2008年8月9日(土曜日)
「インターセックス」箒木蓬生・著は
医療とジェンダーをテーマにした小説である。
昔は、半陰陽・両性具有と言われてきた人たちのことを、
インターセックス(インターセクシャル)という。
インターセックスにも
・性染色体がXY(男性)でありながら、性器の外見は
女性である場合
・性染色体がXX(女性)であっても、女性性器が欠如して
男性化している場合
・女性器と男性器の両方を持っている場合
など、ひとくくりにはできない個人差がある。
主人公である産婦人科・女性医師の治療に対する信念や
生き方を通して、読者は「人は男女である前に人間である」
ことの大切さを学ぶ。
医療の分野でも、いまだに男性主体・男性中心社会であり、
とくに、患者である当事者が「人間の尊厳」をうばわれた
治療を受け続けてきている現状にも触れられている。
インターセックスとして命を授かった
マイノリティたちの心の傷は、はかりしれない。
物語の中では、がん患者の会のような自助グループを
立ち上げる過程についても、詳しく述べられている。
本の帯には
「神が創り出した少数派の人間たちの魂の叫び、
身体と魂の尊厳。
医学の錯誤を見据える世界初テーマに挑む、
衝撃と感動のサスペンス大作」と書かれている。
サスペンスなので、詳しい顛末を書いてしまうと
読者のみなさんに、「おい!こら!」
と、叱られるのでこれでおしまい・・・
同じ作者による「エンブリオ」のサンビーチ病院が、
やはり物語の舞台となっている。
エンブリオの主人公・岸川も登場・・・
わたしは「インターセックス」のほうがお薦めです・・・