今回のコンサート成功への最大の立役者は相原千興さん率いる東京フォルトゥーナ室内管弦楽団である。
けっして器用とは言えないわたしの指揮テクニックやレッスン運びに我慢強く耐え、本番のみならず、練習の時から全力で演奏してくださった。
ただただ、感謝しかない。
たとえば、池田卓夫さんがブログ「いけたく本舗」に、
「とりわけ(ベートーヴェン7番の)第3楽章に2度現れるトリオのクライマックスで金管がファンファーレのような旋律を奏で、打楽器が続く場面でテンポを一瞬落とし(ルバート)、壮大にダメ押し(スフォルツァンド)する解釈! もし自分が指揮者なら『絶対にこうしたい』と長く思い続け、夢にまでみた通りの呼吸で実現する光景を目の当たりにした」
https://www.iketakuhonpo.com/post/ハイドンからショスタコーヴィチまで〜交響曲史をn響、東響、福島で早わかり
と書いてくださった場面。ここで、わたしは
「文学的な表現で恐縮ながら、ここで皆さんで巨大な音の柱を打ち立ててください」
とお願いしたところ、皆さん嬉々として神々しいまで音の柱を打ち立てようと挑戦してくださった。
まさに感動的瞬間。この様子を目の当たりにできただけで、今回のコンサートを企画した意味があった、と思ったほどである。
ワオンレコードさんから音源が届かないので、この部分を皆さんにご披露できないのは残念。いずれ、機会をつくるとしよう。
「フィガロ」序曲 ~ 「ジュピター」 ~ ベートーヴェン「7番」 というプログラムは、特に管楽器の楽員にとってハードなものだった。
また、弦楽器は6-6-4-3-2という小編成なことだけでも過酷なのに、わたしの要求する音楽は10型とか12型向けなものだから、尚更大変である。
長谷川京介さんが「ベイのコンサート日記」に書いてくださったように、この少人数とは思えない豊穣な響きを奏でてくれたのは偉大である。
「福島の指揮もオーケストラも、第4楽章に至って、さらにエネルギーを加えていくのには驚いた。特に展開部から再現部、そして終結部にかけての高揚感が素晴らしく、コーダでは2台とは思えないコントラバスの厚みのあるバッソオスティナートが充実しており、ヴァイオリンの輝きも増していく」
https://ameblo.jp/baybay22/image-12669172195-14927981069.html
終演後、楽員の皆さんからは「辛かったけど楽しかった」「死にながら笑ってます」「辛いのに終わって欲しくなかった」「久しぶりに汗だくになるまで弾いた」などと、
いくばくかの恨みの込められた讃辞を頂戴した。まことに名誉なことである。
このような素敵な仲間を集めることのできたのも、ひとえにコンサートマスター相原千興さんのご人徳である。
相原さん自身、コンマスという重責の他、パート譜管理、マネージメント、ティンパニの運搬、舞台設営から終演後の片付けまで、すべてを担ってくれて、無力なわたしはどれほど助けられたことか。今後は彼に甘えなくても良いシステムを作ってゆかねばならないし、このご恩は忘れてはならないと思う。
東京フォルトゥーナ室内管弦楽団との凄絶なベートーヴェン「7番」を終えて芽生えてきたのが、ベートーヴェン・ツィクルスへの夢である。
今回のように個人の財力だけで挙行するには限界がある。
資金面での新たなアプローチが求められることになるが、なんとか実現させたい。
たとえ楽員の皆さんにどんなに恨まれようとも!