日米が共同開発した全球降水観測(GPM)衛星を載せたH-2Aロケット23号機が、日本時間28日午前3時37分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。GPM衛星は約15分後に衛星軌道に乗り、打ち上げは成功した。
日本メディアが「ロケットの打ち上げ成功」に軸足を置いた報道に傾く中、海外メディアも関連記事を掲載。GPM衛星が行う降水観測など、打ち上げられた衛星の働きに期待を寄せる報道が目立っている。
【日米の装置が衛星から地球の降雨・降雪を観測】
GPM衛星は、米航空宇宙局(NASA)のゴダード宇宙センターで設計・製造された。日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した高性能レーダー(DPR)と、NASAが開発したマイクロ波撮像装置(GMI)を搭載し、既に打ち上げられている各国の気象衛星と連携して全地球的な降雨・降雪の観測を行う。
JAXAのDPRは、地球全体をスキャンし、降雨・降雪を3D映像で視覚化したデータを提供する。これまで観測できなかった微量の雨や雪の分析もできるという。一方、NASAのGMIは、雲の中にためられた雨量と、地表に降り注いでいる雨量を積算する。GPM衛星は、これらのデータとともに、他のアメリカ、日本、インド、ヨーロッパの気象衛星とリンクし、3時間ごとの詳細な気象データを地上に送る予定だ。
宇宙関連ニュース専門サイト『SPACE.COM』のインタビューに答えたNASAの科学者は、人間の健康診断に例えて解説する。「JAXAのレーダーはCTスキャン、NASAのGMIは雲の中を見通すX線のようなものです。医者がこれらを使って人体に起きていることを判断するように、我々はレーダーとラジオメーターを使って雲の中を観測するのです」。
【英紙は香川大の“宇宙掃除機”に着目】
一方、英紙ガーディアンは、メインのDPRとGMIとともに衛星に搭載された香川大学の“宇宙掃除機”に着目する記事を掲載した。
これは、Space Tethered Autonomous Robotic Satellite-2 (Stars-2)という装置で、一対の小型の“親子衛星”をテザーと呼ばれる金属製の引き綱でつなぎ、その発生する電力によって衛星軌道上に浮遊するデブリ(宇宙塵)を掃除するという。香川大学の研究グループがJAXAの協力で開発。漁網メーカーの日東製網がテザーを提供した。
“掃除”のプロセスはこうだ。テザーは、最大伸長300mの金属ロープのようなもので、直径0.1mm以下のステンレスとアルミの繊維を組み合わせてできている。これを親子衛星の間で伸ばした状態で地球の磁場を通過すると、テザー全体に電力が発生。その影響で軌道上を高速で周回するデブリのスピードが落ち、やがて大気圏内に落下して燃え尽きる。「これで掃除は完了だ」とガーディアンは伝える。
同紙は「現役の人口衛星がデブリに衝突する危険は年々高まっている」と懸念を示す。NASAによると、地表から800~1,400kmの宙域には、ソフトボール大以上のデブリが2万個程度散らばっている。それ以下の大きさのものを含めると何千万個にもなるという。
Stars-2は、衛星軌道上で実験を重ね、2019年にシステムを稼働させる計画だという。
【高い打ち上げ成功率を称える】
種子島宇宙センターで行われた打ち上げは、キャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使も見守る中で行われた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「過去の失敗例は1回だけだ」と日本のロケット打ち上げの高い成功率を称えた。
同紙はまた、「他国のロケットに自らの衛星を載せ、さらにそれをアメリカの外から打ち上げる。これはNASAにとって、非常にユニークな経験だ」という、打ち上げ現場に駆けつけたNASAのエンジニアの感想を掲載した。
『SPACE.COM』によると、今回のプロジェクトにかかった費用は合計約12億ドル。アメリカが衛星本体、地上システム、電子機器に9億3300万ドル、日本が高性能レーダーとH-2Aに2億2600万ドルを投じたという。
下町ロケット (小学館文庫)
日本メディアが「ロケットの打ち上げ成功」に軸足を置いた報道に傾く中、海外メディアも関連記事を掲載。GPM衛星が行う降水観測など、打ち上げられた衛星の働きに期待を寄せる報道が目立っている。
【日米の装置が衛星から地球の降雨・降雪を観測】
GPM衛星は、米航空宇宙局(NASA)のゴダード宇宙センターで設計・製造された。日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した高性能レーダー(DPR)と、NASAが開発したマイクロ波撮像装置(GMI)を搭載し、既に打ち上げられている各国の気象衛星と連携して全地球的な降雨・降雪の観測を行う。
JAXAのDPRは、地球全体をスキャンし、降雨・降雪を3D映像で視覚化したデータを提供する。これまで観測できなかった微量の雨や雪の分析もできるという。一方、NASAのGMIは、雲の中にためられた雨量と、地表に降り注いでいる雨量を積算する。GPM衛星は、これらのデータとともに、他のアメリカ、日本、インド、ヨーロッパの気象衛星とリンクし、3時間ごとの詳細な気象データを地上に送る予定だ。
宇宙関連ニュース専門サイト『SPACE.COM』のインタビューに答えたNASAの科学者は、人間の健康診断に例えて解説する。「JAXAのレーダーはCTスキャン、NASAのGMIは雲の中を見通すX線のようなものです。医者がこれらを使って人体に起きていることを判断するように、我々はレーダーとラジオメーターを使って雲の中を観測するのです」。
【英紙は香川大の“宇宙掃除機”に着目】
一方、英紙ガーディアンは、メインのDPRとGMIとともに衛星に搭載された香川大学の“宇宙掃除機”に着目する記事を掲載した。
これは、Space Tethered Autonomous Robotic Satellite-2 (Stars-2)という装置で、一対の小型の“親子衛星”をテザーと呼ばれる金属製の引き綱でつなぎ、その発生する電力によって衛星軌道上に浮遊するデブリ(宇宙塵)を掃除するという。香川大学の研究グループがJAXAの協力で開発。漁網メーカーの日東製網がテザーを提供した。
“掃除”のプロセスはこうだ。テザーは、最大伸長300mの金属ロープのようなもので、直径0.1mm以下のステンレスとアルミの繊維を組み合わせてできている。これを親子衛星の間で伸ばした状態で地球の磁場を通過すると、テザー全体に電力が発生。その影響で軌道上を高速で周回するデブリのスピードが落ち、やがて大気圏内に落下して燃え尽きる。「これで掃除は完了だ」とガーディアンは伝える。
同紙は「現役の人口衛星がデブリに衝突する危険は年々高まっている」と懸念を示す。NASAによると、地表から800~1,400kmの宙域には、ソフトボール大以上のデブリが2万個程度散らばっている。それ以下の大きさのものを含めると何千万個にもなるという。
Stars-2は、衛星軌道上で実験を重ね、2019年にシステムを稼働させる計画だという。
【高い打ち上げ成功率を称える】
種子島宇宙センターで行われた打ち上げは、キャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使も見守る中で行われた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「過去の失敗例は1回だけだ」と日本のロケット打ち上げの高い成功率を称えた。
同紙はまた、「他国のロケットに自らの衛星を載せ、さらにそれをアメリカの外から打ち上げる。これはNASAにとって、非常にユニークな経験だ」という、打ち上げ現場に駆けつけたNASAのエンジニアの感想を掲載した。
『SPACE.COM』によると、今回のプロジェクトにかかった費用は合計約12億ドル。アメリカが衛星本体、地上システム、電子機器に9億3300万ドル、日本が高性能レーダーとH-2Aに2億2600万ドルを投じたという。
下町ロケット (小学館文庫)