駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

現代経済学を理解出来る本

2020年07月22日 | 学思

              

 

「現代経済学の直感的方法」(長沼伸一郎)を読んで現代経済学がどういうものか分かった。物事が分かるとはどういうことかよく分からないが、この本を読んでいくと成る程そういうことかと砂地が雨を吸い込むように理解することが出来た。経済学が分かったと久しぶりに脳が喜んだ。

 七十過ぎて新しい学問が分かったと感じることが出来るとは思わなかった。今までは何だか勿体を付けた言い回しと経済用語で不本意ながら、経済評論家や経済系議員のいうことに煙に巻かれてきたが、これで正体見たりと恐れることはなくなった。勿論、細かいところや技術的なところはたった一冊の本では知り得ないが、根幹を押さえることが出来たと感じられ自信が生まれ視界が開けた。

 長沼伸一郎氏は在野の理系の研究者のようだが凄い人だ。知る人には知られているようだが、分かるように説明する天才と思う。教師には分からないように説明する秀才が揃っていると憎まれ口も叩きたくなる。

 とにかく世の中を動かしている最大の力は経済なので、経済を学んだことのない世の中のことを色々考えるのが好きな人にはおすすめの本である。

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日曜日は休めなかったが学べた

2015年07月13日 | 学思

              

 第二セットのタイブレークを3-6から跳ね返す驚異の粘りに、ひょっとしたらと思いながら眠りについたのだが、やはり最強マシーンのジョコビッチに敗れていた。しかし、ウインブルドンの観客と同じようにフェデラーのファンなのに変わりはない。

 梅雨が明けたのだろうか。朝から蒸し暑い。気象庁は曖昧で他人ごとのように表現するようになったのではっきりしないが未だ開けてはいないようだ。子供の頃を思い出させてくれる強い日差しと青空の入道雲は大好きなのだが、九月に入ってからの残暑だけは勘弁して欲しい。

 日本医師会での講習は非常に為になった。内科学会とは別種の新知見を多く得た。現場を知る人間の言葉には重みがある。共感しながら学べるから身に付いた気がする。特に糖尿病と認知症では、いくつかの勘違いというか理解の浅いところに気付かされた。昼飯を未だ食べていないと言い出す認知症の人に「さっき食べたでしょ、冷や麦と卵焼き」と教え諭し、しまいには𠮟り付けるのは逆効果らしい。𠮟り付けるのは良くないとは知っていたが正しい対応を教えて貰い、成る程と思った。

 六十五才で前期高齢者七十五才で後期高齢者と定めたのには、便宜的なお役所の発想も絡んでいたようだが、瓢箪から駒で六十五才と七十五才は二つの関所になっているのが明らかになってきた。勿論、例外はあるのだが高齢者は大きく六十五才で下り坂が始まる人達と七十五才で下り坂が始まる人達との二群に分けられるようだ。下り坂の勾配は色々だし八十才八十五才まで落ちない人も少数居られるようだが、多くの高齢者には六十五才あるいは七十五才が分水嶺のようだ。実感に沿う指摘であった。自分は幸い七十五才組に入りそうだ?。

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東海は暴風、良書を見つけた。

2014年10月06日 | 学思

                          

 台風十八号が東海地方を襲っている。電車が動かないので吹き降りの中ゆっくりと車で出勤してきた。道路が10cmくらい冠水して対向車の水しぶきが上がり、一瞬前がよく見えなくなり怖い。幸いみんなが注意するせいだろう、事故は見かけなかった。

 医院に着いた途端、受付のN嬢から今日は欠勤させてくださいと電話がある。まあ、こんな日は患者さんは半分以下だろう。「ああ、いいよ」と答えたことだ。

 金曜日、胃炎の勉強会の前に十分くらい時間があり、ちょっと本屋により新書を二冊買った。そのうちの一冊「比較の中の改憲論」辻村みよ子著岩波新書を半分程読んだ。もう一度完読してから書きたいが、国民必読の書と感じた。勿論、この一冊だけで改憲論を判断してよいとは言わないが、成る程そうかと首肯できる事実に基づいた丁寧な解説が展開されている。

 改憲という全ての国民の生存にかかわる重大問題が何と粗雑なすり替え論で強行されようとしているのだろうかと恐ろしくなる。手の内を伏せて、なんとか自分の意図を通そうと立ち回る役者に惑わされてはなるまい。アベノミクスにしても改憲にしても、決して一言では表現できない内容を含んでいる。丁寧に客観的な事実を積み重ねた新書程度の内容を含む意見解説を複数読んでからでないと判断できない問題と思う。

 今年の一月に出されたこの良書がまだ第一刷とは本当に心配になる。

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偉大なニュージーランダー

2013年12月16日 | 学思

                    

 毎日駅前で忙しく診療をしながら、細々とした時間にあれこれ支離滅裂な十兎を追っている。物理ファンでもあり、一般向けの解説書を何冊も読んだ。残念ながら数学の素養が十分でないため、理論物理を数式から腑に落ちるように理解することは出来ない。それでも、ある程度は解説書から二十世紀初頭に起きた物理化学の革新を感知することはできる。

 青木薫さんが女性だということをつい先日知った。彼女が訳した本を何冊も読んでいたのに迂闊だった。美しき才媛と知って、おおそうだったかと額を打っている。数日前に青木さんが訳された最新作、「量子革命」を手に入れた。

 宇宙と物質を解明してきた二十世紀前半に活躍した科学者達は不思議なほど人間的魅力に溢れている。「量子革命」を少し読んで、名前は知っていたがさほど興味を持たなかった実験物理学者アーネスト・ラザフォードという人物に目を開いた。どうも科学ファンは理論家偏重になりがちだが、優れた実験物理学者なくして物理化学は前へ進まないのだ。

 ラザフォードは十九世紀にニュージーランドに生まれている。科学の進歩から取り残されたような辺境から、偉大な物理学者が出たのは不思議な気がするが、ニュージーランド由来と感じられる大らかさと包容力を備えた生まれついてのリーダーだったようだ。人間性とは無関係のように思われる科学が優れた魅力的な人物から生まれてくるのは、どうしたことだろう日本にあるいは二十一世紀にこうした人物が生まれるだろうかと、余計なことも考えた。

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学者も生きている人間の一人

2012年04月16日 | 学思

     

 駆け足で日本内科学総会に参加してきた。京都は中尾一和会頭の念力によって、例年なら散っている桜がちょうど満開で岡崎周辺は好天にも恵まれ、絶好の学会日和?だった。

 総会には医学学術を離れて一般総論的な講演が付きもので、今回は京都在住の宗教学者山折哲雄さんのお話があった。残念ながら目新しいものではなく以前にも聞いたことのある部分が多くちょっと鼻白んだ。西行が絶食で命を絶ったと言う自説を紹介され、願わくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月の頃 を上手く実践したというような話から、老いたらある時点で絶食して死ぬのも良いと思うとのことであった。きちんと理解できたかどうか心許無いが、なかなか現場(認知と廃用が進行)ではそうもいかない、どうも学者は夢のようなことを言うと奥義を極めた宗教学者に失礼な感想を持った。

 ちょっと話は飛ぶが、大飯原発再開をさせようと政府が躍起になっているが、誰が見ても結論ありきの付け焼刃安全指針で長期展望がすっ飛んでいる。学問としての宗教に長じることは学者として評価され、尊敬に値いするけれども、どう明日を生きるかには今日まで生きてやがて死ぬ誰しもが等しく自らの命なりにものが言えるのではないか、と疏水の脇を歩きながら考えたことだ。

 

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