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駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

手の内

2025年04月17日 | 診療
        


 手品師ではないけれども、あまり手の内は明かさないほうが良いかもしれない。でもまあ、知って貰うのと理解が深まるかもしれない。
 病気というのは嫌なもので、中でも質の悪い病気は診る方も負担が大きい。有難いことに医学は進歩しており、癌と言えば死刑宣告のように響いた時代は過ぎ去り、早期のがんは治る時代に進行したがんもかなり生きながらえることができる時代になった。そうはいっても人間は心配から逃れることはできない。
 後医は名医と言われるように、早期に疾患を見付け適切に対処することは難しい。病気が少し進行してから診断することはさほど難しくない。市井の開業医はできる検査は限られているし、早期の疾患を診ることが多いので、簡単そうに見えるかもしれないが実は中々難しい。なんでも気軽に話せてご心配ありませんよと言ってくれる先生と思われるのは嬉しいが、すっきりしなければ連絡するかまた来てくださいとさりげなく伝えるようにしている。要注意の可能性が数パーセント以下だと患者さんには心配ありませんよとお話しすることが多い。心配を伝えることが必要なこともあるが、心配してもその時点でそれ以上診断を詰める手立てはなく安心は一つの薬だからだ。要するに心配は医者がするからあなたは安心していてくださいというのが手の内なのだ。時にあれで良かったかなと寝苦しい夜もある。
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美しいと感じる

2025年03月22日 | 診療
              


 一般の人には理解できないだろうが、胸部レントゲン写真を見て美しいと感じることが百回に一回くらいある。痺れるように美しいと感じることが千回に一回くらいある。99%若い健康な人の写真だ。おそらくどのような仕事にも、その道の人だけが感じることができる美しさがあるに違いない。
 確かにレントゲンは衣服を素通しに写してくれるのだが、皮膚も肉も素通しで何でそれで美しいと感じると言われるかもしれない。それが何十年も胸部レントゲン写真を見続けていると感じるようになるのだ。
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役者はさすが

2025年03月18日 | 診療
           


 役作りで10kg痩せたとか20kg太ったとか聞いたことがある。映像に残っているから事実に違いない。それを聞くと役者はやはり常人ではないと思う。勿論、中には普通の常識人で地で芝居をしてそれで高い評価を得ている役者も居るかもしれないが、常人の振りをして狂気を秘めているのが役者のようだ。
 内科医の重要な仕事は生活指導で、太り過ぎと痩せすぎを前にしてあれこれご指導申し上げているのだが、とても勝ち越せない。痩せさせるのは三勝七敗、太らせるのは一勝九敗くらいだ。判定基準を緩めれば五勝五敗と二勝八敗くらいになりそうだが理想には程遠い。五十年も医者をやっているのに勝ち越せず、自らの非力を痛感、反省しているがもう後がない。
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十五分の勉強

2025年01月10日 | 診療
            


 勿論、十五分では足りない。三十分と言いたいところだが、だんだん勉強時間は減ってきている。現役のうちは毎日十五分は勉強しなければと努めている。その主な情報源は医事新報だ。学会誌もまだ二つ送ってくるが月刊誌だし、前線には週刊で臨床的な医事新報が有用なのだ。
 当然だが知った著者が減った。昔はあいつが教授になったかなどと同級生や知己の記事を時々楽しく懐かしく読んでいたが、今では著者は自分より若い人ばかりだ。  
 正直に言えば、本からの新しい知見は成程と思っても中々身に付かないし新薬なども導入しにくい。やはり人から直に教えられた方が身に付くというか実行に移しやすい。コロナ前は講演会勉強会があったので、そこで新知見新薬を教えられ導入していた。コロナが一段落し講演会勉強会が少し復活し、時々開催されるようだが億劫で出かけなくなった。今は幸い若い院長と一緒に働いているので、彼のカルテを見たり教えてもらったりして、最先端の医療から遅れないようしている。運がいい有難い。
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後医は名医だろうか

2024年12月14日 | 診療
                           


   病気と言うのは最初は症状がそろわず診断が難しいものだ。有利という言い方は変かもしれないが後から見た医師の方が正しい診断が付けやすい。しかし世間の人は正しく診断できなった前医を藪医、後から正しい診断をした後医を名医と思いがちだ。
 だから我々の仲間内では前医を悪く言うなと言う暗黙の了解がある。しかしながら軽率な若い医者は時に、これがわからなかったなどと口走ることがあり、不要な誤解を生むことがある。初期に正しい診断を下せるのが優れた医師なのは間違いないが、イチローだって毎回ヒットが打てるわけではない。大切なのは確率と布石なのだ。
 優れた医師は居ても普遍的な名医というものは存在しないのでは、名医には出会いと相性があると思われる。
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