海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

宮田毬栄『追憶の作家たち』

2008-04-20 06:38:27 | 読書/書評
 先だって、古本屋で買ってきた宮田毬栄『追憶の作家たち』(文春新書)を読んだあと、ユーチューブで埴谷雄高を検索してみたらNHKのETV8で放映された〈埴谷雄高独白「死霊」の世界〉が投稿されていた。埴谷が亡くなった直後に再放送されたのを録画して、深夜の酒の肴として時折見ていたのだが、宮古にいた頃に誤って三分の二ほどを消してしまった。何とも残念でならず、NHKがビデオにして販売していたのを買おうとしたのだが、すでに品切れになって手に入らなかった。それがユーチューブで見られるとは有り難いかぎりだ。
 『追憶の作家たち』には松本清張の思い出も書かれている。中央公論社の『日本の文学』から自分を排除した三島由紀夫に対して、松本清張が怒りを抱き続けていたというエピソードが紹介されている。ユーチューブには松本清張が三島由紀夫の「自決事件」を扱った〈ドキュメンタリードラマ昭和 松本清張 事件にせまる〉という番組も投稿されているが、そのエピソードを踏まえて見ると面白い。この番組はユーチューブがなければ、おそらく一生見ることはなかっただろうと思う。
 権利上色々問題はあるかもしれないが、死蔵するよりはあとの世代の眼に触れさせた方がいい。ユーチューブで見られるこの二つの番組はおすすめです。
 『追憶の作家たち』の最後には、日野啓三氏の思い出がつづられている。私が芥川賞を受賞したとき、東京會舘で開かれた授賞式で、選考委員を代表して挨拶をいただいたのが日野氏だった。その前から沖縄に関心を抱いていて、琉球新報短編小説賞の選考委員をやってもいた。会場では次から次に名刺を持ってやってくる人への対応に追われて、ごく短い時間しか話すことができなかった。それが日野氏と話した最初で最後の機会だった。『追憶の作家たち』を読みながら、マイクの前に立って話をしている日野氏の姿を思い出した。

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