福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

フリッツ・ヴェルナーの「マタイ受難曲」 ~ 高貴な日常の祈り

2015-04-17 09:43:29 | レコード、オーディオ

 今年は、来年3月1日の聖トーマス教会公演を目指しての「マタイ受難曲」の年、ということで、遂に手に入れてしまった。

名盤、名録音の誉れ高いフリッツ・ヴェルナー指揮の仏エラート・オリジナル・アナログ盤(4枚組)である。

かつて、モノーラル・プレスで所有していたが、こちらは音質、盤質共にいまひとつで手放し、ステレオでは、米ウエストミンスター・プレス、およびCDに甘んじていたものである。

1958年の録音と言うことで、リヒター旧盤と較べられることの多い演奏だが、わたしの好みは断然ヴェルナーなのである。

なんでだろうな・・・。

リヒターのロマン的なアプローチが感覚的に自分と合わないとしか言いようがない。

その点、ヴェルナーの音楽は、とても身近で、温かく、深く、心を慰め、癒やしてくれるのである。

録音がやけに美しいと思って調べてみたら、エンジニアは名匠シャルラン! 迸る音の鮮度、音場の深さと広がり、各セクション間のバランス感覚、シャルランによる音づくりの魔術はCDで味わえるものではないことを痛感。

コーラスは、近年の精度の高さを望むべくはないのだけど、その大らかな歌声が日常の祈りを思わせて感動を呼ぶ。これはアマチュア・コーラスを指導するわたしにひとつの指針となる。 それは、ひとりとして己が声を誇示することのない独唱陣にも言えることで、そのバッハへの飾りなき真っ直ぐな献身が我が胸を打つ。 モダン楽器による「マタイ」では、仰ぎ見るように巨大で孤高のクレンペラー盤とともに、一生の宝となる演奏・録音であることは間違いない。

ヴァイオリンにバルヒェット、フルートに、ランパル&ラリュー、オーボエ(コール・アングレ)にピエルロ、シャンボン、オルガンにアランという錚々たる顔ぶれが、この演奏に花を添えるとともに、根幹を支えている。



フリッツ・ヴェルナー指揮  

プフォルツハイム室内管弦楽団 ハイルブロン・ハインリヒ・シュッツ合唱団、ハイルブロン・ロベルト・マイヤー少年合唱団

ヘルムート・クレプス(福音史家、Ten)、フランツ・ケルヒ(イエス、B)、アグネス・ギーベル(S)
レナーテ・ギュンター(A)、ヘルマン・ヴェルダーマン(B)

録音: 1958年10月、ヴァインスベルク、プロテスタント教会

France Erato STE 50006-9 (4LP)

 


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