比叡の山々が美しく見渡せる季節がやってきた。
これから紅葉の季節を迎える。
さて、「生きる」のテーマも100回目となった。
この種の話は、これで終わりにしよう。
年をとってくると、「生きる」ということがより実感的になってくる。
それは、季節の移ろいと共に、おのれの心にずしりと寄りかかってくる。
江國香織的表現で言えば、
冬は知恵と文明が要求される季節であり、
夏は、細胞の一つ一つが抱えている記憶がふいに立ち上がり、風に揺れる草みたいに不穏に波立ってしまう季節、らしい。
こうして、冬の寒さと夏の暑さが繰り返し、やがてそれらをしのぐのが耐え難いものとなってくる。
そして、あるレベルを越えると、花びらが落ちるように死に絶えるのだろう。
「生きる」というのは、そのような自然の営みの中で指折り数えるもので、そんなに深い意味を持っているわけではない。
だからこそ、体と心を鍛え、繰り返して押し寄せてくる季節の波をうまくやり過ごせばよい。
それが人間としてのけじめのような気がする。
私は、あと何回ジャンプできるのだろうか。
できれば心に残る波乗りを、あと2~3回は記録したい。
そのうち飛び上がれなくなり、這いつくばって波間に埋もれる時に、「生きる」と言う言葉が消え去るのだろう。
それにしてもこの空の青さはどうだ。