コルボの1時間後には、アンヌ・ケフェレック独奏のモーツァルト ピアノ協奏曲第9番「ジュノーム」。
若い頃の作品の中では、抜群に充実した作品で、ハスキル&シューリヒトのライヴ録音を愛聴している。
オーケストラは、ジョシュア・タン指揮の横浜シンフォニエッタ。
初体験の横浜シンフォニエッタは、とても優秀だと感じたけれど、シンガポール出身という指揮のタンがいただけない。
ケフェレックがモーツァルトの深い憂愁を奏でるとき、タンが引き出すオーケストラは、ただただ元気な音。しかも、行間というものがない。
ケフェレックの音楽が深いだけに、なんだか学生指揮者のような底の浅さが耳について、集中できない。
もうひとつ、タンの指揮ぶりには、身体を上下させる変な癖があって、観ていると悪酔いしてしまう。
というワケで、ケフェレックの芸術を邪魔者なしに堪能できたのは、各楽章のカデンツァ(特に第2楽章が絶品)とアンコールのヘンデル「メヌエット ト短調」(クラヴィーア組曲 第2巻 第1番 変ロ長調 HWV434 より)という皮肉。
しかし、このヘンデルは、時間が止まるのではないか? と思わせるほどの名演。この1曲だけで、凡百のリサイタル一夜を上回る重みがあった。
さて、幸いなことに、ケフェレックについては、8日の王子ホール公演のチケットを入手済みにつき、改めて彼女の至芸を堪能しよう。