られています。↓


こんなデザイン画をもとに

実際に作っていきます


さらにこれが↓


こうなりました。きれいでしたね↓


最初に蘭トムが登場するところですが、これが設計図です↓



実際はこんな風にできました↓


気が付いたのはスタッフの大所帯なこと。すごい人数です。日程が限られているので、一挙に人海作戦で作り上げていっている感じです。

本当に広い作業スペースですが、これが舞台の奥にあるとは驚きでした。


そして7月23日に月組ロミジュリ終了。ただちにそのセットが運び出され、東京に送られます。






そして完成した花組公演の大道具が運び込まれ、バトンに吊り下げられてセットされていきます。背景になるものはすべて吊下げられるのでバトンの数も半端じゃないですね。
デザイン画のステンドグラスが↓


出来上がりました↓


ばらの垣根も


出来上がったらこうなります↓


そして公演を迎えました。






最後に番組は大道具の責任者のみなさんの生きがいを紹介しています。職人さんたちです。
デザイナーの先生の褒め言葉がうれしいとか↓


直接観客の声は聞けないが、公演の営業成績があがったらうれしいとのことです。


サンテクジュペリはチケットの売れ行きがちょっと心配でしたが、こんな裏方さんの苦労を知ったら、私たちも出来る限りそれに応えてあげたいですね。

宝塚の魅力は、豪華なセットや衣装で繰り広げられる華やかな芝居とショーの舞台にありますが、それを維持するのには大変なコストがかかっているということを今回の番組でわかりました。世界に誇れる舞台芸術です。
改めてささやかながら応援していきたいと感じました。

次回は「舞台進行・公演大道具」です。更新が遅れるかもしれませんが、興味のある方はまたご覧ください。


コメント (3)
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