今日も懲りずに本を探しに行った。あそこならばと頼って行った先の古本屋さんは潰れていた。一度しか行ったことは無かったけれど、品揃えは良かったので当てにしていたのに。
帰りに別の店へ寄ってみても、やはり『ガスパール』は無かった。代わりにサロートの『不信の時代』と田村毅・塩川徹也編『フランス文学史』を見つけた。
サロートの小説は読んでみたいけれど、批評はどうなんだろうと思って、その場では買うのを控えた。今思い返すと、彼女の本で絶版になっていないのは『生と死の間』だけだろうから、手に入るうちに買ってもよかったのかもしれない。多分、買いたいと思って古書店街に探しに行くと何倍もの金額を払わないといけないだろうし。
『文学史』は1800円だった。この値段も無職の身では安くないけれど、内容を見て買う気になった。作家の名前・生没年・主要作品と作風といった要点だけ押さえた、いかにも学生向けの教科書という書き口ではなく、社会背景や作家同士の影響関係にも目が配られていて、一般の読者でも楽しめそうだ。
欲しかった本が手に入って気分が良かったので、一度帰って来た後、近所のハナタレねこに食べ物を与えに外へ出た。
ハナタレに会うには、あたりが暗くなりかけた頃、自宅から歩いてすぐの居酒屋まで行けばいい。古びたアパートの一角を改築して営業しているパブの入り口横、二階に上る階段の下にうずくまり、彼はハナをたらしている。
わたしの事を覚えているのか、それとも手にもっている缶詰が気になったのか、おいでと声をかける前から腰を上げてこちらに寄ってきた。缶のふたを開けてパテ状の食べ物を割り箸でつついて取り出し、ハナタレの鼻先に持っていった。少しにおいをかいでから、力をいれて箸ごと齧ってきた。冬の頃より元気そうだ。
しばらく食べさせていると、店から女性が出てきて、ねこに食べ物を与えているわたしを見た。こんばんはと声をかけると、女性はねことわたしに向かって「よかったね、ボス」と言った。そうか、彼女の中ではボスなんだ。
ハナタレ=ボスを話題に少し話して見ると、彼女はこの老猫を可愛がっているのだけれど、ねこに餌を与えるとは何事だと通りがけに怒鳴る人が近所にいたり、ある日などはハナタレの首に針金が巻きつけられ怪我をしていて、おまけにびっこまで引いていたそうだ。彼の首の一部は体毛が無く、最近出来たと思しき怪我がある理由がわかった。
庭先にねこがフンをして困っていたり、飼っている鳥や魚を食べられたりとか、何か恨みがあってのことなのかどうかは分からないけれど、無抵抗の小動物に直接手を下して虐待する人間が近くに住んでいるのだと思うと、なんともやるせなくなった。
帰りに別の店へ寄ってみても、やはり『ガスパール』は無かった。代わりにサロートの『不信の時代』と田村毅・塩川徹也編『フランス文学史』を見つけた。
サロートの小説は読んでみたいけれど、批評はどうなんだろうと思って、その場では買うのを控えた。今思い返すと、彼女の本で絶版になっていないのは『生と死の間』だけだろうから、手に入るうちに買ってもよかったのかもしれない。多分、買いたいと思って古書店街に探しに行くと何倍もの金額を払わないといけないだろうし。
『文学史』は1800円だった。この値段も無職の身では安くないけれど、内容を見て買う気になった。作家の名前・生没年・主要作品と作風といった要点だけ押さえた、いかにも学生向けの教科書という書き口ではなく、社会背景や作家同士の影響関係にも目が配られていて、一般の読者でも楽しめそうだ。
欲しかった本が手に入って気分が良かったので、一度帰って来た後、近所のハナタレねこに食べ物を与えに外へ出た。
ハナタレに会うには、あたりが暗くなりかけた頃、自宅から歩いてすぐの居酒屋まで行けばいい。古びたアパートの一角を改築して営業しているパブの入り口横、二階に上る階段の下にうずくまり、彼はハナをたらしている。
わたしの事を覚えているのか、それとも手にもっている缶詰が気になったのか、おいでと声をかける前から腰を上げてこちらに寄ってきた。缶のふたを開けてパテ状の食べ物を割り箸でつついて取り出し、ハナタレの鼻先に持っていった。少しにおいをかいでから、力をいれて箸ごと齧ってきた。冬の頃より元気そうだ。
しばらく食べさせていると、店から女性が出てきて、ねこに食べ物を与えているわたしを見た。こんばんはと声をかけると、女性はねことわたしに向かって「よかったね、ボス」と言った。そうか、彼女の中ではボスなんだ。
ハナタレ=ボスを話題に少し話して見ると、彼女はこの老猫を可愛がっているのだけれど、ねこに餌を与えるとは何事だと通りがけに怒鳴る人が近所にいたり、ある日などはハナタレの首に針金が巻きつけられ怪我をしていて、おまけにびっこまで引いていたそうだ。彼の首の一部は体毛が無く、最近出来たと思しき怪我がある理由がわかった。
庭先にねこがフンをして困っていたり、飼っている鳥や魚を食べられたりとか、何か恨みがあってのことなのかどうかは分からないけれど、無抵抗の小動物に直接手を下して虐待する人間が近くに住んでいるのだと思うと、なんともやるせなくなった。