先日,天声人語で紹介された映画『ライフ<いのちをつなぐ物語>』を見てきました。
産まれてくる子どもたちのためにさまざまな工夫をして,そのいのちをつなぐ役割と責任を果たす動物の親たち。
背中にオタマジャクシを背負って木の上の安全な水たまりまで運ぶイチゴヤドクガエル。一匹ずつ背中に乗せそれぞれの水たまりに運び終えると,今度は餌となる無性卵を一つずつその水たまりに産みおとしていきます。子どもが敵から襲われることなく,安心して育つことができるように身を粉にして行動する様子に,我が子に対する献身的な深い愛を感じました。
敵に襲われることがないよう,氷雪の上で子どもを産むウェッテルアザラシ。安全な反面,厳しい寒さの中,吹雪で真っ白になりながら自分の体を盾にし,我が子を守ります。激しい風雪の中でよりそう親子の姿が,感動的でした。
ミズダコのメスは一生の間に1回だけ産卵し,半年近くつきっきりでえさ食べずに卵の世話をし,子どもの誕生を見てから死んでしまいます。その懸命な姿を見ていると,生きることの切なさを強く感じました。
命の誕生の感動とその命を守るための親の献身的な姿が,美しい映像からストレートに伝わってきます。
命が誕生し,守られ,受け継がれていく 太古からの連続した つながりの中に 自分も生きているのだということを 強く 感じます。この映画のサブタイトルは「いのちをつなぐ物語」となっていますが,その意味が理解できるような気がしました。
ライフは,生きるという意味もあります。生きるためには敵から身を守り,餌をとらなければなりません。身を守るためには,さまざまな工夫や知恵があります。
ハネジネズミは,大きな耳と先の伸びた鼻で敵の動きを察知し,長いひげで縄張り内の地形を確認し,素早く逃げることができます。バシリスクは,以前テレビで見たエリマキトカゲのように,敵に襲われると水の上を2本足ですごい勢いで走って逃げることができます。オリオフリネラというカエルは,別名:小石ガエルとも呼ばれ,襲われると岩場を転がり落ちて逃げます。体が石のように固いつくりになっています。
たとえ体が小さく弱い立場であっても,身を守るための特別な武器と知恵を身につけているというところに 自然のしくみのすばらしさを 感じました。
餌の取り方にも,工夫と知恵があります。
食中植物のハエジゴクは,甘い蜜で蠅をおびきよせ2本のセンサーで侵入を察知し,瞬時に葉を閉じてつかまえます。バンドウイルカは,連携したチームプレーで海底の泥を巻き上げ,魚の群れを追い込み,驚いて飛び出してきた魚を次から次に食ベます。
こうして,巧みに身を守り餌をとり生きる中で,パートナーとなる相手との出会いを待つことになります。
特に圧巻だったのはクラークカイツブリという鳥の舞いです。相手の気持ちを確かめるための舞い。決めたパートナーとの優雅で力強く息の合った見事な舞い。スローモーションの画面からは飛び散る水の粒まで見え,二羽のカイツブリの翼・首・全身の動きが迫力ある形で伝わってきます,その動きの一つ一つがピッタリと重なり,二羽が一体となった姿がとても美しく,生の喜びを全身で表現しているように見えます。
いのちからいのちへと 目に見えないバトンで つながれていく 生の営み。そのいのちの連鎖の中に 人間もいるのだということを 実感します。同じ地球に生きる仲間として いのちあるもの同士の横のつながりも 感じます。
機会がありましたら,是非ご覧ください。よろしかったら見た感想などもお聞かせてください。