警察トップを狙った95年の警察庁長官狙撃事件は30日午前0時、殺人未遂罪の公訴時効(15年)が成立した。オウム真理教への強制捜査の真っ最中に、自宅マンション前で3発の凶弾を受け、3度心停止しながら生きながらえた国松孝次元長官(72)は29日、毎日新聞の単独取材に応じ、元捜査指揮官として警視庁の捜査を「不合格の捜査」と評し、自ら油断があったと反省した。
--時効はテロに対する警察の敗北だ。
◆私も警察も不本意なことだ。ただ、あの事件がきっかけで組織テロに対する警察の対応力は増強された。負けたかと言われればそうではない。命がつながったことで完全な敗北ではない。
--しかし、犯人を特定できなかった。
◆起訴に足りる十分な証拠を集めることができなかったことは、やはり「不合格」の捜査だった。これから反省、検証してほしい。
--拳銃によるテロを想定していたか。
◆銃器テロが警察庁長官に向くことは想定しておらず、不覚だった。油断のある警備をしていたと認めなければいけないが、何より自分が油断していた。
--事件が迷宮入りすることへの「被害者」としての思いは。
◆時効は残念だが、苦労した捜査員にご苦労様と言いたい。
--同じ年の7月、女子高生ら3人が射殺された東京都八王子市のスーパー強盗殺人事件の解決を優先するよう指示したのでは。
◆そういうことはないが、八王子の事件は処刑されるがごとく殺された残酷な事件だから、未解決では申し訳ない。今、殺人の時効を撤廃する動きがあるので、早く制度を変更してもらいたい。私の事件は無理だが、八王子の事件の時効前に時効を撤廃し、粘り腰で捜査する仕組みに変えてほしい。
--狙撃事件の犯人は誰だと思うか。
◆「分かりません」と言うしかない。
--04年にオウム真理教の元信者4人を逮捕(その後、容疑不十分で不起訴)した際、「オウムの関与が物証で明らかになった」と話したが。
◆成果はあったと今でも思っているが、東京地検を納得させる証拠が集まらなかった。
--狙撃事件は、自分の中で終わったか。
◆被害者にとって絶対に忘れられない。私の場合痛恨というか、不覚をとったという恥ずかしい思いとともに忘れることはできない。
--今後の活動は。
◆生きたことは、私にとって付録みたいなもの。助けてくれた病院の先生方と、ヘリコプター救急の全国的な普及に努力していく。
【聞き手・大坪信剛】~~~~~~~~
なぜ、ご自分の捜査は無理というなのか。が分からない。
たとえ危険があろうとも、今後とも全力で突き詰めるべきものであると思われる。