ある女の子から、仮のサンタクロースである私宛てに、プレゼントが届きました。中には、サンタ宛てのクリスマスカードとカイロ、色鉛筆(今年のクリスマスプレゼントだったようです)で書かれた手紙が入っていました。
カードには、『毎年毎年ごくろうさまです。カイロで温まってください!』という言葉とサンタの絵が描かれていました。同封された母親の手紙によると、これは女の子が24日の夜に家の玄関に台を用意し、その上に置かれていたとのことです。カイロは、寒い夜にプレゼントを届けて回るサンタのことを気遣って用意したものなのではないかと思います。その優しさに思わずニッコリ、サンタ顔になってしまいました。
女の子の母親は、私が仙台の学校に勤めていた頃の教え子です。今は、東京に住み、すてきなお母さんとして、娘である女の子を大切に育んでいます。女の子が産まれてから、光栄なるサンタ役の依頼を受け、それ以来クリスマスカードを送るようになりました。
12月になると、女の子からサンタあての手紙が届きます。はじめは、絵だけの手紙だったのですが、その絵もだんだん上手になり、やがては文字も入るようになってきました。女の子の1年毎の成長振りを、その手紙を通して実感しながら送るカードにメッセージを書くのは、とても幸せなひとときでもありました。
その女の子の今年の手紙には、たくさんの質問やお願いが書いてあり、戸惑いました。中でも、トナカイと一緒に写っている写真をくださいというお願いには、困ってしまいました。サンタ役としての私に課せられた大きな課題にどうこたえるか、しばらくの間そのこたえを考えた上で、私はひとつの結論を出しました。
目に見える存在としてのサンタから、心で見えてくるサンタの存在に気づいてもらう機会として、今回はクリスマスカードのほかに、そのことをメッセージにしたサンタの手紙を同封することにしたのです。
かんじんなものは、目では見えない。心でさがさないと……。 <星の王子様より>
そんな思いを込めて手紙を書き、女の子の夢の中でサンタとして会うことを約束しました。
女の子の母親からの手紙によると、このサンタの手紙を、女の子はくいいるような顔で読んでいたそうです。
今回同封された女の子の手紙には、青空が大ーいすきなサンタへ というタイトルで、新たな質問が書いてありました。私は、その手紙を読みながらとてもうれしくなりました。なぜって、サンタの存在をその子が、変わりなく信じているからです。心で見ることのできるサンタに、きっと会うことができたのではないでしょうか。
心で見ようとする人には、いつだってサンタが見え、何歳になってもサンタがやってくるのだというメッセージを、その子なりに受け止めてくれたのではないかと思いました。
女の子の質問には、来年書くサンタの手紙でこたえることにしたいと思います。
子どもたちが幸せな時は、自分が幸せな時。そう考える人は、誰だってサンタになれる。
サンタ役を演じることで、少しはサンタの気持ちが理解できた出来事でした。