6月25日に、宙組公演『王家に捧ぐ歌』を観てきました。更新遅いです。(殴)
ちなみに最近の宝塚観劇はいつも木曜日。ヨメさんのデイケアサービス行きの予定がないのと、平日のほうがチケットがとりやすいというのがその理由。で、今回は先行予約をがんばったので、端ですが上手側7列。観やすかったです。
開演前に客席がざわつきだしたので見たら、花組トップコンビの観劇でした。^^;
さて、感想です。例によって敬称略。(画像はいずれもスカステ番組のキャブチュアと、プログラムからです)
さて今回の観劇、チケットをゲットした時からかなり複雑な気持ちでした。
なにせ『王家に捧ぐ歌』です。私のようにヅカファンとは程遠い人間でも、3回も観てしまったという名作。そのうち1回は、急な仕事で行けなくなったヨメさんに代わって一人で東京まで観に行ったりしたほど。
で、一番気がかりだったのは、ラダメス。
武闘派ラダメスには体育会系(笑)の湖月わたるがぴったりでした。なので、見るからに繊細な(笑)朝夏まなとに出来るのか?が最大の不安要因でした。「翼ある人々」で、酒場でチンピラにからまれてボコボコにされる弱いブラームスが脳裏から離れないし。(笑)
でも、朝夏まなとのほうが断然有利な点もあります。それは歌!歌さえあれば大丈夫とも思えたり。
あとはアイーダで、男役の安蘭けいだからこそ、野性味と強さが出たと思うので、娘役の実咲凜音では無理かなと。
ただこれは、スカステで見た限りですが、彼女はかなり男勝り&鼻っ柱が強そうなので大丈夫かなとも思えたり。(殴)
ただ伶美うららのアムネリスはOKでした。(笑)
王女にぴったりできれいだし、歌も檀れいに引けを取らない?し。(殴)
ところで今回の再演は、歌劇団サイトでも相当意識していましたね。盛り上げに頑張っていました。
公演発表です↓
さらに前夜祭を開いたり、
キムシン自ら、集合日に生徒を前に発破をかけているのもビックリです。
「今回は星組公演の再演ですが、初演のほうがいいねと言われたらみなさんどうですか?悔しいと思いませんか?」
まあなんとも露骨なプレッシャー。(笑)
朝夏まなと自身、研2のときに初演を観ていたので、再演の話があった時は
「湖月さんのイメージが強かったし、すごく骨太で男らしい役で自信がなかった。でも練習しているうちに自分の中にラダメスが入ってきて、やれるかなと思えるようになってきた」と同番組で話していました。まあ大変なプレッシャーだったと思いますね。
ということで、期待と不安相半ばでの観劇でした。
そして当日、幕が上がっても、初めのうちは「ここは汐美真帆のほうがよかったな」とかちょっと突き放して、初演と比較しながら観ていました。
でもそれもわずかな間。話が進むにつれ、いつのまにか舞台に引き込まれていって、終わってみたら、初演に劣らないというか、星バージョンとはまた違った見ごたえのある舞台に大満足。
とくに二人で地下牢に幽閉されていくところでは、ついホロリとな。(笑)
これ、初演では一度もなかった経験でした。チケットがあればまた見たいと思ったくらい。
今回の「王家‥」の成功は、なにより朝夏まなとの演技と歌唱力に負うところが大ですね。初演での最大の弱点が湖月の歌だと今も思っていますが、今回は完璧。なので、感情移入がしやすかった(笑)。初演時はせっかくのいい場面でも、わたるが歌いだすとつい正気に返ってしまったり。(殴)
そしてアイーダの実咲凜音も、初演に勝るとも劣らない歌だったので、二人の歌う場面は見応え聴きごたえ十分。やはり歌劇は歌が命。(笑)
それと、初演で残念だった凱旋パレードのグルグル回るショボイ振り付け(マイヤ・プリセツカヤの起用が疑問でした)がガラッと変わって俄然よくなっていたこと。ちなみに今回の振り付け担当スタッフに、当時星組で80期生(霧矢大夢とか彩吹真央が同期ですね)として出演していた百花沙里が羽山紀代美の推薦で加わっています。
その百花沙里はステージドアで、
「まーちゃんは88期生で、初舞台生だった彼女のロケットでは私がお姉さんでしたが、その初舞台生だった彼女が今大きな羽を背負ってと、なにか縁みたいなものも感じて胸が熱くなりました」と語っています。ちょっといい話です。
面白いのは、今回パレードの隊列を増やすために、初演時は8人で担いでいた神輿を大幅に軽量化して、4人仕様に変更したこと。
軽量化しても強度は十分とのことです。
剣も朝夏まなとに合わせて新造するなど小道具さんも頑張っています。また大道具も今回舞台セットをすべて新造していることなど、コストがかかっています。
でもなんといってもこの作品、全編に使われている音楽が寄与している点が大ですね。どれもいい曲で、それとキムシンの繰り返し多用の歌詞とあいまって、一度聴いたら忘れない。(笑)
今回の再演で改めて作編曲担当の甲斐正人の素晴らしさに感心しました。やはりミュージカルは使われている楽曲の出来がよくないとだめです。
その甲斐正人が朝夏まなとについて、
「朝夏さんはどちらかというと踊りが上手な方だったと思うんですけど、今回は歌の力が抜群になったと思うんですよ。線も太くなりましたし、素晴らしい男役トップ誕生だと思います」と語っています。
フィナーレもまたよかったですね。
この振り付けは羽山紀代美。フィナーレはふたりが地下牢から蘇るというテーマで始めるようにしたとか。ボレロから次第に明るい曲に変わって宙組らしさを出すようにしたとも言っています。
初演のフィナーレは覚えていませんが(殴)、随所に見ごたえのある場面があって、おトク感満載でした。同じタカラヅカでも「風と共に‥」などと比べたら満足感は大違い。
観終えてもう満腹という感じで(笑)、この日も多くの修学旅行生が観劇していましたが、いい公演に出会えて彼らはラッキーでしたね。
ということで、以下、配役ごとに感想です。
まず朝夏まなと。
よかったです!! わたるの武闘派ラダメスに対して、こちらは理知的な文人派ラダメスで、国と愛の板挟みで懊悩する姿がよく演じられていました。でも雄叫びの場面では、わたるに負けないド迫力でした。(笑) ほんとうに頑張っています。
上記の番組で朝夏まなとは、
「ラダメスはすごく骨太で男らしい役で私にできるかなと思ったが、練習を重ねるうちにラダメスが入ってきて、やれそうだと思えてきた」「星組の初演と同じものを目指してもできないので、私たち宙組の個性だったり雰囲気だったりで独自のものを作り上げたい」と言っています。
繰り返しになりますが、大ヒットの初演を受けて大変なプレッシャーな中での再演だったと思いますが、また別の魅力を持った舞台を作り上げていました。だからどの場面でも二番煎じな印象は全くなし。ラダメスがまったく異なるキャラクタなのが逆によかったのでしょうね。
キムシンは、朝夏まなとのラダメスについて
「役柄のとらえ方が真っ直ぐなんですね。ラダメスという役をあーだこーだと触るのではなくて、ラダメスという役をドンと捉えて真っ直ぐに演じてくれているんですよ」と激賞。本当にそう思いました。
また朝夏まなとは脚本の弱点についてもよく考えていて、
「二人の出会いの場面がないので、お互いの気持ちを表現できないと最後の場面が軽くなるので、実咲凜音と相談しながら二人の関係がわかるようにやっている」と言っています。
その成果で、最後は感動の結末となって、観ている私もついウルっとなり、あわてて周りを見渡すと、あちこちで目頭を押さえる女性客の姿が。(笑)
フィナーレでも、脱水機並みの高速回転のリフトを披露してくれました。(笑) 頑張りすぎが心配になるほど。
今回のフィナーレ、この二人のデュエットもなかなかの見所。
次は実咲凜音です。
ようやく男トップと文字通り相思相愛な役がまわってきましたね。(笑)
前トップとの間に漂っていた微妙~な雰囲気がなくなって、対談番組でも安心して見られます。(殴)
で、今回のアイーダ、歌はもちろん演技でもよくやってました。初演と比べてもまったく遜色なし。でも逆に、男役の安蘭けいがアイーダの高い音程の歌をよく歌っていたものだと改めて感心しましたが。
実咲凜音は結構自信もあったようで、「安蘭さんのアイーダは男役なので強いイメージだが、私は娘役として女役を演じるけれど自分自身強いイメージがあるので、頑張ってやっていきたい」と言っています。
負けん気の強そうな彼女のキャラクタをよく生かした演出で、アイーダは適役でした。伸びのある声が耳に残ります。
で、アムネリスの伶美うらら。
今の宝塚でこれ以上の適役はないと思って楽しみでしたが、ちょっとガッカリなところも。
もちろん気品のある容姿はぴったり。檀れいとはまた別の美しい王女です。
でも強く演じようとしすぎたのか、あるいはそれが演出家の意図なのか、キンキンした感じが前に出てきて、ちょっと期待外れ。嫉妬に狂う高慢な王女という感じが強すぎて残念でした。かなりコワい顔です。(殴)
初演の檀れいは容姿も立居振る舞いも気品にあふれたアムネリスで、ラダメスをひそかに慕う女心もよく表現していて、観劇しながらちょっとアムネリスがかわいそうと思ったりしましたが、今回はそんな同情が入る余地がなかったですね。そして歌も、同じく歌が不得手だった檀れいの頑張りには届かなかった感じです。
「翼‥」で一気に贔屓モードだった私たちはちょっと残念でした。
ウバルドの真風涼帆は、初演の汐美真帆を髣髴とさせる演技で、ピッタリ。
冒頭の亡霊?のシーンはちょっと違うかなと思ったものの、進行につれてしっくり違和感がなくなりました。
ダンスと歌は文句なしでした。宙組に来てさっそくの大作で、しかも途中からの稽古参加でしたが、よくこなしていて感心しました。
ただこの人、根が善い人のようで、ウバルドにはちょっと黒さが足りない感じなので、エリザのルッキーニみたいな狂気が入ったほうがいいかなと思ったり。
出番の少ない役ですが、今回なにかと目についたのがラダメスの戦友ケペルの愛月ひかる。
初演では立樹遥が好演していましたが、今回のケペルも誠実そうな人柄の同僚役を、さわやかに演じていました。同じような大柄で頼もしそうです。応援したいです。そういえば「翼ある人びと」のリストもよかったですね。
専科のベテラン一樹千尋のアモナスロと、
箙かおるのファラオ。いずれもますますの円熟味でよかったです。
一樹千尋は初演でも老獪で狂気を装いながら陰謀をめぐらして、同時に娘思いの囚われの王を絶品の演技力で演じていましたが、今回もより味わい深いアモナスロを見せてくれました。まさに余人をもって代えがたいとはこのことですね。
箙かおるも初演以上に頑張っていました。今回は初演と違い、オリジナルの高い音階の楽譜に挑戦するなど、今なお新しいことに挑戦しようとする姿勢には頭が下がります。最近あまり姿を見ないので、もう枯れてしまったのでは(殴)と心配してましたが、初演以上の頑張りが見られて本当によかったです。
役が少ないので気の毒だったのが純矢ちとせ。アイーダをいびる場面ではパシっとひっぱたいていました。(笑)
でもパレードではエトワールだったので納得&満足。
あともうひとり歌ウマが印象的だったのが美風舞良。エチオピアを想う歌の場面で思わずヨメさんに「あれだれ?」と小声で聞いたほど。これまで知らなかったのが恥ずかしい歌でした。エチオピアの歌、初演で聞いてからずっと心に残っていましたが、本当にいい曲ですね。
あ、あと一人(殴)、組長さんもよかったです。嫌なネセルがぴったりでした。いえ、褒めてます。(笑)
というわけで、空前の大ヒット作品の再演ということで、期待と不安の入り混じった観劇でしたが、観て本当に良かったですね。トップコンビ以下の宙組メンバーと、専科のベテラン勢の力で、作品に新たな魅力が加わって、初演とは違ったいい舞台になっていました。
チケットさえあれば絶対リピートしたのにと、残念でした。
初演をご覧になった方も、初めての観劇の方も文句なしに楽しめるいい作品です。お勧めです。
↓オマケです。
ちなみに最近の宝塚観劇はいつも木曜日。ヨメさんのデイケアサービス行きの予定がないのと、平日のほうがチケットがとりやすいというのがその理由。で、今回は先行予約をがんばったので、端ですが上手側7列。観やすかったです。
開演前に客席がざわつきだしたので見たら、花組トップコンビの観劇でした。^^;
さて、感想です。例によって敬称略。(画像はいずれもスカステ番組のキャブチュアと、プログラムからです)
さて今回の観劇、チケットをゲットした時からかなり複雑な気持ちでした。
なにせ『王家に捧ぐ歌』です。私のようにヅカファンとは程遠い人間でも、3回も観てしまったという名作。そのうち1回は、急な仕事で行けなくなったヨメさんに代わって一人で東京まで観に行ったりしたほど。
で、一番気がかりだったのは、ラダメス。
武闘派ラダメスには体育会系(笑)の湖月わたるがぴったりでした。なので、見るからに繊細な(笑)朝夏まなとに出来るのか?が最大の不安要因でした。「翼ある人々」で、酒場でチンピラにからまれてボコボコにされる弱いブラームスが脳裏から離れないし。(笑)
でも、朝夏まなとのほうが断然有利な点もあります。それは歌!歌さえあれば大丈夫とも思えたり。
あとはアイーダで、男役の安蘭けいだからこそ、野性味と強さが出たと思うので、娘役の実咲凜音では無理かなと。
ただこれは、スカステで見た限りですが、彼女はかなり男勝り&鼻っ柱が強そうなので大丈夫かなとも思えたり。(殴)
ただ伶美うららのアムネリスはOKでした。(笑)
王女にぴったりできれいだし、歌も檀れいに引けを取らない?し。(殴)
ところで今回の再演は、歌劇団サイトでも相当意識していましたね。盛り上げに頑張っていました。
公演発表です↓
さらに前夜祭を開いたり、
キムシン自ら、集合日に生徒を前に発破をかけているのもビックリです。
「今回は星組公演の再演ですが、初演のほうがいいねと言われたらみなさんどうですか?悔しいと思いませんか?」
まあなんとも露骨なプレッシャー。(笑)
朝夏まなと自身、研2のときに初演を観ていたので、再演の話があった時は
「湖月さんのイメージが強かったし、すごく骨太で男らしい役で自信がなかった。でも練習しているうちに自分の中にラダメスが入ってきて、やれるかなと思えるようになってきた」と同番組で話していました。まあ大変なプレッシャーだったと思いますね。
ということで、期待と不安相半ばでの観劇でした。
そして当日、幕が上がっても、初めのうちは「ここは汐美真帆のほうがよかったな」とかちょっと突き放して、初演と比較しながら観ていました。
でもそれもわずかな間。話が進むにつれ、いつのまにか舞台に引き込まれていって、終わってみたら、初演に劣らないというか、星バージョンとはまた違った見ごたえのある舞台に大満足。
とくに二人で地下牢に幽閉されていくところでは、ついホロリとな。(笑)
これ、初演では一度もなかった経験でした。チケットがあればまた見たいと思ったくらい。
今回の「王家‥」の成功は、なにより朝夏まなとの演技と歌唱力に負うところが大ですね。初演での最大の弱点が湖月の歌だと今も思っていますが、今回は完璧。なので、感情移入がしやすかった(笑)。初演時はせっかくのいい場面でも、わたるが歌いだすとつい正気に返ってしまったり。(殴)
そしてアイーダの実咲凜音も、初演に勝るとも劣らない歌だったので、二人の歌う場面は見応え聴きごたえ十分。やはり歌劇は歌が命。(笑)
それと、初演で残念だった凱旋パレードのグルグル回るショボイ振り付け(マイヤ・プリセツカヤの起用が疑問でした)がガラッと変わって俄然よくなっていたこと。ちなみに今回の振り付け担当スタッフに、当時星組で80期生(霧矢大夢とか彩吹真央が同期ですね)として出演していた百花沙里が羽山紀代美の推薦で加わっています。
その百花沙里はステージドアで、
「まーちゃんは88期生で、初舞台生だった彼女のロケットでは私がお姉さんでしたが、その初舞台生だった彼女が今大きな羽を背負ってと、なにか縁みたいなものも感じて胸が熱くなりました」と語っています。ちょっといい話です。
面白いのは、今回パレードの隊列を増やすために、初演時は8人で担いでいた神輿を大幅に軽量化して、4人仕様に変更したこと。
軽量化しても強度は十分とのことです。
剣も朝夏まなとに合わせて新造するなど小道具さんも頑張っています。また大道具も今回舞台セットをすべて新造していることなど、コストがかかっています。
でもなんといってもこの作品、全編に使われている音楽が寄与している点が大ですね。どれもいい曲で、それとキムシンの繰り返し多用の歌詞とあいまって、一度聴いたら忘れない。(笑)
今回の再演で改めて作編曲担当の甲斐正人の素晴らしさに感心しました。やはりミュージカルは使われている楽曲の出来がよくないとだめです。
その甲斐正人が朝夏まなとについて、
「朝夏さんはどちらかというと踊りが上手な方だったと思うんですけど、今回は歌の力が抜群になったと思うんですよ。線も太くなりましたし、素晴らしい男役トップ誕生だと思います」と語っています。
フィナーレもまたよかったですね。
この振り付けは羽山紀代美。フィナーレはふたりが地下牢から蘇るというテーマで始めるようにしたとか。ボレロから次第に明るい曲に変わって宙組らしさを出すようにしたとも言っています。
初演のフィナーレは覚えていませんが(殴)、随所に見ごたえのある場面があって、おトク感満載でした。同じタカラヅカでも「風と共に‥」などと比べたら満足感は大違い。
観終えてもう満腹という感じで(笑)、この日も多くの修学旅行生が観劇していましたが、いい公演に出会えて彼らはラッキーでしたね。
ということで、以下、配役ごとに感想です。
まず朝夏まなと。
よかったです!! わたるの武闘派ラダメスに対して、こちらは理知的な文人派ラダメスで、国と愛の板挟みで懊悩する姿がよく演じられていました。でも雄叫びの場面では、わたるに負けないド迫力でした。(笑) ほんとうに頑張っています。
上記の番組で朝夏まなとは、
「ラダメスはすごく骨太で男らしい役で私にできるかなと思ったが、練習を重ねるうちにラダメスが入ってきて、やれそうだと思えてきた」「星組の初演と同じものを目指してもできないので、私たち宙組の個性だったり雰囲気だったりで独自のものを作り上げたい」と言っています。
繰り返しになりますが、大ヒットの初演を受けて大変なプレッシャーな中での再演だったと思いますが、また別の魅力を持った舞台を作り上げていました。だからどの場面でも二番煎じな印象は全くなし。ラダメスがまったく異なるキャラクタなのが逆によかったのでしょうね。
キムシンは、朝夏まなとのラダメスについて
「役柄のとらえ方が真っ直ぐなんですね。ラダメスという役をあーだこーだと触るのではなくて、ラダメスという役をドンと捉えて真っ直ぐに演じてくれているんですよ」と激賞。本当にそう思いました。
また朝夏まなとは脚本の弱点についてもよく考えていて、
「二人の出会いの場面がないので、お互いの気持ちを表現できないと最後の場面が軽くなるので、実咲凜音と相談しながら二人の関係がわかるようにやっている」と言っています。
その成果で、最後は感動の結末となって、観ている私もついウルっとなり、あわてて周りを見渡すと、あちこちで目頭を押さえる女性客の姿が。(笑)
フィナーレでも、脱水機並みの高速回転のリフトを披露してくれました。(笑) 頑張りすぎが心配になるほど。
今回のフィナーレ、この二人のデュエットもなかなかの見所。
次は実咲凜音です。
ようやく男トップと文字通り相思相愛な役がまわってきましたね。(笑)
前トップとの間に漂っていた微妙~な雰囲気がなくなって、対談番組でも安心して見られます。(殴)
で、今回のアイーダ、歌はもちろん演技でもよくやってました。初演と比べてもまったく遜色なし。でも逆に、男役の安蘭けいがアイーダの高い音程の歌をよく歌っていたものだと改めて感心しましたが。
実咲凜音は結構自信もあったようで、「安蘭さんのアイーダは男役なので強いイメージだが、私は娘役として女役を演じるけれど自分自身強いイメージがあるので、頑張ってやっていきたい」と言っています。
負けん気の強そうな彼女のキャラクタをよく生かした演出で、アイーダは適役でした。伸びのある声が耳に残ります。
で、アムネリスの伶美うらら。
今の宝塚でこれ以上の適役はないと思って楽しみでしたが、ちょっとガッカリなところも。
もちろん気品のある容姿はぴったり。檀れいとはまた別の美しい王女です。
でも強く演じようとしすぎたのか、あるいはそれが演出家の意図なのか、キンキンした感じが前に出てきて、ちょっと期待外れ。嫉妬に狂う高慢な王女という感じが強すぎて残念でした。かなりコワい顔です。(殴)
初演の檀れいは容姿も立居振る舞いも気品にあふれたアムネリスで、ラダメスをひそかに慕う女心もよく表現していて、観劇しながらちょっとアムネリスがかわいそうと思ったりしましたが、今回はそんな同情が入る余地がなかったですね。そして歌も、同じく歌が不得手だった檀れいの頑張りには届かなかった感じです。
「翼‥」で一気に贔屓モードだった私たちはちょっと残念でした。
ウバルドの真風涼帆は、初演の汐美真帆を髣髴とさせる演技で、ピッタリ。
冒頭の亡霊?のシーンはちょっと違うかなと思ったものの、進行につれてしっくり違和感がなくなりました。
ダンスと歌は文句なしでした。宙組に来てさっそくの大作で、しかも途中からの稽古参加でしたが、よくこなしていて感心しました。
ただこの人、根が善い人のようで、ウバルドにはちょっと黒さが足りない感じなので、エリザのルッキーニみたいな狂気が入ったほうがいいかなと思ったり。
出番の少ない役ですが、今回なにかと目についたのがラダメスの戦友ケペルの愛月ひかる。
初演では立樹遥が好演していましたが、今回のケペルも誠実そうな人柄の同僚役を、さわやかに演じていました。同じような大柄で頼もしそうです。応援したいです。そういえば「翼ある人びと」のリストもよかったですね。
専科のベテラン一樹千尋のアモナスロと、
箙かおるのファラオ。いずれもますますの円熟味でよかったです。
一樹千尋は初演でも老獪で狂気を装いながら陰謀をめぐらして、同時に娘思いの囚われの王を絶品の演技力で演じていましたが、今回もより味わい深いアモナスロを見せてくれました。まさに余人をもって代えがたいとはこのことですね。
箙かおるも初演以上に頑張っていました。今回は初演と違い、オリジナルの高い音階の楽譜に挑戦するなど、今なお新しいことに挑戦しようとする姿勢には頭が下がります。最近あまり姿を見ないので、もう枯れてしまったのでは(殴)と心配してましたが、初演以上の頑張りが見られて本当によかったです。
役が少ないので気の毒だったのが純矢ちとせ。アイーダをいびる場面ではパシっとひっぱたいていました。(笑)
でもパレードではエトワールだったので納得&満足。
あともうひとり歌ウマが印象的だったのが美風舞良。エチオピアを想う歌の場面で思わずヨメさんに「あれだれ?」と小声で聞いたほど。これまで知らなかったのが恥ずかしい歌でした。エチオピアの歌、初演で聞いてからずっと心に残っていましたが、本当にいい曲ですね。
あ、あと一人(殴)、組長さんもよかったです。嫌なネセルがぴったりでした。いえ、褒めてます。(笑)
というわけで、空前の大ヒット作品の再演ということで、期待と不安の入り混じった観劇でしたが、観て本当に良かったですね。トップコンビ以下の宙組メンバーと、専科のベテラン勢の力で、作品に新たな魅力が加わって、初演とは違ったいい舞台になっていました。
チケットさえあれば絶対リピートしたのにと、残念でした。
初演をご覧になった方も、初めての観劇の方も文句なしに楽しめるいい作品です。お勧めです。
↓オマケです。