海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

グアム移転に関する協定

2009-01-28 18:23:27 | 米軍・自衛隊・基地問題
 昨日は夕方から梅林宏道氏(ピースデポ代表)の講演会を聴きにいった。主催はヘリ基地反対協議会で80名ほどの参加があった。演題は「オバマ政権と米軍再編」で、世界的な米軍再編やそれと連動した自衛隊のトランスフォーメーション、オバマ政権で国防長官となるロバート・ゲイツの戦略、同じく国務長官となるヒラリー・クリントンが唱えるスマートパワー、アーミテージ・ナイ報告、オバマ・バイディン・アジェンダなどの分析を中心に話がなされた。講演後、会場から質問や意見が13名あり、かなり活発に議論が交わされていた。
 梅林氏は、米軍再編や自衛隊の集団的自衛権行使、海外派兵などについて、オバマ政権に変わっても米国側に従来の方針を変更する必要はない。ブッシュ政権の後期からゲイツが進めてきた軍事戦略を受け継いでいくと述べた。その上で、それでもオバマ政権が生まれてきたこと自体が持つ変化の意味は大きい、聴く耳を持つ政権が生まれた、という認識を示していた。
 それを全面的に否定する気はない。アフガニスタン・イラクへの侵略戦争、単独行動主義、愛国者法、先制攻撃などブッシュ大統領がやってきたことに比べればオバマ政権は「民主的」になるだろうし、多様な意見を聴く耳も持っているだろう。投げられた靴をよける運動神経はどうか知らないが、ブッシュが余りにも酷すぎたのだから、それに比べればオバマ新大統領のやることは、たいていのことは一時的であれ良く見えるだろう。ただ、沖縄に住んでいる者からすれば、辺野古や高江の基地建設に対してオバマ新大統領がどれだけ聴く耳を持っているか、それが喫緊の問題なのだ。
 その答えは早くも出ているようだ。今日の琉球新報朝刊の一面トップは、日本政府が二月上旬に〈米軍普天間飛行場移設の日米合意推進などを明記する条約「在沖米海兵隊のグアム移転に関する協定」を米政府と締結する〉という記事だ。協定締結の理由を琉球新報は以下のように解説している。
 〈政府がグアム移転で協定を締結するのは、在日米軍再編の実施に「法的拘束力」を与えたいから。ロードマップはあくまで政治家による「政治的声明」(外務省)にすぎない。今年行われる衆院選で政権が変われば、再編計画自体が白紙に戻りかねないという危惧が、政府を協定締結に走らせた。衆院で可決すれば参院で否決されても三十日で自然承認するため「現政権のうちに成立させたい」(同)という思惑もある〉。
 これは麻生首相や外務省の官僚が、米国のポチよろしく自主的に協定締結を申し出たのだろうか。その可能性も否定できないが、自らの政権が失われることを前提に協定を結ぶのもおかしな話だ。むしろ自・公の衆院選敗北と政権交代の可能性が大きいと米国側が判断し、麻生政権に圧力をかけたと見た方が妥当だろう。日本経済の危機が深刻化し、首を切られて路頭に迷う労働者が増加する中で、米軍基地のグアム移転に日本が60億ドル以上も負担することに反発が強まるのは必至だ。政権交代が行われれば、移転費用負担の見直しが日本側から提起されるかもしれない。民主党が単独過半数を取れず、共産党や社民党がキャスティングボートを握る可能性だってある。それを見越して、協定で日本側負担に縛りをかけようというのであれば、それこそオバマ政権内の「知日派」のしたたかさであり、傲慢さだろう。
 仲井真知事の訪米を嘲笑するような日米両政府の協定締結への動きは、辺野古の新基地建設を自公政権が続く間に後戻りできないところまで進めるという意思表示でもある。オバマ大統領の巧言に惑わされている間にも、新基地建設に向けての動きは急速に進んでいる。オバマ政権のスタートと麻生政権の末期が重なり、米軍再編推進の圧力が強まる中で、追いつめられた日本政府・防衛省・沖縄防衛局の姿勢はより強硬になっていきそうだ。オバマに幻想を抱いている場合ではない。

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2 コメント

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どーせの意識 2 (つき子)
2009-02-01 09:06:12
続き

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ただ、その意識(無関心)を植え付けた(植え付けられた)のは、何であるのか?50年も続いた自民党政策の罪だけとは言わないが、民衆を政治から無関心にと導いたなと感じる点を挙げればきりがない。

心静かに、冷静にと自分を戒め、何かしら声をあげなければと思うのだが、自営業(商売人)の身分である私は「政治・経済・宗教は己の心の中だけで」と教え解く、60半ばの両親の想い。あなたには申し訳ないが、そのジレンマを解消するかのように投稿(コメント)しているようなものだ。お許しを。

以上。
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どーせの意識 1 (つき子)
2009-02-01 09:04:09
大統領就任演説で「一部の…」と言った鋭い視点と、自分の父親が給仕されなかった内容から、希望や光を与えた点を私は評価するが、おっしゃる通り「オバマに幻想を抱いている場合ではない」
某週刊誌で「米国の真の支配者は政府を買収した者たちだ。」「大統領はその雇われ人にすぎない」とビル・トッテン氏のインタビューが掲載されていた。この視点は、ここ沖縄においても似たようなものだと感じた。知事の言動には何のオーラも感じないし、経済界の黒幕と利権に僕は躍らされていますと、自らが語っているようなものだ。
これまでの県政や、私の住んでいる町政、極端な話、区(字)の動きでさえ、どーせこの人がなっても… という考え方につい陥ってしまう(今の区は、だいぶよくなった)。グジグジ言ってないでだったら自分がやれば?と言われたり思われたりもする。批判と指摘されることに慣れていない(私もそうだが)県民性。またその逆(批判と指摘を避ける)。どーせ…の意識でしかないのなら、結果もどーせでしかない。 …続く
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