アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

リッツィの描く灼熱のイタリアン

2019-05-21 19:00:00 | 音楽/芸術

新日本フィルの定演ルビー公演に出向いてきた。

音楽監督である上岡敏之氏の招へいする指揮者、演奏家たちは中々個性的な音楽家ぞろいであり、いつもどんな演奏になるのか楽しみでならないが、今回もいつもの新日本フィルハーモニーから、今までには聴いたことのないような輝かしい音色の世界を満喫してきた。プログラムは、決してイタリア音楽ではないが、ローマを題材とした楽曲が3曲並び、演奏会の全体の印象はとても派手なきらびやかなものとなった。ちょうど先週横浜で聴いた上岡氏のワーグナーとは、まるで逆をいった内容で、内に秘める想いというよりは、即物的で外見重視の楽曲と演奏だったように思う。

オペラ指揮者であるリッツィの音楽は、やはり特有の細部に渡る拘りをも感じたが、全体的には明るく鳴らすタイプの指揮者であり、オーケストラもここぞとばかりに開放的な音色を聴かせていた。特に低音部の重く深い響きは、普段の新日本フィルでは聴けない部類の音量だろう。それが最も顕著だったのはレスピーギだが、だからといって音楽が頂点に達しても、爆音のごとく迫り狂うのではなく、そんな場面でも、全体のバランス感覚が保たれているところには舌を巻いた。いったいどれだけのリハーサルをすれば、ここまでの響きを生むことができるのだろうか・・・

オケは今回も好調で、歌に満ち溢れた木管楽器、ここぞの金管にはどこか余裕が感じられ頼もしい。大勢の打楽器群も素晴らしく楽曲を大いに引き立てていたが、中でもティンパニ奏者の川瀬氏は並外れたリズム感で我々に主張し、往年のミュンヘン・フィルのザードロ氏を彷彿とさせとても印象的だった。そして土台となる弦楽器群は、今回も圧倒的な熱演で聴衆を魅了していたが、あれだけの高速で演奏していても、音符の粒がはっきり見えており、しかもアコーギクやデュナーミクを伴った演奏は、ここでの幼稚な文章ではとても表現できない。息が止まるほどの緊張と集中は、オケ全体からあふれ出し、その時点でアントンKは飲み込まれていたのだった。

日頃偏りがちのレパートリーを鑑賞しているアントンKだが、今回のようなプログラムを聴くのは初めてで、普段とは違う興奮を味わった気がしている。それぞれに共通の音色を感じ、晴れ晴れとした気持ちで会場を後に出来た演奏会だった。

新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会ルビー

ベルリオーズ   序曲「ローマの謝肉祭」 OP9

レスピーギ    交響詩「ローマの祭り」 P157

R.シュトラウス  交響的幻想曲「イタリアより」 OP16.Trv147

指揮    カルロ・リッツィ

コンマス  崔 文洙

2019年5月18日 すみだトリフォニーホール


岩手山をバックに・・

2019-05-20 20:00:00 | 鉄道写真(EL)

鉄道写真を撮影していて、今まで全国駆け巡ってきたが、日本の美しい原風景に出会うことがよくあった。それは美しい海岸線だったり、名山と言われる山脈だったりと、その土地で自身にこみ上げてくるものが違う。日本のこんなに美しい風景が大好きな鉄道車両をさらに魅力的に見せてくれるような気がしてならなかったのだ。

学生時代の一つの目標だった、EF5861と富士山とのコラボレーションのように、自分の気に入った風景の中に大好きな鉄道車両を置きたいと、それ以来考えることが増えていった。

岩手県の名山と言える岩手山。青森県にもやはり名山として名高い岩木山がそびえ立っているが、東北本線や花輪線の鉄道とともに、岩手山とのコラボを狙ったことがある、盛岡を出て、東北線最大の難所十三本木峠へといよいよ向かう助走区間。この日はまさしく五月晴れに恵まれ、早朝から線路端に繰り出したことが思い出される。この時の本命は、北東北に追いやられた583系の臨時「はつかり」号だったが、合間にやってくるED75ももちろんターゲットになった。掲載写真は、ナナゴ重連で峠を目指すフレートライナー。先頭が更新機でやってきて、憮然としたことが昨日のことのよう。今となってはよい思い出に変わった。今年は金太郎(EH500)を狙いに行ってみようか。

1999-05-02   3065ㇾ  ED75重連     JR東日本/東北本線:好摩付近


急行「津軽」復活に寄せて

2019-05-16 20:00:00 | 国鉄時代(モノクロ)

今週末2日間だけ、かつての急行「津軽」号が復活する。今では急行という識別すら貴重であり、かつ客車急行となればなおさらに感じる。しかし運転区間は、湯沢-弘前間とのことで、何とも中途半端なイメージは否めない。「津軽」と言えば、かつては伝統のある名列車だった。ちょっとこんな走らせ方では名前負けしてしまうのではないか。現役さながらに、せめて秋田と上野を1往復すればいいのだが、すでに奥羽線は通れず、上越・羽越線経由とはなるがこれは致し方ないだろう。けん引機を考えれば、EF81が順当だろうが、EF81の「津軽」とはピント来ない。12系の6両編成ということだから、アントンKからすれば、どこかの団臨に思えてしまうが、これも現代では仕方がないこと。せめてED75700番台が牽いて往年の姿を想像させてくれれば良いのだが、果たして・・・

掲載写真は、今回復活する急行「津軽」に合わせて、12系使用時の画像を掲載してみる。見ての通り当時は、ロネ+ハネを連結した夜行列車の主張があり、たとえ後部が12系客車でも急行「津軽」と一目瞭然だった。この後のダイヤ改正で、寝台客車は廃止され、14系座席車のみの編成で運転されている。EF57のけん引する急行「津軽」に憧れて鉄道写真を始めたアントンKだが、急行「津軽」復活というだけで、ちょっと落ち着かない気持ちになっていることも事実だ。

1980-08-29  402ㇾ  ED75777  急行「津軽2号」  奥羽本線:大釈迦-鶴ヶ坂


都会に薫った「みどりの風」

2019-05-15 15:00:00 | 音楽/芸術

都内も若葉が美しい季節となった。こんな日和は、天気が目まぐるしく変化して、寒暖の差ができて身体も心も不安定に成りがちだが、抜けるような青空のもと、まだ若い緑を目にするとどこか心がスーッと洗われる想いがして気分が良い。明るい日差しの中、春の薫りを感じて街を歩けば、今までとは違ったものが見えてくるように思う。ほんの一瞬でもいいから、そんな想いが心に過れば、また前に進めるような気がしている。

仕事を早めに終えて都心へと急いだ。企業向けに催される演奏会を鑑賞しに行くためだ。いつも聴いているオーケストラのようなジャンルではなく、もっと少人数の室内楽鑑賞だ。アントンKは、鉄道写真と同様に、クラシック音楽鑑賞も随分と長い間続いている趣味の一つだ。聴きたいと思って意識したのは、40年以上前のことになるので、鉄道写真と同等かそれ以上の歴史が出来てしまった。しかしそんなに長い時の流れの中で、鑑賞する楽曲は、ほとんどがオーケストラで演奏される楽曲であり、ピアノやヴァイオリン、チェロといった器楽曲は、ほとんど聴いてこなかった。いずれ年齢を重ねたら、自然とジャンルが広がるとは思っていたが、とうとうそういった年齢になったということか・・・

いや年齢もそうだが、実際アントンKを導いてくれるのは、こういった演奏会を企画し実演されているヴァイオリニストの崔文洙氏のおかげなのである。忘れもしない2015年1月の大阪フィルの演奏会での衝撃は、アントンKの心を熱くし、あの命がけともとれる演奏は未だに生きる糧となっているのである。これは何度も書いてきていることだが、こんな演奏家が日本にもいるんだと正直ノックアウトされ、それ以来とにかく崔文洙氏の演奏を聴きたいと思い続けている訳だ。

そんな崔氏の演奏会は、大阪フィルハーモニー交響楽団のメンバーとともに演奏される「室内楽の愉しみ」と題されたもの。昨年同様、弦楽器のみのアンサンブルかと思いきや、今回は現在の大フィルクラリネットのトップ奏者である金井氏も登場、色彩豊かな音色が響き渡った。プログラムは、東欧を意識した内容で、中でもドホナーニの弦楽三重奏は、実演奏ではなかなか聴けないらしい。アントンKも予備知識はほとんどない中、目の前で生まれる音楽、響きの深さを味わうことが出来た。崔氏自らのMCも解りやすく、楽曲の聴きどころなども細かに解説しながらの演奏で楽しめる。昔、朝比奈隆が、「演奏者は、舞台に上がれば役者でなければならない」と語っていたが、この時の崔氏を見ていると自然とそんな言葉を思い出していた。いかにも大阪チックな金色のラメジャケットで身を包み、ヒンデミットの「ミニマックス」では、楽曲に合わせて、数々のアドリブをかまし、会場を和ませていたのだ。これが本当の意味での「エンターテイナー」なのではないか!

アントンKには、今回唯一馴染み深いモーツァルトのクラリネット五重奏曲は、よく耳にしていたおよそ20年前の光景が目の前に現れ、当時の気持ちが蘇ってきてしまった。いつものオケでは、精神性の高い音楽を演奏したかと思えば、今回のようにもっと身近に接することができる音楽を我々に享受してくれる崔氏には、今回も脱帽である。

「室内楽の愉しみ」~大阪フィルハーモニー交響楽団

ドホナーニ   弦楽三重奏のためのセレナーデより

ヒンデミット  ミニマックス(軍楽隊のためのレパートリー)

バルトーク   ルーマニア民族舞曲

モーツァルト  クラリネット五重奏曲

ほか

アンコール 

         竹取物語

チャイコフスキー 10月 ~武満徹編曲

CL     金子 信之

Vn1   崔 文洙

Vn2   須山 揚大

Vla    木下 雄介

Vc     近藤 浩志

2019年5月13日  三井住友銀行東館 ライジング・スクエア~アース・ガーデン

 


イベント列車に沸いた遠い日

2019-05-14 21:00:00 | 国鉄時代(モノクロ)

アントンKは、昔から機関車の重連運転は好んで撮影してきた。貨物列車に見られた重連総括はもとより、回送を兼ねた重連もターゲットとして長年撮影を楽しんできた。今では本当に限られた列車でしか重連運転は見ることが出来ず寂しいものだ。

古くは、南武線の貨物列車に見られたED16の重連列車(5191列車)。不定期での回送重連だが、結構な頻度で仲間と機番を争ったことも懐かしい。その後、中央線貨物列車に見られた石油列車(5472列車)。こちらは定期列車だったため、EF15では機番集め、その後のEF60の時代では、かろうじて画像を残すことが出来ている。83年改正でできた東北線の1151ㇾ、それに磐越東線の691ㇾ。これらは定期の三重連列車であり、狂喜乱舞して現地を目指したことは良い思い出だ。他にも「ゆうづる」のED75重連や、「越前」のEF62重連など、旅客列車での重連運転も大変盛り上がったものだ。こんな魅力的に思える列車たちも、いつの間にか消えてしまったという印象だ。どの列車も満足のいく撮影はできていない。しかし、残された画像からは、当時の夢中になった気持ちが今でも蘇ってくるのである。

さて今回は、重連列車でも、イベント列車として運転された時のもの。国鉄末期、いよいよEF15が引退間近の頃、特別運転された「新宿駅100周年記念号~EF15三重連の旅」。引退直前の甲府(もしくは八王子)のEF15を寄せ集めて都内から甲府まで走っている。さすがにアントンKも、同一形式の三重連となると、いくらイベント列車でも見たい気持ちが先に立ち撮影しているようだ。機番からすれば、何の魅力もないEF15だが、6つのパンタグラフをかざして走る姿は、やはり重厚であり今でも目に焼き付いている。

1985-03-03    9404ㇾ   EF15192+196+198  12系6両  塩山付近にて