カッキーYAMA   akihiko tange

手始めに、日常的なことを気の向いたときに載せていくつもり。

伊根の街・2008

2010-03-06 | 国内旅行











 伊根の街は、「舟屋」の街である。知っている人は知っていて、遠くからでもその風景を楽しみに来る。舟屋というのは海に面して家を建て、1Fは海に浸かり海に向かって開口しており、漁の船が直接そこへ収納される。「船のガレージ」ともいうべきものである。漁の道具の倉庫のようになっているところもあったように思う。1戸だけならどうということ無いのだが、これが海岸にそって、100軒、200軒と連続して建っているから壮観である。「壮観」 まさにこれがピッタリ。
 私はバスを降りてこの景色を海から眺めるために、観光船に乗った。観光船というのはどこへ行ってもカモメだの、何かの鳥がついて来て群がるもののようである。餌をやるからだろう。面白いのでそれらを眺めるうち、直ぐに船は沖へ出、舟屋の壮観な眺めを観ることとなった。遠目に見ると舟屋はこまごまと行儀よくきれいに連続していて、かわいく見えるのだった。近くで見るとそうでもないけれど。漁師の家だから、細かいところはあまり気にしていないようでもあった。網などが掛けて干してあったり、道具が置かれていたりで、やはり漁のための作業の場であったり倉庫であったり、なのである。少し朽ちて傾き、大丈夫なのかな、などというのもあった。
 観光船を降りて街の中心の通りまで少し歩いた。帰りのバスの時間までまだだいぶ間があった。とはいえバスは本数が少なく、丹後半島のその先へと1周するには、もう一日必要な感じだった。車なら可能だったろう。
 歩いていると、中学の低学年くらいだろうか、少年たちが2,3人自転車に乗って通りかかったので道を訊いた。その時少し話した。
「海の水がかぶって家が壊れることは無いの?」
何か間の抜けた質問であった。壊れるならかなり危険だからそんなところに家は建てないだろう。普通はそう想像する。
「うーん、そんなことは無いです。」
かれら少年は自分が生まれてからの12,3年間、未だかつてそのようなことは見たことが無いと断言したのであった。
「ふーん、台風の時は? やっぱり波が高くならない? あんなに海面ぎりぎりだと直ぐ水をかぶってしまうと思うけど」
「入り江になっているし、前に島があるから(青島など)波はそんなに高くならないです」
「そっか」
 私は急につまらなくなった。波がざぶざぶとかかると何時壊れるかと迫力も増すだろうと想像していたのである。しかし半分はそうではないのだろうと思っていて、そちらが正解のようであった。やはり安全な方がいいに決まっている。
「さよなら」
「それじゃ、bye-bie」
そこで別れた。ありがとう、やはり住んでいる人に聞くと実感が伝わってくる。伊根の街は、大きく言うと日本海の若狭湾に面している。細かく言うとその若狭湾の波から守られるようにして、伊根湾に面している。伊根湾は波が静かだそうだ。潮の満ち干はどんな感じなのだろう。まだしつこくもそんな事を思ったのであった。
 街を歩いた。疲れたので、通り全体の半分ほどを観ただけ。もういいかと思った丁度そこに酒屋があったのである。「向井酒造」といった。入口脇の木製ベンチを見た瞬間、そこに座ってお酒を飲む自分を想像し、直ぐに店に入り地酒のワンカップを買い求めたのである。そしてベンチで飲んだのである。美味かった。単純この上ない。店には若い女性が店番をしていて、あれこれ話した。住んでいるところなど、車で通っていることなど。こちらは京都観光で1日だけ脚を伸ばしたことなど、一度は訪れたかった事など、バスで来るのは大変だということなど、疲れたことなど、こういう時はお酒を飲みたくなるということなどなど。
「造り酒屋なわけだけど、肝心の水はどうしているのですか?」
「裏の山で取れます」
瀬戸内海の島などは昔、水と言えば塩分を含んだものしか取れなかったらしいし、何かそんな事を思ったのだが、良い水が山で取れるそうで、なるほどな、それならいいなと思った。お酒を造っているところなども少しだけ覗かせてもらった。
 食べるものは魚など美味しい店が近くにある、とこれも年配のおばさんが教えてくれたし、民宿もあるから泊まっていけばと熱心に言ってもくれたのだが、その日の夜までには京都市内までは帰っておきたかったので、伊根の街とはそこで別れることにした。お酒が入って丁度よい気分になった。目が寄り目になったようだった。
 車ならもう少しゆっくりと走りまわれただろうし、道の駅へ行ったり、あるいは釣りなどもできただろうと思う。夏は海の遊びがいろいろできそうだ。温泉もあるようだし、丹後半島はいろいろ楽しめると思った。伊根の街は名残惜しかったがバスに乗り、列車で京都へ向かった。










                                           
                                            
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