西山朋佳女流三冠が挑戦する「プロ棋士編入試験 五番勝負」第1局は、9月10日(火)に東京の将棋会館で行われ、西山朋佳女流三冠が試験官である高橋佑二郎四段を132手で破り、まず1勝をあげました。
戦型は、後手番の西山朋佳女流三冠が三間飛車を選択、両者がっぷり四つの激しい闘いとなりましたが、西山朋佳女流三冠が90手目に放った☗9七角打が鋭い1手で、この攻防手をきっかけにリードを広げ、そのまま押し切るという堂々とした勝利でありました。初の女性の「プロ棋士」に向けて幸先の良いスタートとなりました。
ところで、そもそも「プロ棋士」になるためには、奨励会の三段リーグを26歳になるまでに勝ち抜いて、半年に1~2名という狭き門をくぐることが原則。ただし26歳以上でも、特例措置として、公式戦で既定の成績を収めたアマチュアと女流棋士が受験できる制度が「プロ棋士編入試験」で、受験資格を満たすには公式戦に出場して「最も良いところから見て10勝以上、なおかつ6割5分以上の成績」か「各棋戦ごとに定められた成績」が必要となります。
編入試験では、棋士番号が新しい順に5名の棋士(=三段リーグを勝ち抜いたばかりの四段棋士ということになります)が試験官となり、5局中3勝で合格となります。
試験官がプロ棋士になりたての四段ばかりというと、最も弱いプロ棋士たちと思われるかもしれませんが、それは大きな間違いです。プロ棋士になるために人生を賭けて戦っているのが三段リーグですから、それを勝ち抜いたばかりの四段棋士というのは、最も修羅場に強い棋士たちということ。プロテストに合格したばかりのゴルフの女子プロ選手が、いきなりトーナメントで優勝するケースが多いのと同じで、この5人の試験官は相当に「手練れの棋士」と思って間違いありません。
それから、当blogでも以前に書きましたが、すでにスター棋士として活躍している西山朋佳女流三冠のような存在は、プロになり立ての四段棋士からすると、試験官として絶対に負けられない存在ということになります。すなわち、女流タイトルをいくつも保持して、高い年収を稼いでいる相手の挑戦を受ける訳ですから、少なくとも、三段リーグを勝ち抜いたばかりの自分たちの方が「棋力」が上であることを世に訴えたい気持ちになるということ。
よくある「ジェンダー問題」の定型的な situation であります。
ただし、西山朋佳女流三冠は、かつて三段リーグに所属して、あと一歩でプロ棋士になるはずだった人。単なる「スター女流棋士」ではなく、かつて同じ想いで闘っていた「先輩棋士」でもあります。今回の試験官の四段棋士からすると、「絶対に負けられない存在」であると同時に「リスペクト対象の存在」でもあります。このあたりが、今回の編入試験の特徴と言えるかもしれません。
第2局は、10月2日(水)に東京の将棋会館で行われます。試験官は山川泰煕四段であります。