今年の4月に亡くなった島田陽子さんの詩を紹介します。以前,朝日新聞の天声人語にも取り上げられた詩です。童謡集『ほんまにほんま』に収められています。
うち 知ってんねん
あの子 かなわんねん
かくれてて おどかしやるし
そうじは なまけやるし
わるさばっかし しやんねん
そやけど
よわい子ォには やさしいねん
うち 知ってんねん
あの子 かなわんねん
うちのくつ かくしやるし
ノートは のぞきやるし
わるさばっかし しやんねん
そやけど
ほかの子ォには せえへんねん
うち 知ってんねん
そやねん
うちのこと かまいたいねん
うち 知ってんねん
小さい頃の自分を思い出しながら,この男の子の気持ちに共感してしまいます。
好きだからかまいたくなるのですね。わるさばっかりしてしまうのですね。
そんなふうにして,二人だけのかかわる時間をもちたいと願っているのだと思います。
女の子の方が,大人ですね。
よわい子にやさしいところをちゃんと認め,男の子の気持ちをしっかりと理解しているのですから。なぜその女の子だけにかまうのか……?わるさばっかりするその裏にどんな気持ちが込められているのかも,ちゃんと見通しているのですから。
だからこそ その男の子も 女の子に惹かれるのかもしれませんが……。
大阪弁が快いリズムを刻み,思わず東北人である私も声に出して読みたくなってくる詩です。
生き生きとした子どもたちの姿が心に浮かんできます。
同じく大阪弁の詩に,次のような詩があります。『続大阪ことばあそびうた』に収められています。
まっせ
でてもらいまっせ
さらちにしまっせ
かくごしてもらいまっせ
おお まっせ まっせ
こわいひとが きまっせ
まっせ まっせ
このよは まっせ
かねのよォでおまっせ
とんできまっせ
ながれてきまっせ
そらからふってきまっせ
おお まっせ まっせ
こわいはいが ふりまっせ
まっせ まっせ
このよは まっせ
かくのよォでおまっせ
まっせのリズムは,大阪弁のもつ前向きな勢いを感じさせますが,福島での原発事故を思い出してしまいます。
もしかすると,そのままの勢いで核の世に一気に進んでいくことへの警鐘の意味も込められているのかもしれません。
勢いのある『まっせ』の構えはいいのですが,その進む方向を選択する時には,立ち止まってじっくりと考えてみることも,必要であり大切なことなのではないかと思いました。
味わい深い詩がたくさん収められている詩集なので,島田さんのご冥福を心から祈りながら,ゆっくりと読み味わっていきたいと考えています。
※新編『島田陽子詩集』 <土曜美術社出版販売 発行>より