京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

京都の子規と俳句

2024年08月31日 | 文化

 

 旅人の京へ入る日や初時雨

 川一つ処々の紅葉かな    

 老僧や掌に柚味噌の味噌を点ず   子規

 

 明治25年11月10日子規は京都に来て麩屋町の柊家(ひいらぎや)に泊まる。虚子が旅館を訪れると、子規が庭に降りて砧を使って何か作業している。

「何をおいでるのぞ」

昨日、高尾に行って取ってきた紅葉の色をハンカチに移しているのよ」と子規は嬉しそうに答えた。

 

(柊家旅館)

 前日、子規は人力車を雇って京都の高尾、槇尾、栂尾で紅葉狩りを行った。子規は高尾の売店で、紅葉の形を染め付けた手拭をみかけ、それをヒントにしてハンカチに染めることを思いついたようである。紅葉の色素はカロチン系のもので木綿に染めるのは無理なので、多分うまくいかなかったのではないか。「老僧や」の句はその後、天田愚庵をおとずれたときのものだ。

  ちなみに子規の泊まった柊家旅館の座敷は、その後、漱石や川端康成をはじめ多くの文豪が宿泊した歴史的な場所となり、いまでも使われている。

  同年11月14日。子規は母の八重と妹の律をともなって京都観光をおこなった。松山をひきあげて東京で家族で暮らすために、二人を迎えにきた途中の観光旅行であった。この時も3人で柊家旅館に泊まっている。

 

参考図書

  坪内稔典 「俳句で歩く京都」淡交社 (2006)

  森まゆみ 「子規の音」新潮社 (2017)

 


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