「風流無談」第9回 2008年2月2日付琉球新報朝刊掲載
社会派推理小説の草分けだった松本清張に「霧の中の教科書」と題した評論がある。『婦人公論』一九六二年六月号に発表されたもので、四六年も前の文章だが、教科書検定制度の問題を鋭くえぐり出し、その指摘は今でも読むに値する。文部省(当時)の調査官について、松本清張は次のように書いている。
〈さて、問題になるのはこの文部省調査官である。これは非常 . . . 本文を読む
『わしズム』2008年冬季号の「天籟」というエッセーで小林よしのり氏が、琉球新報社や私への批判を行っている。相も変わらず独りよがりで幼稚な議論を展開しているが、小林氏の文章を読んでいると、この人は沖縄戦に関する本をろくに読んでいないし、「集団自決」(強制集団死)をめぐる議論の経過についても無知であることがよく分かる。
同誌の9ページに、沖縄の新聞では「軍命」から「強制」という表現に変わっている . . . 本文を読む
「風流無談」第7回 琉球新報2007年12月1日付朝刊掲載
去る十一月九日、大阪地方裁判所で大江・岩波沖縄戦裁判の本人尋問が行われた。原告の梅澤裕氏(元座間味島戦隊長)、赤松秀一氏(元渡嘉敷島戦隊長・赤松嘉次氏の弟)、被告の大江健三郎氏が法廷に立つということで、傍聴券を求めて六九十名余の人が裁判所の裏庭に集まった。
裏門の前では原告側を支援する団体がハンドマイクでアジテーションを行っていて、 . . . 本文を読む
「風流無談」第6回 琉球新報2007年11月3日付朝刊掲載
漫画家の小林よしのり氏が雑誌「SAPIO」(小学館発行)11月14日号の「ゴーマニズム宣言」で「集団自決の真相を教えよう」という漫画を書いている。現在の沖縄を「全体主義の島」呼ばわりし、9・29県民大会の意義を否定するのに必死になっている。事実をねじ曲げる手法と内容のひどさには呆れるが、小林氏がどういう人物かを知るうえでは格好の素材か . . . 本文を読む
「風流無談」第5回 琉球新報2007年10月6日付朝刊掲載
大学を卒業して間もない頃だから、もう二十年以上前になる。今帰仁村の運天港で半年間荷揚げ作業のアルバイトをやった。貨物船の船倉に降りて肥料や飼料などを板木に積んだり、トラックに乗せるために岸壁で積み換え作業をするのだが、炎天下の作業はなかなかのきつさだった。ふだん一緒に作業しているのは六名で、それで生活をしている人もいれば、漁の合間に作 . . . 本文を読む
「風流無談」第4回 琉球新報2007年9月1日付朝刊掲載
八月二十五日付琉球新報朝刊に気になる記事が載っていた。県選出・出身の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」と面会した伊吹文明文部科学大臣が、教科書検定問題について、〈「日本軍による『関与』という表現ならいい」などと述べた上で、次回の教科書検定における修正意見の見直しについて柔軟な態度を示した〉というものである。
同日付沖縄タイムスでは、 . . . 本文を読む
「風流無談」第3回 琉球新報2007年8月4日付朝刊掲載
現在、大阪地方裁判所で、渡嘉敷島・座間味島で起こった「集団自決」について、日本軍の隊長による命令をあったとする本の記述をめぐり裁判が行われている。渡嘉敷島の隊長だった赤松嘉次氏の弟・秀一氏と座間味島の隊長だった梅澤裕氏が、『沖縄ノート』の著者である大江健三郎氏と発行元の岩波書店を訴えている裁判である。その第十回口頭弁論がさる七月二七日に行 . . . 本文を読む
「風流無談」第2回:琉球新報2007年7月7日付朝刊掲載
初代の防衛大臣に就任以来、放言をくり返してきた久間章生氏が、ついに辞任した。長崎への原爆投下は「しょうがない」という発言内容のデタラメさを考えれば、辞任は当然のことだろう。それにしても、「美しい国」づくりを掲げる安倍内閣の下に集まった政治家たちの酷さは目に余る。
去る四月十七日、伊藤一長前長崎市長が、選挙運動中に暴力団員に射殺されるとい . . . 本文を読む
2007年6月から琉球新報紙の文化欄で月一回「風流無談」というエッセーを連載している。掲載は第一土曜日の朝刊である。昨年は教科書検定問題や大江・岩波沖縄戦裁判について書くことが多かった。昨年分を以下に載せておきます。
「風流無談」第1回:琉球新報2007年6月2日付朝刊掲載
高校時代、学校の図書館にあった吉原公一郎編『沖縄本土復帰の幻想』(三一書房)という本を借りて読んだ。一九七二年の施政権 . . . 本文を読む