明楽園の木を切る
屋根に光が当たるように
年輪は56
木がたおれる
すっくとつきたっていた空から
みしみしと遠ざかりながら
木がたおれる
56年の年月が寝転んだ
空の記憶を水平に保ちながら
根っこと離れ離れになった木がたおれる
切れ切れの線になった年輪が筋を通すように
空にけば立つ
切り株は人っ子一人座れる
ソーシャルディスタンスなど
はなっからどうでもいいように
そこにあった
年輪から滲んできたみずを吸い込むように
切り株に座った
木は
この杉の木は今まで生きて
水を隅々まで
青臭い緑の葉の先まで
へ巡らそうとしていたのだと
杉皮はカサブタのように枯れ果てようとも
一皮むけばみずを含んだつるりとした白い木肌が
ライチのようにつるりと顔を出す
生きるも死ぬも皮一枚
皮は死衣装
皮を剥がれた木肌は裸になっても生きている
空を仰ぎみて
56年の高みから
56年の重みへと変わる瞬間
みしみしと音を立てながら
いくつもの枝が年老いた手を振るように
木がたおれる
屋根に光が当たるように
年輪は56
木がたおれる
すっくとつきたっていた空から
みしみしと遠ざかりながら
木がたおれる
56年の年月が寝転んだ
空の記憶を水平に保ちながら
根っこと離れ離れになった木がたおれる
切れ切れの線になった年輪が筋を通すように
空にけば立つ
切り株は人っ子一人座れる
ソーシャルディスタンスなど
はなっからどうでもいいように
そこにあった
年輪から滲んできたみずを吸い込むように
切り株に座った
木は
この杉の木は今まで生きて
水を隅々まで
青臭い緑の葉の先まで
へ巡らそうとしていたのだと
杉皮はカサブタのように枯れ果てようとも
一皮むけばみずを含んだつるりとした白い木肌が
ライチのようにつるりと顔を出す
生きるも死ぬも皮一枚
皮は死衣装
皮を剥がれた木肌は裸になっても生きている
空を仰ぎみて
56年の高みから
56年の重みへと変わる瞬間
みしみしと音を立てながら
いくつもの枝が年老いた手を振るように
木がたおれる