海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

伊藤和也さんの死を悼む

2008-08-29 23:55:55 | 米軍・自衛隊・基地問題
 アフガニスタンの民衆のために献身的に活動してきたペシャワール会の伊藤和也さんが殺害された事件は、何とも痛ましく残念でならない。会の代表である中村哲医師は何度も沖縄で講演をやっていて、私も聴いたことがある。講演や著作を通してペシャワール会の活動を知るにつけ、感銘を受けずにはいられなかった。
 同じ思いを抱いている人は沖縄に数多くいるだろう。8月28日付の県内紙の一面トップには、伊藤さんの遺体が発見されたという記事が大きく載っている。ペシャワール会は、稲嶺前知事が創設した「沖縄平和賞」の第一回の受賞団体でもある。そういう縁もあってか、仲井真知事や稲嶺前知事のコメントも載っているのだが、哀悼の意や事件への憤りを示すのは当然のこととして、私が引っかかるのは、沖縄の米軍基地の安定使用と辺野古への新基地建設に尽力してきた自らの姿勢を省みて、仲井真・稲嶺の両氏は何も感じないのかということだ。
 沖縄の米軍基地は極東の安全保障という枠を超えて、東アジアから中東全域にいたる広大な領域に対応するものとして機能している。沖縄の海兵隊がイラクの軍事作戦に参加してきたことも周知の事実だ。9・11事件のあとブッシュ大統領が行ったアフガニスタンやイラクへの侵略戦争に、沖縄の米軍も関わってきたことを考えれば、米兵を殺人兵器として鍛え上げる場である米軍基地の安定使用のために尽力してきた仲井真知事や稲嶺元知事は、第三者的な立場から事件について語ってすまされるものではないはずだ。
 伊藤さん殺害の犯人がタリバンであれ、山賊であれ、アフガニスタンがここまで混乱し、治安が悪化した直接の背景には、米軍のアフガニスタン攻撃がある。在沖米軍基地の安定使用と辺野古への新基地建設を進めることによって、ブッシュ大統領の侵略戦争と軍事政策を沖縄の地で支えていながら、そのことに無自覚のまま(あるいは隠蔽して)、仲井真知事や稲嶺元知事が事件を憤るのは、その心情には偽りはなくても、その言動には欺瞞がある。 
 仲井真知事や稲嶺元知事が本当に伊藤さんの死を悼み、憤るというのなら、犯人は元よりアフガニスタンをここまで混乱させたブッシュ大統領の侵略戦争を批判すべきだし、沖縄の地において米軍に加担することをいっさいやめるべきだ。それこそが、沖縄平和賞を与えた沖縄県知事・元知事としてのペシャワール会に対する正しい姿勢のはずだ。

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