あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

劇「真夜中の太陽」を見て

2015-12-02 20:43:16 | 日記
仙台演劇鑑賞会の12月例会:「真夜中の太陽」を観てきました。
劇団民藝の公演で かって朝ドラの主役を演じた日色ともゑさんが主人公:ハツエ役でした。

ハツエは太平洋戦争末期に、ミッション系の女学生でした。そのときに空襲に遭遇し、防空壕に避難した友達は直撃を受けて亡くなり、
音楽室に「真夜中の太陽」の楽譜を取りに戻ったハツエだけが奇跡的に助かったのです。以来 自分だけが生き残ったことに罪悪感を
抱き続けてきたハツエは、70年の時を経て亡くなった友を助けようと再び当時の時代に戻ります。しかし、過去の歴史を変えること
はできず救うことはできませんでした。
それでも、友達との再会を通して、自分たちが果たせなかった夢をハツエの人生の中で果たしてくれたのだという友の言葉を耳にする
ことで、救われるのです。

戦争という時代にありながら、夢や憧れを抱き明るく生き生きと過ごす少女たちの姿が心に残ります。
その少女たちが慕い敬愛していた 英語教師のジェームス・矢島先生は、敵国人として扱われ、戦地へ送られ戦死してしまいます。
外国人の血が混じっていること・クリスチャンであったこと・正義感にあふれた人物であったことが、軍国主義の時代においては災い
となってしまったのです。

感動的だったのは、戦火が断ち切った 未来への夢を 少女たちが語る場面です。そして ハツエが 少女たちの問いに答え、その後
の人生を語る場面です。看護師として働き、医者である夫と出逢い、子どもを産み、その子たちが成人し、孫に恵まれるまでの ハツ
エの人生の向こうに、少女たちは生きられなかった自分の未来を重ねてみていたのでしょう。だからこそ、自分たちの分までハツエが
生きてくれたのだと感じ、感謝の言葉を口にしたのだと思います。

ハツエが取りに行こうとした楽譜の歌「真夜中の太陽」を、少女たちが歌う場面も感動的でした。歌声が今でも 切々と心のうちに響
いてくるようです。
 
    真夜中の太陽 

        作詞・作曲 谷山 浩子

  寒い夜 暗い部屋 ひとりぼっちでも
  凍える指を暖める人がいなくても
  燃えろ 私の太陽 燃えろ その火を絶やすな
  燃えろ 私の命 赤く 暗闇を照らして

  信じていた人が去り 心に血が流れても
  私はいつも変わらずに 私なのだから
  燃えろ 私の太陽 燃えろ その火を絶やすな
  燃えろ 私の命 赤く 悲しみをとかして

  泣きながら胸をはれ 静かに朝を待て
  木枯らしの丘にひとり立つ 孤独な樹のように
  燃えろ 私の太陽 燃えろ その火を絶やすな
  燃えろ 私の命 やがて世界が
  光に満ちるまで

劇の中に登場した少女たち一人一人が 真夜中を照らす太陽なのかもしれないと思いました。
ハツエの70年間の暗闇を取り払ってくれたのも 少女たちの太陽のような輝きなのでしょう。
戦争は、そんな太陽の存在と未来とを奪い取るものでしかなく、暗闇そのものなのだと思います。
そして それは決して過去のものではなく、今でも地球のどこかで起こっている悲しい出来事でもあります。
一つの戦いやテロで なんと多くの命と未来が失われていることでしょう。なんと多くの悲しみや憎しみが生まれていることでしょう。

誰もが 自分の太陽の火を絶やさず 
自分と自分の周りの世界に 平和の光を満たすことができるように! と 心から願います。