
手品師ではないけれども、あまり手の内は明かさないほうが良いかもしれない。でもまあ、知って貰うのと理解が深まるかもしれない。
病気というのは嫌なもので、中でも質の悪い病気は診る方も負担が大きい。有難いことに医学は進歩しており、癌と言えば死刑宣告のように響いた時代は過ぎ去り、早期のがんは治る時代に進行したがんもかなり生きながらえることができる時代になった。そうはいっても人間は心配から逃れることはできない。
後医は名医と言われるように、早期に疾患を見付け適切に対処することは難しい。病気が少し進行してから診断することはさほど難しくない。市井の開業医はできる検査は限られているし、早期の疾患を診ることが多いので、簡単そうに見えるかもしれないが実は中々難しい。なんでも気軽に話せてご心配ありませんよと言ってくれる先生と思われるのは嬉しいが、すっきりしなければ連絡するかまた来てくださいとさりげなく伝えるようにしている。要注意の可能性が数パーセント以下だと患者さんには心配ありませんよとお話しすることが多い。心配を伝えることが必要なこともあるが、心配してもその時点でそれ以上診断を詰める手立てはなく安心は一つの薬だからだ。要するに心配は医者がするからあなたは安心していてくださいというのが手の内なのだ。時にあれで良かったかなと寝苦しい夜もある。