グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

焼き畑には呪文がよく似合う。

2013-08-27 21:22:40 | Weblog
焼き畑には呪文がよく似合う。

パチパチと 勢いよく燃え広がる山の斜面。

 火入れ.jpg

これは宮崎県椎葉村で毎年8月からおこなわれている焼き畑体験学
習の様子を取り上げた地方紙の紙面なんですよ。そんな焼き畑に関
するおはなしとなります。

 ↓

このやぼに火を入れもうす。
 へび、わくど・虫けらども、早々に立ち退きたまえ


これが九州山地の焼き畑農業における“入れ”の呪文の一節、
呪文の中の「やぼ」 はヤブ、 そして 「わくど」は、カエル
のことです。

東南アジアの山岳地帯から日本、北米・南米そしてヨーロッパに
おいておこなわれてきた「焼畑農業」には、複雑で高度な農業技
術やそれに伴う文化が存在していた
ことが、次第にあきらかにさ
れつつあります。

たとえば日本の照葉樹林文化における、焼き畑耕作の順序はつぎ
のようになります。

 指標植物の存在に基づいての森の1区画が選ばれる
 ↓
 区画内の草が刈り払われる
 ↓
 区画内の樹木を、胸高ぐらいの高さに切り揃える
 ↓
 一定期間放置し、木・枝・下草を乾かす
 ↓
 火入れ


といった順序がとられます。

そうなんです、「焼き畑」という言葉のイメージから、山全体を
焼き尽くすかのような印象を持ってしまいがちになりますが、実
際の日本古来の焼畑農業は、「奈良の若草山」や「阿蘇の野焼き
といったたたずまいなんですね。

その焼き具合を正確に表現すれば、むしろ「数年のサイクルを
持つ野焼き」 と言い換えたほうがよさそう
です。
そう、平地の水田地帯で、雑草予防や病害虫の発生もおさえると
いった目的で、現代の日本でも、毎年春先になると日常的に行な
われている、あの畔焼き〔あぜ焼き〕。

さらにいえば、火入れの前に耕作可能かどうかの判定になる指標
植物さえも用いている
のですから、“悠久の歴史と文化の伴った
焼畑農法”は、野焼きよりもやさしいとかんがえてもよさそうなん
ですよ。

そう思わされるのは、なんといってもあの呪文の存在にもあります。

〔平地の田のあぜの野焼きをするのに〕現代の農業においては、カ
エルや虫たちに安全に逃げるようにと呼びかける言葉は発しません
ものね/笑。

つづく。


◎ 宮崎県椎葉村で毎年おこなわれている焼き畑体験学習。昨年
  は40アールの斜面で火入れがおこなわれ、すぐにソバの種が
  蒔かれましたよ。このソバの収穫は、10月下旬におこなわれ
  11月後半の収穫祭にて振る舞われました。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染