泥醉論説委員の日経の読み方 さんより転載です。
15日朝刊2面【総合・政治】社説2
政府は米国、欧州連合(EU)とともに13日、中国のレアアース(希土類)輸出制限について世界貿易機関(WTO)に提訴した。レアアースなど希少金属の輸入大国として、日本は中国の貿易政策是正に向けて主導的な役割を果たしてほしい。
レアアースは、ハイブリッド車などに欠かせない高性能磁石の原料や液晶パネルの製造に使う。しかし、世界供給で圧倒的なシェアを握る中国は輸出量を大幅に削減。2010年秋に尖閣諸島付近で漁船衝突事件が起きた後には対日輸出が一時停滞した。
中国ではレアアースの乱開発が進んでいた。環境と資源の保護を目指す中国政府の政策に一定の合理性はあるが、急激な政策変更が国際相場の高騰を招いたのも 事実だ。世界第2位の経済大国として、中国は不透明な貿易政策を改める必要がある。独占的な立場を利用し、希少資源を外交戦術に使う姿勢も許されない。
日本が中国をWTO提訴するのは初めてで、対中通商政策の転換点ともいえる。日米欧が共同歩調をとったことで中国への圧力は格段に高まった。国際ルールを使い、案件ごとに是非を問う今回の判断は正しい。
ただ、圧力だけでは問題は解決できない。日本にとって大切なのは資源の安定確保だ。WTOでの議論とともに、中国との対話も並行して進める必要がある。
米中の間には経済政策について幅広く話し合う、米中戦略経済対話の枠組みがある。それに比べ、日本と中国とのパイプは不十分だ。表舞台で高めた圧力を背景に、政府は中国から譲歩を引き出す対話を深めてほしい。
「圧力と対話」、まるで対北朝鮮外交みたいな文句ですが、財界を代弁する日本経済新聞として大陸に進出したい日本企業を後押しするため中共寄りの論調だった頃と比べ、随分と変わったものです。
ところが、彼の国では社会も風俗も法律も我々先進国とは相当違う、そんなローカルスタンダードばかりじゃ進出よりむしろ撤退したい、という現実に財界も日経も直面したわけです。
い わゆる「靖国参拝」問題などは、日本のメディアも国内政局のダシに使うため中共を炊きつけた手前「日本だって悪いよね」というお気楽なスタンスで論調を形 成してきましたが、実害が政治から安全保障そして経済へと及ぶに至り、流石にこれは大変なことになったなと少しは気がつき始めたという所でしょう。
例えば清華大学の教授と会うと、流暢な日本語で中国と日本の紐帯を見事な理論武装で説得してきます。
曰く、いまや対アメリカより対中国の方が日本の輸出額は大きい、ここまで来たら中国と日本でアジア太平洋の覇権を握ろうじゃないか、などと。
泥酔みたいな市井の人に対してもこうですから、政治家やメディアにはどれだけの攻勢がかけられているのか想像に難くありません。
また彼らが上手いのは、中共政府の行き過ぎを認めた上で、だからパイプを太くしましょうよ、というロジックなんですね。
教授レベルですから、日欧米の一流大学あるいは大学院を卒業しており、「開明的」と我々が誤解するのも当然織り込み済みです。
しかし、彼らが生存できる拠り所は哀しいかな中国共産党政府であり、そうした「愛国心」を中国内で発揮しないとたちまち「反体制派」というレッテルを貼られてパージされるのです。
これでは喰っていけないか、悪くすると刑務所行きでしょう。
「表舞台で高めた圧力を背景に、政府は中国から譲歩を引き出す対話を深めてほしい」などと言う建前論は、「できない」ことをあたかも「できるか」のように書いてるだけであり、それは中共から「洗脳」されている社説子だけの妄言です。
そもそも「中華思想」とは何か、辞書的には「儒教的な王道政治の理想を実現した漢民族を誇り、中国が世界の中心であり、その文化・思想が最も価値のあるものであると自負する考え方」とあります。
いまの中共政府の行動原理も、全て「中華思想」でもって説明できます。
そうした「中華思想」とどう付き合っていくのか、「圧力と対話で中国に譲歩促せ」などと言う簡単なお話じゃないでしょと思うのです。
我々の先輩たちは2000年に渡って、この「中華思想」に侵略もされず間合いを取ってきたのです。
近すぎるのでなく、離れすぎるのでもなく、一定の距離感をもって付き合ってきた歴史をもう一度評価する必要がありましょう。