8月19日付の当blogでも書きましたが、為替相場の円安の流れが止まりません。9月1日には遂に140円台へ突入して、24年ぶりの水準となりました。
あの時にも申し上げましたが、今の為替相場は、購買力平価のバランスパワーによる円高牽引力よりも、日米の名目成長率の差を反映した円安牽引力の方が圧倒的に強い流れになっているため、簡単には方向感は変わらないと思います。むしろ、日本国内の物価上昇のスピードが、企業努力や政府の補助金などによって、欧米諸国よりも遥かにゆっくりであることが、余計に為替相場に悪影響を及ぼしている気が致します。
今、地上波放送を見ていると、9月以降、10月以降の値上げ品目がこんなにあるぞ! と警報を鳴らす報道ばかり。でも、ここは冷静に考えてみると、働いている現役層に対しては、CPIよりも高い賃金アップ率があれば良い訳ですし、サラリーマンを引退した年金生活者にとっても、1階部分の国民年金、2階部分の厚生年金保険(報酬比例部分)ともに物価スライド制となっているため、消費者物価の上昇は必ずカバーされる仕組みになっています。であれば、物価上昇を煽る報道ばかりするよりも、「値上げは良いけど、その分、賃金を上げるのが条件ですよ!」と、企業に対して釘を刺す警報を鳴らす方が、よほど意義があると思いますが、いかがでしょうか。
もちろん、今の物価上昇の中で、取り残される人たちがいることも事実。何らかの事情で、国民年金保険料も支払えずに過ごして、国から国民年金の支給すら無い方々。個人事業主の方に多く、直近ではコロナ禍で最も打撃を受けた層がこれに当たります。この方々には「雇用支援」や「生活保護」など、別の方法で救済していくしかありません。
世界と日本の物価の違いについて、前回は「ビッグ・マック」の地域価格差に触れました。今回はラーメンの価格で比較しましょう。日本で食べる博多ラーメン「一蘭」は、だいたい国内ならば1000円程度でしょう。これをロンドン市内で食べるとなると3000円では足りません。チップ込みで3500~4000円といったところ。NYではどうでしょう。ちょっと前ならば、チップ込みで2500円位の相場でしたが、ここへきての円安とNY市内の物価上昇で、ついに3000円を超える水準になりました。
まぁ欧米ともに、今のCPIが8~9%という水準なのに対して、日本のCPIは2~3%なので、コロナ禍の3年間でどんどん物価差が拡大しているのは当たり前なのですが、コロナ禍前の水準で比較しても、欧米が1~3%で、日本が0%と、この差が長く続いていたので、どんどん格差が開いていったことも忘れてはなりません。
GDPも、株価も、為替市場も、そもそもは「名目ベース」で、その水準が測られて、相場が作られていきます。物価を据え置き過ぎると、世界の成長や市場から、どんどん取り残されることになります。
「物価上昇」に対しては、『賃金上昇』とセットを条件に、むしろ容認姿勢に転じることが、今の為替相場の流れを変えるトリガーになる気がいたします。