翼がある物ならバットウィングから手羽先まで。脚がある物ならロボットからチャンネーまで。ストライクゾーンは無限大。
趣味人(シュミット)のプラジェクトX
続 続 師走の模型屋
趣味人(シュミット)のブログへ、ようこそいらっしゃいました。
「趣味人さん、お願いのあるばってん。猛( 仮名 )ちゅうやつは元気のよかごたるけん、もし万が一暴れだしたら、抑えちもらえんどか。居間に待っとってはいよ。仕事帰り、腹ん減っとるど。こたつに入って、ミカンでんお菓子でんたべときなっせ。」
「よかよー。乗り掛かった舟たい。猛ちゅうやつば、見てみよごた!」
靴を脱ぎ店から居間に上がった。視聴者のいない付けっ放しのテレビは、平気でニュースを棒読みしていた。こたつには入らず座布団も脇に追いやり、正座・腕組みで半開きのドアの向こうに意識を集中させた。
ガラガラと店の戸が開く音。緊張感が 走る。
「 もう閉めたと?」
待ち人ではなさそうである。
おばちゃんがやんわりと「帰れ!」と、諭す。
「 ハセガワのロングボウの入ったら2つお願いねー。また、来るけん。」
場の雰囲気を悟る、いい大人である。
あの声は開業医の横山先生だ(仮名)。オレの次に常連さんだと、心の中で張り合った。
おばちゃんがひしゃげたロボットを大規模改修しながら、慎ちゃんに尋ねた。
「なんして、万引きはしきらんて、断わらんだったつ?」
少し落ち着きを取り戻し ぬるくなったコーヒーを、流した涙の分だけコクンと一口飲んでから、切り出した。
「猛はどこでん万引きしよっと。ゲームソフトでん、洋服でん、お菓子でん。それば皆んなに配ると。皆んな盗んだ品もんて分かっとるばってん、何も言わんで貰うとたい。これも猛から、もろたやつ。」と、ズボンの裾をめくってトロイブロスのワンポイント入りソックスを見せた。
「いらん!て言わんけんたい!」箱の修理が終わり、ロボット再生が可能かどうか、ランナーからはずれたパーツに目を通しながら、ちょっとキツめに言った。
「いらんて言うたヤツは、もらったたヤツらからシカトされる。仕返しがおとろしかけん、皆んな先生にもチクらんとたい。」
店舗と居間の仕切り壁に、どちらからも手が届く絶妙な位置に電話台が取り付けてあった。店主のこだわりだろう。その上にあるリング式ダイアルの黒電話は、その当時としても世界遺産級だったが、立派に現役で活躍していた。
店主は慎ちゃんから、『 小島 』の住む町を聞いて、電話帳をめくった。
二軒目に"猛"という高校生がいる『 小島 』に当たった。電話の向こうは、猛の母らしい。
「…… うちは八楠町で模型屋をしよります宮田(もちろん仮名)と申します。
実はうちん店で万引きのあって、それが息子さんの猛くんに関係あるごたっとです。よかなら、店に来てもらえんでっしょか。まだ学校にも警察にも通報しとりまっせん。息子さんの帰ってきたなら、一緒に来てはいよ。
店は熊門銀行の通りばまっすぐ商店街にに向かって、アーケード越えたらふとか呉服屋の隣だけんすぐわかります。
車からなら、商店街共同の駐車場に停めてもろうて、アーケードに出たらすぐです。できたら、すぐ来てはいよ。待っとりまーす。」
電話を切った店主は、懐中電灯と茶封筒を慎ちゃんに渡し、お使いを頼んでいるらしい。
「趣味人さん、晩酌はなかばってん、弁当ば買いにやるけん、食べて行って。」
慎ちゃんは制服のボタンをきちんと全部かけ、何やら先ほどとは打って変わり明るい表情を見せ、弁当を買いに出て行った。
老夫婦は算盤をパチパチ弾き、今日の売り上げを集計し始めたかと思うと、あっという間に終わった。オレにも買い物させてよなあ。給料あとで、たっぷりあるんだけど…。
テレビは夕方のローカル番組から、全国ニュースに変わったが、トップニュースにも気は回らない。
早く来い!!!
ロングボウ10箱 、他にも問屋へ注文し、普段着ではあるが身支度を済ませた店主は、キリッと見えた。シベリア抑留を耐え、生き抜いた、日本人の中の日本人である。
都合 年六場所90日は店をサボっているが、抑留の労いに許してあげよう。
慎ちゃんが白い息をはきながら、弁当屋から戻ってきた。けードロの仲だったが、居間で一緒にから揚げ弁当を食べた。老夫婦は夕食は後回しに、引き戸の方を向いていた。たじろぎもせず、お互い無言で…。
(画像と本文は関係ありません)
次回へ続く…
模型・プラモデルランキングへ
「趣味人さん、お願いのあるばってん。猛( 仮名 )ちゅうやつは元気のよかごたるけん、もし万が一暴れだしたら、抑えちもらえんどか。居間に待っとってはいよ。仕事帰り、腹ん減っとるど。こたつに入って、ミカンでんお菓子でんたべときなっせ。」
「よかよー。乗り掛かった舟たい。猛ちゅうやつば、見てみよごた!」
靴を脱ぎ店から居間に上がった。視聴者のいない付けっ放しのテレビは、平気でニュースを棒読みしていた。こたつには入らず座布団も脇に追いやり、正座・腕組みで半開きのドアの向こうに意識を集中させた。
ガラガラと店の戸が開く音。緊張感が 走る。
「 もう閉めたと?」
待ち人ではなさそうである。
おばちゃんがやんわりと「帰れ!」と、諭す。
「 ハセガワのロングボウの入ったら2つお願いねー。また、来るけん。」
場の雰囲気を悟る、いい大人である。
あの声は開業医の横山先生だ(仮名)。オレの次に常連さんだと、心の中で張り合った。
おばちゃんがひしゃげたロボットを大規模改修しながら、慎ちゃんに尋ねた。
「なんして、万引きはしきらんて、断わらんだったつ?」
少し落ち着きを取り戻し ぬるくなったコーヒーを、流した涙の分だけコクンと一口飲んでから、切り出した。
「猛はどこでん万引きしよっと。ゲームソフトでん、洋服でん、お菓子でん。それば皆んなに配ると。皆んな盗んだ品もんて分かっとるばってん、何も言わんで貰うとたい。これも猛から、もろたやつ。」と、ズボンの裾をめくってトロイブロスのワンポイント入りソックスを見せた。
「いらん!て言わんけんたい!」箱の修理が終わり、ロボット再生が可能かどうか、ランナーからはずれたパーツに目を通しながら、ちょっとキツめに言った。
「いらんて言うたヤツは、もらったたヤツらからシカトされる。仕返しがおとろしかけん、皆んな先生にもチクらんとたい。」
店舗と居間の仕切り壁に、どちらからも手が届く絶妙な位置に電話台が取り付けてあった。店主のこだわりだろう。その上にあるリング式ダイアルの黒電話は、その当時としても世界遺産級だったが、立派に現役で活躍していた。
店主は慎ちゃんから、『 小島 』の住む町を聞いて、電話帳をめくった。
二軒目に"猛"という高校生がいる『 小島 』に当たった。電話の向こうは、猛の母らしい。
「…… うちは八楠町で模型屋をしよります宮田(もちろん仮名)と申します。
実はうちん店で万引きのあって、それが息子さんの猛くんに関係あるごたっとです。よかなら、店に来てもらえんでっしょか。まだ学校にも警察にも通報しとりまっせん。息子さんの帰ってきたなら、一緒に来てはいよ。
店は熊門銀行の通りばまっすぐ商店街にに向かって、アーケード越えたらふとか呉服屋の隣だけんすぐわかります。
車からなら、商店街共同の駐車場に停めてもろうて、アーケードに出たらすぐです。できたら、すぐ来てはいよ。待っとりまーす。」
電話を切った店主は、懐中電灯と茶封筒を慎ちゃんに渡し、お使いを頼んでいるらしい。
「趣味人さん、晩酌はなかばってん、弁当ば買いにやるけん、食べて行って。」
慎ちゃんは制服のボタンをきちんと全部かけ、何やら先ほどとは打って変わり明るい表情を見せ、弁当を買いに出て行った。
老夫婦は算盤をパチパチ弾き、今日の売り上げを集計し始めたかと思うと、あっという間に終わった。オレにも買い物させてよなあ。給料あとで、たっぷりあるんだけど…。
テレビは夕方のローカル番組から、全国ニュースに変わったが、トップニュースにも気は回らない。
早く来い!!!
ロングボウ10箱 、他にも問屋へ注文し、普段着ではあるが身支度を済ませた店主は、キリッと見えた。シベリア抑留を耐え、生き抜いた、日本人の中の日本人である。
都合 年六場所90日は店をサボっているが、抑留の労いに許してあげよう。
慎ちゃんが白い息をはきながら、弁当屋から戻ってきた。けードロの仲だったが、居間で一緒にから揚げ弁当を食べた。老夫婦は夕食は後回しに、引き戸の方を向いていた。たじろぎもせず、お互い無言で…。
(画像と本文は関係ありません)
次回へ続く…
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