駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

医師にも起業体質の人が

2018年02月28日 | 世の中

         

 総合病院勤務を辞めて独立し個人で医院を始めると、嫌でもある程度は経営的な仕事をしなければならない。人を雇用し給料を支払わなければならないし、借金は利子を付けて返さなければならない。保健所への届け出や医師会活動もしなければならない。この中で金銭的なことは事務長(大抵は妻)がしてくれるので、負担を減らすことは出来るが、収支の報告や納税額は聞かないで済むとはいかないので、多少はストレスになる。五名から十名ほどの従業員との関係は、どんなにスムースでも時々は波が立つので頭痛の種になる。

 地域によっては患者が来なくて経営が大変という所はあるようだが、厳しいと言われても経営が苦しい医院はそう多くはないだろう。多くの医院院長の一番のストレスは多分職員の問題だと思う。

 しかし中には、医院経営をストレスとは感じない?で、医院の規模を拡大し、アルバイトの医師を雇用したり、更には訪問介護ステーションを併設したり、老人病院の経営に乗り出す医師も居る。こういう医師は元々事業家的な体質というか性質を持っているようで、横から見ていると色んな共通点がある。活動的で精力に溢れ、ひ弱い感じで小声で考え考えしゃべるような人は居ない。発展家も多く、レストランで見かけても隣の女性が奥様とは限らないので、声を掛ける時には気をつけなければならない。よくそんなに色々なことができるなあと感心するのだが、医師会の役職も喜んで?やる人も多い。勿論、これは男性に限らず女医さんの中にも同じタイプの方が居られる。医者になんなきゃ社長してたわと言われ、はーとお聞きしたこともある。こうした資質の人達の存在は、人類の中にある割合で脈々と引き継がれてきた遺伝子のなせる業のような気がする。欠かせぬ人達ではあるが、近隣だとちょっとはた迷惑に感じることもある。

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統計学が役立ちそうだが

2018年02月27日 | 政治経済

 裁量労働制を推進する根拠となる労働時間調査のデータに驚くべき数の誤りがあったために、予算委員会の審議が頓挫している。政府(安倍内閣)は誤りを認めても、法案は既定路線として数で押し切る構えだ。誤ったデータは脇に置いて、形としての手続きはちゃんと踏んでいるからこれでいいのだというのが安倍首相の言い分だ。

 誤りは野党の数多い詰問に厚労省の職員が疲弊して誤記しただけだと、まるで野党が厳しく咎めるから単純に間違えたように説明される与党議員が居られるが、どちらに都合よく間違ったかを統計的に調べれば、単なる誤記かどうか分かる。統計学が最強の学問とおっしゃる西内啓先生に調べてもらえばいい。水掛け論にすり替えようとする人達に、水を掛けていただきたい。

 安倍首相は世の流れを読むのに長けており、スローガンで戦ってきた?野党の何倍もスローガンの掲げ方が上手い。今、働き方改革が必要なのは確かで、問題意識は正鵠を射ているのだが、やり方には大いに疑問があるし、内容にも問題があるようだ。驕りと弛みで、データなど形だけのものという姿勢になっている。実態を調べる前から、委員会も開く前から、結論は出ているということのようだ。こういう首相には統計学も敵わないかもしれない。一万回に一回のことが起きているんですと退けられてしまうような気がする。最強の学問よりも強い?、何故だろう。

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メダルはなくとも

2018年02月26日 | 小考

  

 このに三日寒さが和らぎ、三寒四温の季節になったと実感する。ちょっと暖かくなったら急に花が咲き始めた。草木花の名前を知らず、桜にしては早すぎるし色が濃いし何だか咲いたと通勤の道すがら眺めている。

 今年の夏は暑いそうだ。五十年前に比べたら天気予報も随分当たるようになったから、暑い夏が来るのだろう。今は患者さんと異口同音に早く暖かくならないかなと言い合っているが、過ぎたるはで、猛暑も辛い。まあ丁度良いのは春秋で十日間ずつくらいのものだろう。それくらい美味しい所というか最良の部分というのは少ない。人生も振り返れば5,6%が本当に楽しい時間かもしれない。

 要は上がり坂下がり坂でこぼこ道をいかに味わい深く生きるかが大切なのだろうが、凡夫には中々難しい。日常をちょいと楽しく生きる知恵には女性の方がいくらか恵まれているように見える。神は細部に宿ると言う。成程と思わせる言葉で、原典を離れ色々な解釈があるようだが、変哲のない毎日を味わう知恵を言っているようにも聞こえる。

 メダルのために一途に精進するのは、勿論、素晴らしく凄いことだが、変哲のないあれこれと些事が押し寄せる日々を生き生きと生きるのはメダルの表彰はなくても、メダルに値すると思う。

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日本文学100年の名作を読んでみたい

2018年02月25日 | 

 

 マスコミの名作、名所そして名医にはさほどの信を置いていない。万人に有効とは思えないからだが、日本文学100年の名作(新潮文庫)は選者と自分の年齢を考えれば参考になるかなと思う。池内紀、川本三郎、松田哲夫。松田哲夫さんはよく存じ上げないが、池内、川本のお二人は敬愛する文人で、楽しくお話を聞き著作を読んで来た。

 この年になって少し小説に回帰しているのは、小説でしか味わえない表現できない世界があると気が付いたからだ。ミシュランの三つ星も一つ二つはと思うがそれ以上に出会いたい世界を展開する小説があると思う。もう若い時のように我慢して読むことは出来ないから、三ページで投げ出す小説も多いが、短編であれば最後まで読める作品も多いだろう。それに名前は知っていても作品を読んだことのない小説家も多いので新発見がある気がする。

 これからはAIの時代と騒がれているが、秘かに信を置く新井紀子さんは2045年にシンギュラリティは来ないのではと言われる。今のAIには小説を書くのは難しい。小説は囲碁将棋よりも人間総合の営為のようで、人間の端くれの私には見逃せない世界があると思われる。

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患者さんの我が儘?

2018年02月24日 | 診療

  

 異業種の親友F氏が自分にはSさん(私のこと)の仕事は出来ないと言う。企業戦士で海外生活十年の経歴の彼がそういうのは不思議な気がするが、あらゆる層の人を相手にしかも勝手な要求が多い仕事は自分には堪えられないと言われる。私は自分ではさほどストレスは感じず、こういう仕事だと思って働いてきた。しかし、何十年も働いて引退も視野に入る今頃になって、患者さんは自分勝手だなあと思うことが増えた。

 私の忍耐力が減ったのと患者さんが実際に我儘になったという二つの要因が絡み合ってそう感じるのだろうと思う。年を取ると頭の回転が鈍りのんびりしそうで実は忍耐力が減るのは、皆さん身の回りを見渡せばわかることだろう。患者さんが我儘になったのは、弱者を大切にしようという社会の動きの副作用だと思う。弱い人力のない人を助け大切にするのは真っ当なことだが、これにはいろんな副作用がある。

 患者さんの我儘とあまり関係なさそうであるが、弱者を大切にすることが自助放棄と言うと言い過ぎかもしれないが、自分でそれなりに考えたり試みることをしないであれこれ要求することに繋がっているように思う。

 私は総合内科医で広い知識と経験はあっても残念ながら深みはなく、まして眼科や整形外科の病気の知識は十分ではない。ところが患者さんは眼科や整形外科を受診した後、色々な不満を私にぶつけ説明を私に求める。まあ、話しやすいのは分かるが、私にはきちんと答えられない。専門医に紹介しようとすると、そこは嫌午前中は駄目などと注文が多い。逆に私で十分なことができるのに、専門医を所望される患者さんも居られる(大抵は満足な結果が得られず戻って来られる)。

 元々人間は自分勝手にできているのを社会人として生きてゆくためにいろいろな知恵や我慢を身に付けてきたのだが、恵まれない人や弱者を救済する動きの副作用で、大人であることを放棄した身勝手が出てきているように思う。

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