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農業の現場の おはなしなどなど。

オレンジ色の昆虫〔にくいやつ〕。

2021-05-20 16:11:41 | Weblog
オレンジ色の昆虫〔にくいやつ〕。
次回の参考に2010年分の再録です。
 ↓

   この昆虫 をご存知ですか。

この虫の名は ヤシオオオサゾウムシ・・・その名の表すとおり
に ヤシの木に巣くう、オオきい、ゾウムシの仲間。ゾウムシと
いうから小さいのかと思いきや、意外や意外カブトムシのメスほ
どの大きさもあるでかいゾウムシです。さらに目立つのは その
色でしよう、あざやかなオレンジ色の体色には、しょうじき驚か
されてしまいます。

このインドが原産だという ヤシオオオサゾウムシ 。

本土では 1998年に宮崎県で発見されたのち、1999年に
岡山県・鹿児島県、2000年に福岡県、2003年に長崎県と
三重県、そして、2004年には熊本県と、寒くない冬がつづく
とともに生育区域を拡大。2005年には淡路市でも みつかっ
ているように、急速にその生息域をひろげているようです。

そんな外来の昆虫であるヤシオオオサゾウムシなのですが、問題
は この虫がヤシ、とくに フェニックス・カナリエンシス(Ph
oenixcanariensis)を食害してしまうこと。ご存じのように南国
の象徴とでもいうべきフェニックスは、高さ10メートル超、幹
の直径が1メートルくらいの大きさはザラといった風情の巨大な
ヤシ科の植物ですから

 体が大きいゾウムシだけに、その餌になる植物もでかくなる

といったところなのかもしれません、ね。

さて、そのヤシオオオサゾウムシのフェニックスに対する食性行
動はつぎのようなものとされています。

 フェニックスの樹冠部に飛来
 ↓
 樹冠部に卵を産み付ける
 ↓
 卵からかえった幼虫は樹冠の内部を食い尽くす
 ↓
 成虫となり次の樹へ移動/分布を広げる

といった具合です。巨大なフェニックスだとはいえ、樹冠の成
長点を狙われるのでは たまりません。やがてフェニックスの
樹冠部は空洞状態となり、生長が停止。新葉はもとより、虫の
侵入の前からあった葉も、やがては枯れて終いにはすべての葉
が落ちてしまうことになってしまいます。
さらにこのまま、虫に対する対策がなにも講じられずに放置さ
れるとすれば最終的には樹全体が枯死し、そしてなにせ巨大な
樹体であるフェニックスなのですから 万一倒伏したとしたら
たいへんな事態を引き起こしかねない・・ということで、安全
性を考えれば、切り倒さなければならなくなってしまいます。

ということで ヤシオオオサゾウムシ・・・じつに厄介な虫だ
と いえます。

そのような最悪の事態をさけるために、ここ宮崎県ではこの虫
の被害を回避するため 次のような対策をとってきました。い
わく・・・

 ● フェニックス上部に漁網を巻き付ける〔成虫飛来を阻止〕
 ● 殺虫剤を散布して成虫の根絶をはかる

といった対策です。だけれども、ここでなんといっても問題と
なるのは、ここでもフェニックスの樹体の巨大さです。そうな
んです、その樹体の高さゆえに、こういった処置を講ずるため
には 必然的にクレーン車が必要になる(経費がかかる)。こ
のことも被害が拡大する一因となっています。

ちなみに宮崎市の農業系の大学内キャンパスにある65本のフ
ェニックスに上記の対策を施したケースでは

 クレーン車3台をつかっての、まる10日もの作業

が必要となったとされているほど[クレーンをつかった単純な
剪定作業だけでも1本で4万円かかる・・といいますからいく
ら経費がかかったのかかんがえるだけでも怖ろしい話です
]。
もちろん昔から観光にちからをいれていて、フェニックスをた
くさん植栽している宮崎県ですから対策を講ずるのは無論ここ
だけではなく、平成11年度以降の5年間に、国・県・市町村
や民間のフェニック
ス ・3353本について 同予防対策が
講じられた
というのですから、すごい[ただでさえ貧乏県なのに]。

が 困ったことにこういった対策がとられても、ヤシオオオサ
ゾウムシを根絶するに至っていないというのですから、なんと
も悲しい話ではありませんか。

さあそんなヤシオオオサゾウムシ、温暖化の進行とともに分布
をひろげているのが現実なのですから、 そのうち近い将来に、
あなたのお住まいの近くで、地上1メートルほどのところを飛
んでいるオレンジ色の大きな甲虫が見られる日がくる・・・・
のかもしれません。つづく。


​​晴れ 気候の変化のバロメーターともなりえる生物分布の
  変化。南方系の外来種は、確実に北進中です。

  51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「 本当は危ない有機野菜


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