駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

秋晴れはどこに

2024年10月29日 | 診療
            
            
 
 今日も肌寒く風があるせいか駅まで歩いても汗ばむことはなかった。少し雨が降ったようで道路が濡れていた。電車はいつもより少し空いておりすぐ座れた。男は黒っぽい服装多く女性も暖色がなく全体に暗い感じがして、いつもの通勤電車ではなくどこか違うところに向かっているように感じた。
 それでも何事もなく無事に医院にたどり着き診察室に座ると市内の総合病院から私のところに通院しているN子さん84歳が転倒し大腿骨を折って入院されましたという報告が届いていた。やれやれと小さいため息が出た、年に一人二人こうしたことがある。若い時には転ぶなどということは少ないし転んでも素早く手をついたり体をひねったりして大怪我をすることはないのだが、後期高齢になるとわずか二センチに躓き骨折をすることがある。ほとんどが女性で、N子さんは明るく楽しい人なのだがちょっと体重が多く打ち所が悪かったのだろう。経過良く帰ってこられるのを待ちたい。
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変遷する新型コロナ

2024年09月18日 | 診療
           


 総裁選代表戦の陰に隠れて、殆んどニュースにならないが新型コロナの流行が続いている。変異と流行を繰り返すうち軽症化してきた。前線で毎日数名見ている診療所でもそれを実感している。
 ちょっと悩むのが治療薬である。対症療法で良くなると判断できる症例の中には新型コロナの薬(ゾコーバ)を使用しても良さそうな高熱で大変そうな症例も混じっている。問題なのがお値段で15500円と聞いて、いや結構ですと断られる患者さんもおられる。飲んだ患者さんは楽になったと言われる方が多いのだが無理には勧められない。
 もう一つ感じるのは感染源が不明な患者さんが増えたということ。おそらく軽症無自覚コロナで歩き回っている人が居て、しかもマスクをしていない人が増えたせいだろう。
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マルチタスク、難しくなった

2024年09月07日 | 診療
            

 若い時は同時にいくつかのことができた。だからか、仕事は早い方だった。同級生のNは最前席に座る勉強家でノートを貸してもらったり色々助けてもらったのだが、集中するせいかあれをやりこれをやりが出来ず実験などは私の方が早く終わり、「お前よくそんなに早くできるな」と感心された。誰でも一度に二つ三つのことができると思っていたがそういうわけではないようで、遺伝的なものなのだろうか。ただ残念なことに、この頃マルチタスクの能力が落ちた。看護師に話しかけられたり、事務から電話が掛かったりすると、患者さんに頼まれた追加の湿布薬を処方し忘れたりするようになった。薬局から電話が来て申し訳ない、入れ忘れたと謝ることになる。
 昨日昼休みに、以前一緒に働いていた事務員と看護師が遊びに来て「先生いつまで働くの」と聞かれた。周りが「この頃ちょっと」と注意してくれるまでと答えたら、「そんなこと言えるかしら」と言われた。確かに言いにくいかもしれない、言ってくれるように頼んでおかなくては、たぶん自分でも気づけると思うが?。

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誘惑の多い世の中

2024年07月26日 | 診療
              

 内科診療では生活指導が必須だ。上手に説得して食事量を減らさせ塩味を減らさせ運動を続けさせる、それも診断や薬の選択と同じように医師の実力のうちなのだろうが、五十年やっていても中々難しい。毎回判で押したように注意するだけなら簡単だが、それでは人間という相手の生活を実際に変化させることは難しい。食品模型で具体的な量を示したり、記録を付けさせたり、色々工夫して指導している。繰り返し根気よく、しかも嫌がられないようにお話しする努力をしているのだが、果たして合格点が取れているだろうか。
 こんなに暑いとどうしてもアイスクリームやビールに手が出てしまう気持ちが痛いほどわかる。自分にも難しいことを、一言で止めろとは言いにくい。
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経験で補う

2024年06月28日 | 診療
                      

 雨が降ると朝が静かなのは鳥が鳴かないせいだろうか、雨の朝は静かでよく眠れる気がする。静かと言っても実は雨音が微かにしているのだが、ほとんど聞こえない。聞こえるような聞こえないような音がしている。
 年を取ると聴力も落ちてくる。幸い聴診器の音は聞こえる。聴診器は微かな音も聞いているので、ようやく聞こえる雑音もあるのだが、聞いたことがあるので分かる。大動脈弁の逆流音は柔らかい音なので聞いたことがないと聞き逃してしまうと思う。
 私のような老医はまだまだ五感を使って診察をしているので、感覚の衰えは診断力の衰えに繋がりそうだが、見たことのあるもの聞いたことのあるもの触ったことのあるもの嗅いだことのあるものを覚えているので、多少の衰えは補えていると思う。
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