明日(20日)の「海道東征」本番を控え、昨日、今日とオーケストラ合わせのため大阪に連泊。ひとところに滞在するということは、日頃、東京~富士~長岡~大阪~東京~倉敷・・などとムチャな移動のつづく日常の中にあって、まるでオアシス。新幹線に乗らずに過ごすことが、こんなにも心身に楽なのかとホッとしているところ。
今日も夕刻の稽古開始まで時間があるということで、思い立って奈良・佐保路の秋篠寺を訪ねることにした。お目当ては、もちろん、「衆生の吉祥と芸能を主宰者する天女」であるところの伎芸天である。
音大受験の折にお世話になったK先生に「是非とも見てきなさい」と言われ、はじめてこの寺を訪れたのは、大学在学中のこと。朝比奈先生&大阪フィルのコンサート鑑賞と絡めて予定を組んだ記憶がある。聴いたのは、ザ・シンフォニーホールにおけるブラームスの交響曲第1番&ピアノ協奏曲第1番という魅惑のプログラムで、ソリストは内田光子であった。
その後何度か当寺を訪れたものの、今回の訪問はなんと25年ぶり。歳を重ねた分、感銘の質や度合いは違っていた。境内の静かな佇まい、一切の無駄のない潔さなどに胸打たれる、などということは、かつてにはなかったことである。
それにしても、伎芸天のたおやかな美しさは言葉にならない。その優しいお顔立ち、そして、色香すら漂う腰部の曲線美! その下にしばし佇み、「マタイ受難曲」の成功をお祈りした次第(海道東征でなくてスミマセン・笑)。
音楽家としての初心に立ち帰るためにも、度々訪れることとしよう。