庭でニホンミツバチを飼っていると、秋のはじめ頃になって、キイロスズメバチ、コガタスズメバチ、オオスズメバチなどがやって来る。巣箱を襲って、最も被害を与えるのはオオスズメバチである。オオスズメバチはスズメバチ科の最大種で.日本全土に広く分布しており、その攻撃は集団的である。最初は1匹が飛来し、しばらくすると数匹となり,ついには10~20匹が巣箱に群がる。
加害の特徴としては,口器の大きな歯大顎で相手を次々とかみ殺し,コロニーの抵抗が弱まると、最終的には巣の中へ侵入して、幼虫,蛹を補食して自分の巣に運ぶ。占拠した巣箱には1-2匹の見張りを残していることが多い。
スズメバチが来ると、巣口を固めたニホンミツバチの集団は体を一斉に振動させ、「シャー」という威嚇音を発する。これでニホンミツバチへの攻撃を少なくしている。この他にも、ニホンミツバチがスズメバチの攻撃を防衛する方法の一つとして、蜂球による熱殺戦法がよく知られている(写真1,2)。飛翔筋の発熱により内部温度は47度C以上になると言われている。
(ニホンミツバチの蜂球) (蜂球のサーモグラフ。内部は47度C以上になっている)
スズメバチの襲撃で、ミツバチは巣口付近で恐れおののいた様子で出たり入ったりしているが、突如一匹がスズメバチに飛びかかる。それを合図に周りの他のミツバチも集団で飛びついて蜂玉を作るのである。この特攻蜂には、それまで知られていなかった新種のRNAウイルスが感染していることを東京大学大学院理学研究科(生物)の久保教授らが発表した(2004年)。巣内に閉じこもっている臆病蜂には、そのウィルスは感染してないとした。また、このウィルスはミツバチの脳でのみ発現しているので、これが攻撃行動を引き起こしているのだとして、カクゴ(覚悟)ウィルスと名づけた。
当時の画期的な発見であったが、後になって、ミツバチの巣全体にカクゴウイルスの感染が広がっているケースも見つかり、これがミツバチの攻撃性を決めているのかどうかは疑問視されている。
参考論文
T. Fujiyuki, H. Takeuchi, M.Ono, S.Ohka, T.Sasaki, A.Nomoto, T.Kubo (2004) Novel Insect Picorna-Like Virus Identified in the Brains of Aggressive Worker Honeybees. J. Virology 78, 1093-1100.
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