駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

ここでも格差が拡大している

2016年06月30日 | 人生

    

 今朝も曇天だった、幸いそれほどは蒸し暑くない。どうも梅雨の雨の降り方が変わったのか、しとしとと続くのではなく、短時間にざーっと降ることも多い。水不足と聞く関東の水源は水が貯蔵できただろうか、これだけ降れば十分な気がするが、局所的な問題があるのかもしれない。

 患者さんを診る時は必ずカルテの生年月日を見る。これは生物的に患者さんを理解する助けになるし、病気の診断の手がかりにもなる。同じような症状でも年齢によって考えられる病気の種類や確率が変わってくるのだ。但し、しばしば暦年齢と見かけや中身の年齢に乖離があり、そのことも重要な情報になる。

 平均余命が四半世紀で十年近く伸びた。診察しながら日々それを実感している。半世紀前は定年が55歳で、還暦と言えば老年の仲間入りの感覚があったのだが、今は六十才は第二の人生の始まりの感が漂っている。実際、診察をしても老化を感じさせない還暦の人もいる。昔からある不老長寿の夢が、21世紀にはいくらか実現しているとも言えそうだ。

 尤も、遺憾なことにここにも格差の拡大が及んでおり、六十歳のような八十歳と七十五歳のような六十五歳が混在してる。残念なことに、自分を含めてやや若く見える七十過ぎに、失礼ながら馬齢が重ねている感じの方もおられる。折角の長生をくよくよ漫然と過ごすのは惜しい気もする。どうも、年を重ねるにつれ知恵が凝縮して味が出てくる人は限られているようだ。尤も、大きなお世話、長く生きられれば馬齢で結構と答えられる人も多いのかもしれない。自分も結局はそうなりそうだ。 

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浅慮短絡発言にも真実が

2016年06月29日 | 小考

            

 共産党の藤野保史とかいう議員が防衛費は人を殺すための予算と発言して引責辞任させられた。これは麻生太郎の90歳、いつまで生きているつもりだと同根の発言で、思慮の浅さが露呈している。勿論、人を殺す方が耳障りが悪く反発も大きいだろう。

 短絡表現を口走る未熟さは、政治家としての資質に疑問を抱かせるが、そうかといってそれを鬼の首を取ったように批判しまくる政治家にも危うい怪しげなものを感じる。身を守るために人を殺すこともあり得る防衛費ではあるし、90歳ではあと何十年もは生きられないのも事実である。

 人の粗や失策をあげつらうのは二流三流の品性の証しで、そういう人も信頼できない。藤野議員を党派を超えて未熟と叱責するのならわかるが、遺憾ながら叱責できるほどの政治家は稀有のようだ。

 しかし翻って、こうした短絡発言に含まれる真実はきちんと心に留めて吟味する必要がある。どぎつい短絡表現ではあるが、それゆえに見逃されがちな問題点が含まれているからだ。武力行使では死者が出る。それは殺されるからだ。90歳でもう長くは生きられないのに後生大事に財布のひもを縛っていては、消費が伸びないのも真実だ。

 キャメロンの去り際は立派とする論評が多い。確かに態度は立派かもしれないが、もし勝算があると踏んで国民投票を選んでいたとしたら、優れた政治家だったとは言えず、人間は一流でも政治家としては二流と申し上げねばなるまい。何だか少し矛盾しているように読めることを書いたが、表裏のことだ。 

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冗談もほどほど

2016年06月28日 | 診療

     

 六月はフレンチオープンからウインブルドン、今年はユーロカップのサッカーもあるので、寝不足になってしまう。今朝は雨でうっかり寝過ごしたのだが、患者さんの出足が悪くキイが叩ける。

 拝むのが好きなお婆さんが居る。お婆さんと言っても本格的なお婆さんで、しわくちゃで腰が曲がり、90歳に手のかかった人が多い。たまたま薬が合ったのか相性が良いと感じておられるのだか、特別な治療をしているわけではないのに、先生は神様だなどと手を合わせる人が居る。冗談もほどほどにして欲しいのだが、帰り際お疲れでしょう、無理をしないようにと、ご忠告を頂く。神様への挨拶にしては何だかおかしい。神様は疲れ知らずで間違わない存在のはずだが。まあ、折角信頼していただけるのだから、落ち度のないように診察させてもらおうと、神ならぬ凡医は承っている。

 以前にも先生は神様と手を合わせられるお婆さんが居られた。残念ながら本物の神様がお呼びだったようで寝たきりになられ数か月で亡くなった。さすがに最後は手は合わせられなかったが、往診に行くと笑顔が見られたので、よかったかなと思い出す。それでも神様などと言われるのは全然嬉しくない、女房はどこが神様と思っているだろう。確かに神は家に一人で十分。 

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お値打ちよりもお手頃

2016年06月27日 | 旨い物

            

 車で7,8分のところに小洒落た中華料理の店ができた。所謂街角のチャーハンラーメンに野菜炒めの中華店とは違い店のつくりはイタリアン風で、カウンター席が七、椅子席が二十くらいの明るい店だ。

 早速と言っても開店して3か月目だが行ってみた。ランチは800円から1500円まで、全てコーヒか紅茶そしてデザートが付いている。デザートは寒天ゼリー系の簡単なものだが体裁よく味付けにも工夫がある。私は70点、家内はちょっと厳しく60点の評価(味主体)だった。ランチは七種類あるので、もう少し食べてみないとはっきりしたことは言えないね、どれが奥さんだろうと帰り道に話題にした。数日後、夜も食べてみないとと出かけたのだが満員で席がなかった。ではちょっとメニューを見せてくださいと、はいはいと二つ返事で奥さん?が手渡してくれたメニューを一睨みして、これどうぞと呉れた店のカードを手に引き揚げた。

 メニューは街角中華とホテルの中華の中間の感じで、品数は前菜主菜に飯麺を入れて三十種類くらいだった。お値段は主菜の高いのでも1600円どまりで、ホテルの半値と踏んだ。たった一回ランチを食べただけで、味は中の上と言っては失礼かもしれないが、この繁盛ぶりはお値段が手頃だからだろうと想像した。シェフがお値打ちと考える三千円を超えるコースを主体にしたメニューでは来店するお客さんは限られ、ランチはそこそこ客が来ても夜は閑古鳥が鳴いてしまう。勿論、街の繁華街で店のつくりやサービスを高級感あふれるものにし、ハレの日に出かける店と定評ができれば、五千円以上のコースでもお客が来ると思うが、そうした店は二十万都市では数軒がせいぜいだろう。

 どういうものかこうした小洒落た店に来るのは女性が多く、思うに彼女達は味はまずまずであればそれで良く、楽しく話ができる手頃な値段の店を選ぶようだ。

 名のある店で修業したご主人らしいが、独立する時どこにどんなメニューでと夫婦で頭を悩ませただろう。この調子なら定着し、街に溶け込んでゆけるだろう。私の見るところ食べ物の店は医院よりも経営が難しく浮き沈みが激しいようだ。尤も、これには今のところと注釈をつけた方がよいかもしれない。顔見知りだった総合病院のY先生、開業したはいいが中々患者さんが増えず苦戦しているようだ。いつも笑顔だったのに最近は会合で見かけても浮かぬ顔をしているし、めっきり顔を出す回数も減った。

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北へ向かう感覚

2016年06月26日 | 人生

         

  何だかこんなことがあったという気がすることは誰にもあるだろう。これは既視感(デジャヴ)と言われる心の動きで、心理学や精神医学で研究されてもいる。

 メカニズムや意味づけはさておいて、英国のEU離脱の起こした波紋を見ていると、自分の体験ではないかもしれないが、体験したことのある動きのように感じられる。

 生きていくことはさざ波のような小さな数の選択の連続とも言えるが、百年生きたとしても人生を左右するような選択は十指もあれば足りるだろう。そのうち自分独りで決断したものは半分もないだろう。

 それで良かったか、本当は分からないが、首肯するのが人間の心というもので、悔やんで生きるのは辛いだろう。国民投票というのは自分で選んだようで、残留を選んだ人には押し流される気持ちもあるだろう。否離脱を決めた人にもこれで良かっただろうかと逡巡する気持ちもあるに違いない。

 まあしかし、賽は投げられた、人々は国々はそれぞれ思い思いに漕ぎ出すだろう。何だか北に向かうような気がするのは私の錯覚だろうな。

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