動脈硬化を招くコレステロールの中にHDLコレステロールというものがある。このコレステロールは善玉と呼ばれ、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールと異なりむしろ動脈硬化を防いでくれる。何十年も前に教科書や医学雑誌でそのメカニズムを読んでなるほどと理解したが詳しいことは憶えていない。
理屈としての理解とは別に経験としての理解がある。一カ所で三十年以上診療を続けていると初診で六十歳だった患者さんも九十歳になる。勿論、九十歳まで矍鑠とお元気な方はそう多くはないのだが、そういう人たちは軒並みHDL善玉コレステロールの値が高い。成る程、このHDLというのは動脈硬化(老化)を遅らせる働きがあるのだなと実感する。勿論、他に癌や感染症など命を奪う疾患もあるから、H DLコレステロールが高ければ長生きが保証されるわけではないが可能性は大きくなる。
残念ながら私のHDLコレステロールは並みで、両親も長生きではなかったので、そのつもりで生きるのが賢明そうだなと思っている。